先日、投開票が行われた衆議院選挙では、定数465議席に対して3分の2となる310議席を、自民党が単独で超える(316議席)結果となりました。さらに、自民党と日本維新の会を合わせた与党全体では、354議席を獲得しています。
今回の選挙戦では、当選された方も、惜しくも当選されなかった方も、「日本を良くしたい」という思いは同じだったはずです。
まずは、政治的な立場を問わず、一生懸命に戦われたすべての候補者に敬意を表したいと思います。
そして今回は、衆議院で3分の2を超えると、制度上どのようなことが可能になるのかについて解説していきます。
参議院が否決しても、法律を成立させられる?
まず、この「3分の2」という数字が、最も大きな影響を及ぼすのが法律案の扱いです。
通常、法律案は衆議院と参議院の両方で可決されなければ成立しません。
しかし、衆議院を通過した法律案について、参議院が否決、あるいは60日以内に議決を行わなかった場合、衆議院で3分の2以上の賛成があれば、再可決することができます。
これまでの状況を振り返ると、選挙前は衆議院で与党が厳密には過半数割れの状態にありました。
そのため、仮に衆議院を通過したとしても、参議院でも多数を確保できていなかった以上、どれだけ良い法律案であっても、否決されれば再可決は極めて困難でした。
しかし、今回の選挙で衆議院において3分の2を大きく超えたことで、仮に参議院が議決しなかった場合や反対した場合でも、再び採決し、衆議院で3分の2以上の賛成を得ることができれば、法律を成立させることが可能となりました。
現在、与党は354議席を有しています。これは衆議院の総議席の3分の2を大きく超えているため、仮に複数の議員が欠席したとしても、再可決が可能な状況です。
これが、衆議院で3分の2を超えることによって可能になる、最も大きな変化になります。
委員長・理事ポストを押さえられる
次に重要なのが、各種委員会の委員長ポスト、そして理事ポストです。
選挙前は、衆議院で与党が過半数割れしていたこともあり、予算委員会をはじめとする複数の委員会で、委員長ポストが野党側に渡っていました。
委員会において、委員長、そして理事が持つ権限は非常に大きく、
- 審議の日程
- 法律案の扱う順番
- 採決のタイミング
など、法律を審議する上で不可欠な事項を主導することができます。
そのため、政権側が「進めたい」と考えている政策であっても、野党側が委員長や理事を押さえている場合、審議を後回しにされたり、審議自体に入れないといったことも可能でした。
しかし、今回の選挙で衆議院において3分の2を大きく超えたことで、委員長ポストはほぼ、自民党と日本維新の会、与党側で押さえることができます。また、理事ポストについても、与党が大多数を占めることになります。
これにより、政権が提出した法律案について、審議を進めやすくなり、与党は国会運営を有利に進めることが可能となります。
議院運営委員会も有利に?
さらに重要なのが、議院運営委員会です。
議院運営委員会は、
- 本会議の開催日
- 会期の延長
- どの法案を本会議に上げるか
- 内閣不信任案や問責決議案の扱い
など、国会のハンドルそのものを握る委員会です。
従来は、こうしたポストを野党が握っている場合、内閣の意向どおりに国会運営が進まないこともありました。しかし、今回は与党が3分の2以上の議席を確保しているため、議院運営委員会の主要ポストも、ほぼ自民党と日本維新の会で押さえることが可能となります。
その結果、会期の設定や本会議で扱う法案について、政権側の意向を反映させやすくなり、野党による会期引き延ばし戦略も効きにくくなります。
内閣不信任決議案が通ることもない?
次に内閣不信任決議案についてです。そもそも内閣不信任決議案は、衆議院議員50人以上の賛成で提出することができ、可決されれば、内閣は総辞職、もしくは衆議院解散を選ばなければなりません。
しかし、今回の衆議院では、与党が圧倒的に過半数を超えています。そのため、仮に不信任案が提出されたとしても、可決される可能性はありません。
さらに、野党第一党である中道改革連合の議席は49議席にとどまり、単独では提出要件すら満たせない状況となりました。
党派を超えて連携すれば提出自体は可能ですが、野党第一党だけで不信任案を出せなくなったという点も、大きなことです。
憲法改正の発議が視野に入る?
最後に、最も注目されるのが憲法改正です。
憲法改正の発議には、衆議院・参議院それぞれで、総議員の3分の2以上の賛成が必要です。発議されれば、その後、国民投票に移ることになります。
今回の選挙で、衆議院ではこの条件を大きくクリアしました。現在の政権は、憲法9条の改正などを訴えていますが、参議院はねじれ状態が続いており、現時点で直ちに発議することは現実的ではありません。
ただし、衆議院の任期は最大4年であり、次の参議院選挙は約2年半後に迫っています。
前回の参議院選挙で与党は議席を減らしているため、次に3分の2を超えるのは簡単な勝負ではありませんが、可能性が完全に消えたわけでもありません。
仮に次の参議院選挙で、今回と同様に自民党と日本維新の会が大勝すれば、参議院でも総議席の3分の2の議席を確保し、憲法改正の発議が可能となります。
(少なくとも次の参議院選までは参議院では少数与党なのは間違いない)
(筆者が撮影)
今回の選挙結果が持つ意味
今回の衆院選で、自民党と日本維新の会からなる与党で354議席、自民党単独でも衆議院の総議席の310議席を超えたという結果は、史上初の出来事です。
特に与党で354議席という規模は、戦前の大政翼賛会に次ぐ勢力とも言えます。与党が衆議院で3分の2を超えたことは、国会運営や法律案の成立を、これまで以上に強く後押しする要因となります。一方で、憲法改正については、次の参議院選挙の結果次第であるという点も、また事実です。
今回の衆院選から見えるもの
このように、今回の衆議院選挙で与党が3分の2を大きく超えたということは、法律案の再可決が可能になるだけでなく、委員長ポストや理事ポストの大多数を与党側が占めることができるなど、国会運営そのものに大きな影響を与える結果となりました。
また、憲法改正についても、現時点では参議院で3分の2を確保できていないため、すぐに発議できる状況ではありません。しかし、見方を変えれば、仮に今後の参議院選挙で、与党派を含めた改憲勢力が3分の2を超えることができれば、衆議院側はすでに条件を満たしているため、憲法改正の発議が可能になります。
これまでを振り返ると、例えば高市政権が成立した時点では、衆議院でも与党は厳密には過半数割れの状況にありました。そのため、国民と約束した政策や公約があったとしても、実現することが難しい場面も少なくなかったと思います。
しかし、今回の選挙で衆議院の大多数を占めることができたことで、状況は大きく変わりました。
ある意味で言えば、今後は、国民と約束した公約や、日本維新の会との連立合意に盛り込まれた政策を、どこまで実現できるのかが、これまで以上に厳しく問われることになります。
多くの国民が注目しているのは、まさにここから先です。
ここからが、自民党と日本維新の会による連立政権の「力の見せどころ」なのかもしれません。
次の国政選挙は、おそらく約2年半後になります。しかし、その間も政治は動き続けます。日々のニュースや国会の動きを通して、政治に関心を持ち続けることで、自分の考えと合う政党はどこなのか、あるいは考えが違うと感じた場合に、次はどこに投票すべきなのかを考える材料が増えていきます。
一人ひとりが政治に興味を持ち、定期的に状況を見つめ、自分の意思を選挙という形で国に届けること。それが、民主主義において最も重要な行動の一つだと思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。











