炭素数の確認(クエン酸回路とカルビン・ベンソン回路) 高校生物
11分20秒
説明
【 note : https://note.com/yaguchihappy 】
クエン酸回路及びカルビン・ベンソン回路に出てくる物質について、炭素の数を確認します。
問題:呼吸において、CO2が生じないステップを以下から1つ選べ。
①ピルビン酸がアセチルCoAになるステップ。
②アセチルCoAとオキサロ酢酸が結合してクエン酸が生じるステップ。
③クエン酸がα-ケトグルタル酸になるステップ。
④α-ケトグルタル酸がコハク酸になるステップ
答え:②
問題:以下の化学式は呼吸の反応を表している。空欄に適切な数字を埋めよ。
C6H12O6 + 6O2 + 6H2O → ( )CO2 + 12H2O
答え:6
(1)クエン酸回路について
● 高校では、ピルビン酸がアセチルCoAに変化する反応もクエン酸回路の反応の一部としている。一般には、クエン酸回路は、アセチルCoAが酸化される代謝経路を指す。つまり、呼吸には、厳密には「解糖系」「ピルビン酸の酸化(アセチルCoAの生成)」「クエン酸回路」「電子伝達系」の4つの過程があることになる。高校生はあまり気にせず、ざっくり何が起きているかをつかめばよい。
● ピルビン酸は、ミトコンドリアのマトリックスに入り、アセチルCoAになる。(CO2が放出される)
*ピルビン酸はミトコンドリアの外膜を横断する。次に内膜に埋め込まれたタンパク質が、膜間腔からマトリックスにピルビン酸を輸送する。
*ミトコンドリアの外膜(およびグラム陰性細菌の外膜)には、ポリン(ポーリン)と呼ばれるタンパク質があり、無機イオンや代謝産物が自由に通れるようになっている。
*CoAは補酵素Aのこと。SH基の存在を明示するため、補酵素Aを、CoAーSHと書くこともある。アセチルCoAは、CoAのアセチル誘導体で、そのSH基とアセチル基とのチオエステルである。アセチル基中のメチル基の反応性が高い(チオエステルとして硫黄原子の電気陰性度が大きい)。クエン酸回路の他、様々な代謝における出発物質として知られている。
● アセチルCoAは、オキサロ酢酸と結合して、クエン酸が生じる。
● クエン酸は、α-ケトグルタル酸になる。(CO2が放出される)
● α-ケトグルタル酸はコハク酸になる。(CO2が放出される)
● コハク酸は、様々な反応(→フマル酸→リンゴ酸→)を経て、オキサロ酢酸へと変化する。
● 1分子のグルコース当たり(2分子のピルビン酸当たり)6分子のCO2が放出される。
● CO2を放出させる(脱炭酸させる)反応は、脱炭酸酵素が触媒する。
● アセチルCoAとして回路に入ってきた新規の炭素(7:31で赤く描かれた炭素)は、その回の反応では抜けない。2周目の反応で抜ける。
● コハク酸は対称面を持つので、この分子の両側は分子的に対等である(区別できない)。なので、これ以降、オキサロ酢酸までの4炭素原子中間体では、アセチルCoA由来の炭素は分子全体に均一に分布していることになる。
● クエン酸回路において、動物ではGTPが生成されるが、速やかにATPに変換される(植物や細菌ではATPが生成される)。
(2)カルビン・ベンソン回路について
● カルビン・ベンソン回路は二酸化炭素を炭水化物に還元する反応経路である。ストロマで起こる。
● すべての高等植物は、カルビン・ベンソン回路で固定した炭素を、主にデンプンやセルロースに変換する。
● CO2はエネルギー的に低い状態の分子である。CO2を有機分子に取り込む反応には、エネルギーと還元力が必要である(C-C結合の形成にはATPの供給するエネルギーが必要である。また、CO2を炭水化物に変換するためには、強力な電子供与体が、高いエネルギー状態の電子を供給しなければならない。すなわち、電子を押し付ける力、還元力が必要である。植物では、NADPHがこの電子を供給する)。
● まずチェックすべき重要な反応はRuBP→2PGAの反応である。この過程でCO2が固定されるからである。
● RuBPとCO2の反応を触媒する酵素をルビスコという(ルビスコは地球上で最も量が多い酵素とも言われる)。
● RuBP(リブロースビスリン酸)、PGA(ホスホグリセリン酸)、GAP(グリセルアルデヒド三リン酸)は、正式名称を知っておくとよい。正式名称をぼんやりとでも覚えておけば、略称の書き間違いななくなる(PGAをPAGなどのように誤って書いてしまうミスを減らせる)。
・RuBP ( ribulose bisphosphate ):リブロースビスリン酸(リブロース二リン酸とも言う。「ビス」は2の意味。リン酸[P]を2個もっている。)
・PGA ( phosphoglyceric acid、phosphoglycerate ):ホスホグリセリン酸(PGAはC3植物のCO2固定の初期産物。「ホスホ」はリン酸を表す。)
・GAP ( glyceraldehyde-3-phosphate ):グリセルアルデヒド三リン酸
※入試では、物質名の表記は、今使っている教科書の表記に揃えること。
● カルビン・ベンソン回路は、CO2分子を、RuBP(CO2の受容体といえる)に結合させることによって、1回に1分子ずつ取り込む。
● C5(Cを5個もつ)のRuBPと、CO2(Cを1個もつ)が結合し、一瞬、C6の不安定な化合物ができるが、すぐに2つに分解し、PGA(C3)が2分子生じる。
● PGAから、いくつかの反応を経て、GAPが生じる(この反応ではATPとNADPHが使われる)。
● 実際は、たくさんのGAPが生じているが、その中のGAPの一部がカルビン・ベンソン回路から抜け、糖の合成に使われる。その他のGAPはRuBPの再生に使われる(この再生にはATPが使われる。このRuBPの再生には、実際にはいくつもの反応が関わる)。
*GAPからRuBPが再生するステップは、実際は複雑である。簡単に結論だけ言うと、5分子のGAP(5分子×3個の炭素=15個の炭素)から、3分子のRuBP(3分子×5個の炭素=15個の炭素)が生じる。5分子のGAPに含まれる炭素の数と、3分子のRuBPに踏まれる炭素の数は同じである(15個)。
● GAPから直接グルコースができるわけではないが、できる化合物をグルコースに換算すると、光合成は以下のような反応式になる。
6CO2+12H2O → 6O2+6H2O+C6H12O6
(あたかも、呼吸の逆反応であるかのようである。もちろん実際には別の酵素、仕組みが関わっている)
● カルビン・ベンソン回路から出たGAPは、グルコースやほかの糖など、さまざまな有機化合物を合成する代謝経路の出発物質となる。
● 光化学系と電子伝達系で作られたATPとNADPHは、PGAからRuBPが再生される際に消費される。
● 二酸化炭素濃度が薄いと、ルビスコがうまく働かず、光合成が阻害される(ルビスコが酸素と反応してしまう。これを光呼吸という)。
● ルビスコ(rubisco)の正式名称は「ribulose bisphosphate carboxylase/oxygenase」である。「ribulose bisphosphate(RuBP)」と、 「carboxylase(炭酸固定酵素)/oxygenase(酸素化酵素)」という語がくっついている。この名前は、「RuBPとCO2の反応を触媒するだけでなく、RuBPとO2の反応も触媒し得る」ということを表している。ルビスコの名は、アメリカの製菓会社ナビスコを文字って提案された。
*光呼吸は、酸素を消費され、さらに、エネルギーが消費されてしまう反応である(光呼吸には活性酸素を処理する意義があるとも言われている)。
● 光供給を停止すると、RuBPが減少しPGAが増加する。しかし、すぐにPGAは現象を始める。これは、PGAの酸化的分解や、他の物質への転換が原因であると考えられる。
0:00 解糖系
1:39 クエン酸回路(概要)
2:43 クエン酸回路(炭素数)
6:14 クエン酸回路(NADHとFADH2)
8:02 光合成とカルビンベンソン回路
#呼吸
#光合成
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クエン酸回路及びカルビン・ベンソン回路に出てくる物質について、炭素の数を確認します。
問題:呼吸において、CO2が生じないステップを以下から1つ選べ。
①ピルビン酸がアセチルCoAになるステップ。
②アセチルCoAとオキサロ酢酸が結合してクエン酸が生じるステップ。
③クエン酸がα-ケトグルタル酸になるステップ。
④α-ケトグルタル酸がコハク酸になるステップ
答え:②
問題:以下の化学式は呼吸の反応を表している。空欄に適切な数字を埋めよ。
C6H12O6 + 6O2 + 6H2O → ( )CO2 + 12H2O
答え:6
(1)クエン酸回路について
● 高校では、ピルビン酸がアセチルCoAに変化する反応もクエン酸回路の反応の一部としている。一般には、クエン酸回路は、アセチルCoAが酸化される代謝経路を指す。つまり、呼吸には、厳密には「解糖系」「ピルビン酸の酸化(アセチルCoAの生成)」「クエン酸回路」「電子伝達系」の4つの過程があることになる。高校生はあまり気にせず、ざっくり何が起きているかをつかめばよい。
● ピルビン酸は、ミトコンドリアのマトリックスに入り、アセチルCoAになる。(CO2が放出される)
*ピルビン酸はミトコンドリアの外膜を横断する。次に内膜に埋め込まれたタンパク質が、膜間腔からマトリックスにピルビン酸を輸送する。
*ミトコンドリアの外膜(およびグラム陰性細菌の外膜)には、ポリン(ポーリン)と呼ばれるタンパク質があり、無機イオンや代謝産物が自由に通れるようになっている。
*CoAは補酵素Aのこと。SH基の存在を明示するため、補酵素Aを、CoAーSHと書くこともある。アセチルCoAは、CoAのアセチル誘導体で、そのSH基とアセチル基とのチオエステルである。アセチル基中のメチル基の反応性が高い(チオエステルとして硫黄原子の電気陰性度が大きい)。クエン酸回路の他、様々な代謝における出発物質として知られている。
● アセチルCoAは、オキサロ酢酸と結合して、クエン酸が生じる。
● クエン酸は、α-ケトグルタル酸になる。(CO2が放出される)
● α-ケトグルタル酸はコハク酸になる。(CO2が放出される)
● コハク酸は、様々な反応(→フマル酸→リンゴ酸→)を経て、オキサロ酢酸へと変化する。
● 1分子のグルコース当たり(2分子のピルビン酸当たり)6分子のCO2が放出される。
● CO2を放出させる(脱炭酸させる)反応は、脱炭酸酵素が触媒する。
● アセチルCoAとして回路に入ってきた新規の炭素(7:31で赤く描かれた炭素)は、その回の反応では抜けない。2周目の反応で抜ける。
● コハク酸は対称面を持つので、この分子の両側は分子的に対等である(区別できない)。なので、これ以降、オキサロ酢酸までの4炭素原子中間体では、アセチルCoA由来の炭素は分子全体に均一に分布していることになる。
● クエン酸回路において、動物ではGTPが生成されるが、速やかにATPに変換される(植物や細菌ではATPが生成される)。
(2)カルビン・ベンソン回路について
● カルビン・ベンソン回路は二酸化炭素を炭水化物に還元する反応経路である。ストロマで起こる。
● すべての高等植物は、カルビン・ベンソン回路で固定した炭素を、主にデンプンやセルロースに変換する。
● CO2はエネルギー的に低い状態の分子である。CO2を有機分子に取り込む反応には、エネルギーと還元力が必要である(C-C結合の形成にはATPの供給するエネルギーが必要である。また、CO2を炭水化物に変換するためには、強力な電子供与体が、高いエネルギー状態の電子を供給しなければならない。すなわち、電子を押し付ける力、還元力が必要である。植物では、NADPHがこの電子を供給する)。
● まずチェックすべき重要な反応はRuBP→2PGAの反応である。この過程でCO2が固定されるからである。
● RuBPとCO2の反応を触媒する酵素をルビスコという(ルビスコは地球上で最も量が多い酵素とも言われる)。
● RuBP(リブロースビスリン酸)、PGA(ホスホグリセリン酸)、GAP(グリセルアルデヒド三リン酸)は、正式名称を知っておくとよい。正式名称をぼんやりとでも覚えておけば、略称の書き間違いななくなる(PGAをPAGなどのように誤って書いてしまうミスを減らせる)。
・RuBP ( ribulose bisphosphate ):リブロースビスリン酸(リブロース二リン酸とも言う。「ビス」は2の意味。リン酸[P]を2個もっている。)
・PGA ( phosphoglyceric acid、phosphoglycerate ):ホスホグリセリン酸(PGAはC3植物のCO2固定の初期産物。「ホスホ」はリン酸を表す。)
・GAP ( glyceraldehyde-3-phosphate ):グリセルアルデヒド三リン酸
※入試では、物質名の表記は、今使っている教科書の表記に揃えること。
● カルビン・ベンソン回路は、CO2分子を、RuBP(CO2の受容体といえる)に結合させることによって、1回に1分子ずつ取り込む。
● C5(Cを5個もつ)のRuBPと、CO2(Cを1個もつ)が結合し、一瞬、C6の不安定な化合物ができるが、すぐに2つに分解し、PGA(C3)が2分子生じる。
● PGAから、いくつかの反応を経て、GAPが生じる(この反応ではATPとNADPHが使われる)。
● 実際は、たくさんのGAPが生じているが、その中のGAPの一部がカルビン・ベンソン回路から抜け、糖の合成に使われる。その他のGAPはRuBPの再生に使われる(この再生にはATPが使われる。このRuBPの再生には、実際にはいくつもの反応が関わる)。
*GAPからRuBPが再生するステップは、実際は複雑である。簡単に結論だけ言うと、5分子のGAP(5分子×3個の炭素=15個の炭素)から、3分子のRuBP(3分子×5個の炭素=15個の炭素)が生じる。5分子のGAPに含まれる炭素の数と、3分子のRuBPに踏まれる炭素の数は同じである(15個)。
● GAPから直接グルコースができるわけではないが、できる化合物をグルコースに換算すると、光合成は以下のような反応式になる。
6CO2+12H2O → 6O2+6H2O+C6H12O6
(あたかも、呼吸の逆反応であるかのようである。もちろん実際には別の酵素、仕組みが関わっている)
● カルビン・ベンソン回路から出たGAPは、グルコースやほかの糖など、さまざまな有機化合物を合成する代謝経路の出発物質となる。
● 光化学系と電子伝達系で作られたATPとNADPHは、PGAからRuBPが再生される際に消費される。
● 二酸化炭素濃度が薄いと、ルビスコがうまく働かず、光合成が阻害される(ルビスコが酸素と反応してしまう。これを光呼吸という)。
● ルビスコ(rubisco)の正式名称は「ribulose bisphosphate carboxylase/oxygenase」である。「ribulose bisphosphate(RuBP)」と、 「carboxylase(炭酸固定酵素)/oxygenase(酸素化酵素)」という語がくっついている。この名前は、「RuBPとCO2の反応を触媒するだけでなく、RuBPとO2の反応も触媒し得る」ということを表している。ルビスコの名は、アメリカの製菓会社ナビスコを文字って提案された。
*光呼吸は、酸素を消費され、さらに、エネルギーが消費されてしまう反応である(光呼吸には活性酸素を処理する意義があるとも言われている)。
● 光供給を停止すると、RuBPが減少しPGAが増加する。しかし、すぐにPGAは現象を始める。これは、PGAの酸化的分解や、他の物質への転換が原因であると考えられる。
0:00 解糖系
1:39 クエン酸回路(概要)
2:43 クエン酸回路(炭素数)
6:14 クエン酸回路(NADHとFADH2)
8:02 光合成とカルビンベンソン回路
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