【 note : https://note.com/yaguchihappy 】
光合成(光化学系)について講義します。
語呂「自ら山村へ。苦労して電車に飛び乗る(水から酸素が生じる。クロロフィルから電子が飛び出す)」
問題:真核生物の行う光合成において、水の分解が起きるのは光化学系Ⅱか?Ⅰか?また、光化学系ⅡやⅠはどこにあるか?
答え:Ⅱ、葉緑体内のチラコイド膜上
問題:葉緑体に含まれる緑色の光合成色素を何というか。
答え:クロロフィル(クロロフィルは青[短波長]や赤[長波長]の光をよく吸収する。緑の光が反射され、我々の目に入るのでクロロフィルは緑に見える。クロロは緑色、フィルは葉を意味する。)
問題:光合成で生じる酸素はどの分子に由来するか?選べ。
①水 ②二酸化炭素
答え:①(水の分解により副次的な現象として酸素の放出がおこる。酸素を放出するために光合成をするのではないことに注意しよう。光合成の目的はあくまで炭水化物の合成であり、酸素の放出は、その過程で起こる副次的な現象である[過去早稲田で出題された]。)
問題:二酸化炭素がないと(空気がないと)光化学系や電子伝達系の反応が停止する。どうしてか。
答え:NADPHがNADP+にもどれなくなるから。
解説:光化学系Ⅱ、電子伝達系、光化学系Ⅰの反応を推し進めるには、電子の受容体であるNADP+が必要である。NADPHは、カルビン・ベンソン回路(二酸化炭素を必要とする反応)でNADP+に戻る。二酸化炭素がないと、カルビン・ベンソン回路が停止し、NADP+が再生されない)。
●この動画で見たように光エネルギーを用いて、ADPをリン酸化する仕組みを光リン酸化という。
●水を分解できるようになった(その結果、酸素を排出するようになった)クロロフィルaの出現は、地球の大気組成・生物達を劇的に変えていった。
●光エネルギーを、高エネルギー運搬物質(ATP、NADPH)に込めるところが、光化学系のポイント。
●最初の光合成は、太陽光の届かないはるか海底で行われた可能性がある。海底の熱水活動域では、熱の影響で、ある波長の光が僅かながら放出されている。この光のほとんどは周囲の海水に吸収されてしまうが、特定の波長域の光は生き残る。
この特定の波長域が、クロロフィルaとbの吸収する波長と一致するという報告がある(Nisbet)。もしかしたら、太陽光の届かない暗黒の世界で、光合成というしくみは生まれ、それが、浅い海で生息可能な生物に引き継がれたのかもしれない。
●光の実体は電磁波である(電場が磁場をつくり、磁場が次の電場をつくる、そしてその電場がさらに次の磁場を・・・このような連続した電磁場の連続的誘起こそ、『光(電磁波)』の正体である)。
この電磁波によって(連続した電場の変化によって)、光合成色素分子のもつ電子が揺さぶられる。そうして、電子は元の軌道より上の、エネルギーの高い軌道に飛び上がる。これを、「電子が励起する」と表現する。この励起した電子のエネルギーを上手に使いながら有機物を合成しようというのが、光合成である。
●教科書では、高いエネルギーを運搬する物質としてATPをはじめに学ぶが、NADPH(や、呼吸で登場したNADH、FADH2)も、高エネルギー運搬体として働く(高いエネルギーを持った電子を運搬している)。
●葉緑体内でつくったATPは、葉緑体の外に出ることができない(ここがミトコンドリアと違う。ミトコンドリアにはATPを細胞質へ出す装置が埋め込まれている)。したがって、葉緑体内で生じたATPは、葉緑体内で[カルビン・ベンソン回路を推し進めるためなどに]利用される)。
●光化学系とは、正確には、光合成の光化学反応を起こすのに必要な色素、電子受容体、タンパク質などを含む反応システム全体を指す。「系」は「システム・しくみ」を意味する。
●葉緑体とミトコンドリアは似ている。例えば、どちらも内外異質の二重膜構造をもつ。さらに高校生にとって厄介なことに(進化学者が興味深く思っているように)、光合成と呼吸も一見似ている。しかし、反応の目的や起こる場所など、中身は全然違う(僕が授業をするのは同じでも、授業をする場所も、目的も違うようなものです)。2つの反応に共通しているのは、水素イオンの濃度勾配を利用したATP合成のしくみと、補酵素を上手く使いながら、酸化還元反応を多用しているということである。
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