オーストラリアは、電力の発電方法がかなり特徴的。
南太平洋で核実験が繰り返された歴史からオセアニア全域で反核感情が強く、原子力発電の利用にも慎重。
石炭や天然ガスが国内で生産でき、安く調達できることもあり、オーストラリアは石炭・天然ガス火力が中心の電源構成となっていた。
ところが、2022年の政権交代以降、政府は再生可能エネルギーへの大転換を宣言。
を掲げ、脱炭素路線を強力に打ち出した。
また、降水量の多いタスマニア島では水力発電の開発が急速に進んでいる。
これに対し、野党からは原子力発電の解禁論も浮上するなど、今後のエネルギー政策の見通しは不透明になっている。
今後も再エネの発電比率が急速に高まっていくことが予想される。注目したい。
(AEMO 2024 Integrated System Plan、日本語は筆者追加)
これまで、オーストラリアでは原子力発電が行われてこなかったと説明しました。
オーストラリアでは原発に対する反発が強く、法律で原発が禁止されているほどなのですが、実はこの理由は、先程解説したような単純な理由だけではありません。
オーストラリアの政治の項で説明したとおり、オーストラリアは自由党と労働党の二大政党制なのですが、自由党の有力な支持基盤のひとつに石炭業界があります。
石炭業界は石炭を使ってほしいので、石炭火力推進派なわけです。原発が増えるとその分石炭火力が減りますから、石炭火力を脅かす原子力発電は商売敵なわけで、石炭業界を守るために原子力発電に反対してきたとも言われています、
石炭火力は安価な発電方法ですから、安価にエネルギーが供給できるということで国益にもかないますし、これまで特に問題にはなってきませんでした。
ところが、近年の脱炭素の流れを受け、2022年に発足した労働党のアルバニージー政権が政策を急転換。再エネ中心の電源構成へのシフトを打ち出しました。
これは、2030年までに再エネ発電比率82%、2040年までの全石炭火力発電所の閉鎖を目指すもので、それまでのエネルギー政策とはまさに180度の大転換が起こったといえます。
政策の急転換に伴い、オーストラリアのエネルギー価格は上昇を続けています。これは、新たな発電・送電・蓄電インフラの整備に多額のコストがかかっていること、
労働党政権としてはオーストラリアでの再エネ発電は石炭火力よりもコストが安いとしており、政策の基本方針を維持する意向を示しています。
これに対し、自由党の立場にも変化が生じています。
自由党は、供給が不安定な再エネへの急転換を疑問視。電力の安定供給を重視し、これまで反対してきた原子力発電を推進する立場に転換しました。
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