原子力発電
原子力発電
(主に)ウランの核分裂により発生する熱を利用してお湯を沸かし、蒸気でタービンを回して発電する方法です。
特徴
原子力発電の主な特徴は、
- 発電容量が大きい
- 比較的安価
- CO₂を排出しない
- 発電量の調整が難しい
- 厳重な安全管理が必要(事故時の被害が大きい)
などでしょう。
発電容量が大きい
なにせ熱源が核分裂です。E=mc²ですから、とんでもない量の熱エネルギーが生まれます。
ですから、原発全体で考えるとものすごい出力になります。例えば、世界最大の原発である東電柏崎刈羽原発の総出力は821万2千kw、一千万世帯分以上の電気を生み出しているのです。
比較的安価
そんな調子で、少量の核燃料から莫大な電力を生み出すわけですから、1kwhあたりの発電コストはそこまで高くなりません。
CO₂を排出しない
しかも、地球温暖化の原因となるCO₂を排出しないときています。なんて経済的で、クリーンで、素晴らしい発電方法なんでしょう!
発電量の調整が難しい
しかし、欠点もあります。
火力発電は燃料の量を調整すれば簡単に出力を変えられます。しかし、核分裂を人間が制御することはできません。
そういうわけで、原子力発電は発電量が常にほぼ一定であり、これが厄介なのです。
夜間は電力需要が落ち込むため、発電量を下げなければなりません。しかし、原発の発電量は変えられない。さあ、どうする。
これを解決するためによく用いられるのが揚水発電という発電方法です。夜間に原発の余剰電力を消費して水を汲み上げ、昼間の需要ピーク時に水を落として発電します。
この揚水発電は発電量の調整を最も容易に行えるため、原発とセットで建設されることがしばしばあります。
事故時の被害が大きい
これは東日本大震災、その後の福島第一原子力発電事故を経験した皆さんなら説明するまでもなくよくご存じだと思います。原発でひとたび事故が起こると、周辺地域は放射能汚染により数十年にわたって立ち入りができなくなり、地域に大きな傷跡を残しました。土壌汚染、海洋汚染も大きな問題です。
原子力発電の動向
原子力発電の発電量の世界ランキングは、
- アメリカ合衆国
- フランス
- 中国
のようになっています。この三か国は絶対に覚えてください。
アメリカ合衆国
アメリカ合衆国は、世界最大の発電量を誇り今後の原子力利用についても積極的とは言い難いにしても前向きな姿勢を見せています。これからも発電量が大幅に落ちることはないでしょう。
フランス
一方、原子力発電を強力に推進していたのがフランスです。フランスは総発電量の四分の三を原子力が占め、発電割合でいえば恐らく世界一ではないでしょうか。そのためフランスでは発電によるCO₂排出が極めて少なく、統計問題でもよく手掛かりになるのでこれは必ず押さえておくべきです。
原子力への依存度が高いフランスの原子力政策はよく注目されるため、近年の動向について少し触れておきましょう。
福島第一原子力発電所の事故を受け、フランス政府は2012年、原子力の発電比率を2025年までに75%から50%に減らすことを決定し、脱原発の方針を明確にしました。
しかし2022年2月、マクロン大統領は原子炉の新規建設を再開すると発表、一転して原子力を推進する立場を明確にしました。フランスは再び、原子力を推進する立場に戻ったのです。
これには、近年の脱炭素志向があります。再生可能エネルギーだけではエネルギー需要に応えられないと判断し、再エネと原子力を組み合わせたエネルギー政策に転換したということです。
中国
最後に中国。こちらは、近年の急速な経済成長に伴う慢性的なエネルギー不足を解決するため、急ピッチで原発の建設が進められています。立場でいえば、原子力を強力に推進している立場です。
国内の総電力需要が大きすぎるため、また原子力発電の大増強を始めてから日が浅いため、発電割合はまだ小さいながら建設中の設備容量は世界一をずっと維持しており、その拡大路線は留まるところを知りません。今後の成長が予測されます。