天然ガス
天然ガス
近年、「環境にやさしい」と大注目の天然ガス。皆さんの家庭にも都市ガスとしてやってきていたり、街中に巨大な球状の天然ガスタンクがあったりと、意外と身近な資源だったりします。
そんな天然ガスの、資源としての特徴はこちら。
重要なのは、とにかくクリーンなエネルギーであるということです。
クリーンとはどういうことかというと、熱量当たりのCO₂排出量が少なく、大気汚染の原因物質を殆ど排出しないということです。つまり、地球温暖化につながりにくく、空気も汚染されない燃料であるということです。後々重要になるので頭の片隅に置いておいてください。
一方で、石炭に比べれば高価なエネルギー源であるのも事実です。保管や配送もちょっと面倒です。そのため、発展途上国ではあまり普及していません。
天然ガスとLNG
天然ガスを語るうえで外せないのが、LNGの存在です。LNGとは液化天然ガスの略で、気体である天然ガスを−162℃まで冷却し凝縮させて液体にしたものです。
天然ガスは気体なので、エネルギー密度が非常に低く輸送効率が極めて悪いのです。水が水蒸気になると体積が1600倍になるという話を聞いたことがあるでしょうか。つまり、同じ量のH₂O分子を水蒸気の状態で運ぼうとすると、水で運ぼうとした場合の1600倍も大きいタンクが必要になるわけです。
同じことが天然ガスにもいえ、天然ガス、つまりメタンは液体にすると体積が約1/600になります。つまりLNGは、気体のままの天然ガスより輸送効率が600倍良いということです。
そのため、天然ガスを貯蔵・運搬しなければならないとなったときは、LNGにされることが多くなります。パイプラインなら気体のままで輸送されるんですけどね。
利用
さて、天然ガスの基礎知識を押さえたところで、次は天然ガスの利用について見ていきましょう。
天然ガスは燃やすことにしか使いませんが(日本での天然ガス利用は発電+都市ガス用で9割強)、冒頭に述べたように非常にクリーンであるということから現在利用が急速に広まっています。特に発電分野での天然ガスへの移行は顕著で、天然ガス火力は2019年、日本の電源の4割弱を発電し、電源構成に占める割合も1980年の倍以上になっています。
この傾向は環境への配慮が進んでいる先進国でよくみられ、先進国は石炭を次々と天然ガスに置き換えようとしています。一方、石炭に比べると高価なので資金に余裕のない発展途上国では先進国ほど利用が進んでいません。
生産・流通・消費
天然ガスも石油と同様偏在性が高く、産出国が偏っています。また、天然ガスは石油と産出地域が重なっていることが多いので、油田の多い地域と併せていっぺんに覚えてしまいましょう。
天然ガスの生産は、アメリカ合衆国とロシアだけで世界の総生産量の4割弱を占めています。このうち、アメリカ合衆国ではシェールガス(詳しくは石油の項を参照)が六割を占めています。
とにかく、生産は米露で世界の四割だけ、必ず覚えましょう。
次に天然ガスの流通です。例によってアメリカ合衆国は国内消費の量が凄まじいので輸出はあまりしていません。
天然ガスの流通で押さえるべき国は、ロシアやノルウェー、カタール、オーストラリア、東南アジア諸国です。
天然ガスの輸送手段は主にパイプラインとLNG船です。近隣の国(特に陸続きの国)同士ではパイプラインを用いた輸送が中心で、ロシアやノルウェーから欧州諸国へは多数の天然ガスパイプラインが敷設されています。欧州はロシアへの天然ガス依存度が高いわけです。今回のウクライナ侵攻でも、このせいで当初ドイツはロシアに対して強い態度が取れず問題になっていましたね。
中東ではカタールを挙げましたが、なぜ湾岸諸国ではなくカタールなのかというと、湾岸諸国は天然ガス埋蔵量が多いわりに採掘が盛んではなく、積極的に開発を進めているのがカタール程度だからです。
カタールやオーストラリア、東南アジア諸国の輸出相手は、日中韓などのアジアが中心です。そのため、両国は天然ガスをLNGに加工し、LNG運搬船を用いて外国に輸出しています。
日本は天然ガスの全量をLNGによって輸入しており、輸入相手国はカタール・オーストラリア・マレーシア・ロシアが多くなっています。
(世界の天然ガスの流通)