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石炭


石炭

身の回りにはまずないでしょうし、馴染みは薄いと思いますが、エネルギー資源としては石油と同じかそれ以上に重要な資源です。

資源としての石炭の特徴は以下の表のようになっています。

スクリーンショット 51.png

利用

石炭は基本的に燃やすことにしか使いません。石炭化学工業も存在はしますが市場規模は石油化学に比べれば微々たるものです。

石炭の圧倒的な強みは、安いということです。ただ熱を得るためだけに燃料を使うんだったら、石炭でやれば一番安上がりなのです。だったら石炭を使いますよね。というわけで、ただ熱が得られればいい火力発電の燃料としてよく用いられます。

ただし、石炭は汚染物質を大量に出してしまうという、環境にうるさい現代ではかなり手痛い弱点を持っています。石炭には不純物が大量に含まれていて、しかも石炭は固体ですから精錬することができません。そのため燃やすととんでもない量の大気汚染物質が放出され、環境問題の大きな原因となっています。欧州では石炭利用が酸性雨の主要因と目され、経済発展が遅れ石炭利用の多い東欧で被害が顕著です。そのため、環境に配慮している先進国では石炭利用が減少しています。

また、製鉄の分野では現在石炭を蒸し焼きにして純度を上げ、熱量を上げたコークスを用いる手法が一般的で、というかほぼ全部この方法で鉄を作っているので、製鉄業界にとって石炭は欠かせない存在です。

とはいっても、近年の脱炭素の流れで石炭の代わりに水素を用いる方法が研究されていて、将来的には製鉄業の石炭離れが進むことが予想されます。まだ遠い未来の話ですがね。詳しくは、鉄鋼業の項で解説しています。

産地

よく言われるのは、石炭は古期造山帯で産出するというものです。

間違ってはいないのですが、正直かなり説明不足で混乱を招きかねないので、補足も交えつつ解説していきます。

石炭が産出する地域を正確に把握するためには、石炭の形成過程を理解しておく必要があります。

石炭は、太古の昔の植物の遺骸が堆積し、地下の高温高圧の環境で炭化することによって形成されます。

つまり、石炭ができるには以下の条件が必要だということです。

  • 植物の遺骸が分解されずに堆積する
  • 堆積後、地殻変動・造山活動などを受ける(=高温・高圧にさらされる)

普通、植物は枯れて倒れたら菌類によって分解されます。倒木にキノコがたくさん生えているところを見たことがあるでしょうか。植物の遺骸は菌類の栄養になり、分解され、朽ち果て、ボロボロになり、土に還っていきます。後には何も残りません。したがって石炭にはほぼなりようがないのです。現在ならば、です。

「現在ならば」と言ったのには理由があります。古生代、古期造山帯が形成される頃、約3億年前の石炭紀には、死んだ植物を分解する菌類が存在しなかったのです

そのため、大量の植物の遺骸が分解されずに堆積し、地下に埋められ、その後の大規模な造山運動(=古期造山帯の形成)によって炭化して石炭となりました。

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古期造山帯というのは古生代に造山運動を受けた場所のことなのですが、古生代が終わり中生代以降になると植物の遺骸を分解できる菌が現れ、炭化する植物は急激に少なくなってしまいます。

古期造山帯に炭田が分布することが多いのはこういった背景があります。

しかし、新期造山帯にも炭田は分布します。代表的なのはインドネシアでしょう。ここで混乱する受験生が後を絶ちません。

これにもちゃんと理由があります。熱帯で植物が次々と枯死していく地域、あるいは寒冷で菌類の活動が不活発な地域では、菌による分解スピードを植物の堆積スピードが上回るため、結果として分解されない植物の遺骸が残るようになります。これが地下で造山運動を受け炭化すると、晴れて石炭になれるわけです。

したがって、新期造山帯に炭田が分布することは不思議なことではありません

このように、石炭は言ってみればどこでも産出される可能性を秘めた資源なのであり、偏在性が低く、世界中、非常に広い地域で産出されます。わりとどこの国でも採れます。

石炭.png (世界の炭田の分布)

この、世界中わりとどこでも採れるというのは石炭の大きな強みの一つで、外貨に乏しく資源の輸入が困難な発展途上国にとっては自国内で採れる貴重なエネルギー資源になっていることも多く、発展途上国で石炭依存の傾向が強い一因でもあります。

この良い例が中国です。中国は国内に多数の炭田を有しており、自国で安く生産したものを自前で消費してしまおうという傾向が強くみられます。石炭を使えば、わざわざ外貨を払ってエネルギー資源を輸入する必要がないからです。

環境問題と石炭

冒頭でチラッと言っていますが、石炭は燃やすと大量の大気汚染物質を放出します。これが大気汚染、特に酸性雨の原因となり、問題になっているわけです。

石炭には多量の硫黄分が含まれているため、燃焼すると硫黄酸化物SOx)を排出し、酸性雨の要因となります。

また、石炭は燃焼した際の煤煙も多く排出するため、適切に処理しなければ大気汚染の原因になります。

先進国では脱硫・脱硝・煤煙の除去が行われ、大気汚染物質を除去しているため大きな環境問題にはならないのですが、発展途上国では十分な対策がとられていないため深刻な大気汚染問題が発生しています。

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