鉄鋼業
簡単なまとめ
原料指向型立地で、かつては炭田立地、近年は鉄山立地・臨海立地が多い。
圧倒的に中国の生産量が多く、かなり離れてインド、日本が続く。
日本は、高品質・高付加価値製品で国際競争力を維持。
日本の鉄鋼業は原料を輸入に頼り、太平洋ベルトに集中。
石炭はオーストラリア・インドネシア、鉄鉱石はオーストラリア・ブラジルからの輸入が多い。
用語解説
- 鉄鉱石:鉄の原料。鉄を多く含む鉱石。
- コークス:石炭を加工した燃料。石炭より火力が強い。鉄鉱石を融かすため、高炉で用いられる。
- 鋼鉄:普段よく見る、いわゆる「鉄」。鉄に少量の炭素を添加したもの。
- 粗鋼:加工前の鉄の塊。粗鋼を成形・加工して、鋼材(鉄製品)になる。
用語の使い方を誤ると、記述・論述で突っ込まれて余計な減点を食らう可能性もあるので注意しましょう。
立地
鉄鋼業は典型的な原料指向型の立地です。原料よりも製品の方が圧倒的に重量が軽くなるからです。
鉄鋼の原料は鉄鉱石、石炭、石灰石ですので、これらの原料産地の近くに立地することになります。
立地の変化
20世紀初頭までは、石炭の使用量が鉄鉱石の使用量より多かったので、製鉄所は炭田付近に立地しました。
現在では、技術の進歩によって石炭の使用量が減り、鉄鉱石の使用量が石炭の使用量を上回ったため、製鉄所は鉄山付近に立地するようになりました(鉄山立地)。
また、古くから製鉄を行ってきた先進国では原料の枯渇が進んだため、原料の輸入に便利な臨海立地が増えています。
立地の変化は、ヨーロッパやアメリカ合衆国で顕著にみられます。
ヨーロッパでは、かつて石炭・鉄鉱石が採れるアルザス・ロレーヌ地方やルール地方、炭鉱の近いバーミンガムで製鉄が盛んでしたが、近年は資源の枯渇により臨海部のフォスやダンケルク、タラントなどに拠点が移動しました。
アメリカ合衆国では、アパラチア炭田の石炭とメサビ鉄山の鉄鉱石を五大湖の水運で結び付け、ピッツバーグで製鉄が盛んでした。現在ではピッツバーグの鉄鋼業は衰退し、金融・医療・学術都市に変貌しています。
日本でいうと、日本最初の製鉄所・八幡製鉄所は、筑豊炭田が近いという理由で北九州に立地したのですが、石炭を輸入に頼るようになり、輸入に便利で大消費地にも近い太平洋ベルトに生産の中心が移りました。
生産国
圧倒的に中国、次いでインド、3位に日本。ここまで覚えれば十分です。
特にインドは近年の経済成長に伴う生産量の伸びが顕著ですね。
日本は高品質製品に強みを持ちます(自動車向け高張力鋼など)。
資料:GLOBAL NOTE 出典:WSA
中国込みでグラフを作ると2位以下が超見づらかったので、2枚目は中国抜きで作りました。
製造過程
言葉でダラダラ説明するより動画を見た方がよく分かるのでまずは動画を見てください。
新日鐵住金(現日本製鉄)室蘭製鉄所で、実際に製鉄が行われている現場に潜入した大迫力の動画です。(すみません、okkeではなくYouTubeに飛びます)
鉄鉱石、コークス、を高炉に投入
↓
銑鉄ができる
↓
銑鉄を転炉に投入
↓
鋼鉄ができる(粗鋼)
↓
圧延、加工
↓
鉄製品完成!
高炉で鉄鉱石をドロドロに溶かして鉄を取り出し、それを転炉で不純物を抜いてきれいにするって感じですね。
日本の鉄鋼業
日本の鉄鋼業は、1901年の八幡製鉄所操業開始から始まりました。
戦後、鉄鋼業は基幹産業として急速に発展し、世界有数の鉄鋼国になりました。
近年、中国が圧倒的生産量を誇りますが、日本は高品質・高付加価値製品の製造で国際競争力を維持しています。
立地
戦後まもなくまでは、筑豊炭田に近い八幡(北九州)、釜石鉄山を擁する釜石(岩手県)、石狩炭田を背景に室蘭(北海道)が製鉄都市として栄えました。
高度成長期以降、鉄鉱石や石炭は外国からの輸入に頼るようになり、原料輸入に便利で大消費地に近い太平洋ベルトに立地するようになりました。
代表的な都市として、川崎、君津、東海、倉敷、北九州、大分があります。
(ちとにとせより引用)
原料
鉄鉱石の原料としての石炭・鉄鉱石はほぼ全て輸入に頼っています。
- 石炭→オーストラリア、インドネシア
- 鉄鉱石→オーストラリア、ブラジル
これさえ覚えておけば問題ありません。