【 note : https://note.com/yaguchihappy 】
酵素のはたらきに関するグラフについて講義します。
問題:反応速度ー基質濃度のグラフが、高い基質濃度で水平になるのはなぜか。
答え:すべての酵素が酵素ー基質複合体を形成しているから。
問題:生成物濃度ー時間のグラフが、時間の経過に従って水平になるのはなぜか。
答え:すべての基質が生成物に変化したから。
(基質が生成物に変化する反応が平衡状態に達したから)
活性化エネルギーについての講義
• 酵素と活性化エネルギー 高校生物
●縦軸と横軸に細心の注意を払います!グラフの意味を日本語にするのがポイントです。
●教科書の基質濃度ー反応速度のグラフは、つまり、「酵素の周りの基質の混み具合」と「酵素を試験管(反応容器)に入れた瞬間に生成物が増える勢い(初速度)」の関係を示したグラフである。そこが難しい。しかしこの難しい話を教科書は避け、省いてしまうので、余計わけのわからない解説をする講師が増える。
●ふつう、基質は酵素に対して大過剰に存在する。これは暗黙の了解であり、細胞内でふつうにある条件である。(これを理解していない誤った解説が蔓延っているが、この事実を考えないと、酵素が休みなく働き続けるとき、つまり最大反応速度となる時の基質濃度が、酵素量を2倍にしても同じであることを説明できない。つまり、最大反応速度に達する時の基質濃度は、基本的に、酵素濃度に関わらず変わらないのである。この面白く重大な事実が、大学でのミカエリス定数への学習につながる。)
酵素が基質より多く存在する条件を想定して基質濃度反応速度のグラフを教える生物講師も多い。誤りである。
基本的に基質が酵素に対して過剰に存在するという条件で反応速度と基質濃度のグラフは描かれる。基質に比べ酵素が過剰に存在するような条件は異常で、現実的ではない。
資料集を一目見ればわかることである。
速度が頭打ちになるのは、酵素が足りないからではなく、酵素の周囲が基質で満たされて、常に酵素の活性部位に基質が衝突し続けるからである。教科書の表現を借りれば、酵素が常に酵素ー基質複合体となっているからである。
酵素濃度が何倍になろうが、理想的なモデルでは、最大反応速度を与える基質濃度はほぼ同じである。
*一つの酵素が一定時間内に処理できる基質の量には限界がある。る酵素1分子はふつう、基質を、1秒に1000分子程度処理する。
●生体内の反応には、酵素がない状況では11億年に1度しか起きないとされる反応もある。しかし、ふつう、酵素が触媒する反応は0.0000001秒に一度反応が起こる。たとえば、砂糖の自然な分解には何世紀もの時間がかかるが、我々は日常的に砂糖を消化する。
●触媒は、平衡点を変えないことにも注意しておきたい。触媒は、平衡に達するまでの時間を短縮するのみである。
●ふつう酵素の反応速度を測定する際は、反応の『初速度』を測定する。反応速度と基質濃度のグラフは、様々な基質濃度をたくさんの試験管に用意し、一定量の酵素を加えて、それぞれの基質濃度の下での初速度を測定することで描いたものである。どうして初速度を用いるのかというと、反応の初期は、生成物がほぼ存在しない状態なので、酵素と生成物が酵素ー生成物複合体をつくる反応(逆反応)を無視できたり、酵素のゆっくりとした変性を無視できたり(教科書では特に書かれませんが、酵素は自然と壊れていく)、生成物が反応に与える影響を無視したりできるから(フィードバック的な影響を無視できるから)である。
●今回の話では、平衡や定常状態の議論はしていません。続きは大学で学んでください。
0:00 生成物濃度と時間の関係
2:52 反応速度(初速度)と基質濃度の関係
10:40 発展(大学内容)
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