【 note : https://note.com/yaguchihappy 】
放射性チミジンで染色体を標識する問題について講義します。覚えなくてよいですが、このような、放射性物質の行き先を調べる実験法はオートラジオグラフ法(オートラジオグラフィー)と呼ばれます。
*オートラジオグラフ法(オートラジオグラフィー):放射性物質の取込みを調べる方法。放射性物質の取込みを観察し、生体内物質の分布・移動・代謝を調べることができる。まず、組織、細胞、細胞の成分を放射性の物質で標識し、結合しなかった放射性物質を洗い流す。この試料の上に放射線で感光する写真乳剤をのせる。これを現像すると、放射性物質の分布に対応した位置に小さな銀粒子が現れるので、それを顕微鏡で観察する。今回の動画のような実験の場合は、一定時間ごとに、分裂中の細胞集団から少しずつ細胞を採取し、染色体の像を見ていくことが多い。
*放射性チミジンには、3Hチミジンが使用される。3Hチミジンは3H(トリチウム。3HやTと表記される。質量数3の水素の放射性同位体である)で標識したチミジンのこと。
問題:DNAが複製される時期を以下から選べ。
①間期のG1期 ②間期のS期 ③分裂期の中期
答え:②
問題:チミジンを取込む細胞は、何期の細胞か。
答え:S期(DNA合成期)
解説:DNAの複製が行われているのはS期である。
問題:染色体が太く凝集し、観察しやすくなっているのはどちらか。
①間期 ②分裂期
答え:②
● 今回の問題における現象の流れ
①1回目のS期(ここでは放射性のチミジンが添加される。1つのDNAが2つになる)。
(S期→G2期→前期→中期へ)
②1回目の中期(姉妹染色分体はどちらも標識されている)。
③後期で姉妹染色分体は分かれる。
(後期→終期→G1期→S期へ)
④2回目のS期(放射性チミジンは与えない。1つのDNAが2つになる)。
(S期→G2期→前期→中期へ)
⑤2回目の中期(Bの像が見られる)。
⑥後期で姉妹染色分体は分かれる。
(後期→終期→G1期→S期へ)
⑦3回目のS期(放射性チミジンは与えない。1つのDNAが2つになる)。
(S期→G2期→前期→中期へ)
⑧3回目の中期(BとCの像が1:1で見られる)
● 染色分体とは、複製によって生じた同じ遺伝情報をもつ2つの二本鎖DNAのこと(ただし、染色分体の語と姉妹染色分体の語を区別せず用いることも多い)。
● 姉妹染色分体とは、DNA複製を終えた(G2期、分裂期における)染色体を構成している2本の染色分体のこと。分裂期中期まで、コヒーシンというタンパク質が姉妹染色分体を接着させている。分裂期後期に、セパラーゼと言う酵素がコヒーシンを分解することで、姉妹染色分体が分離することが可能になると考えられている。
● チミンとデオキシリボースが結合したものをチミジンと言う。
● テイラーは、そら豆の種子を放射性のチミジンを含む培養液で発芽させ、DNAを標識した。その後放射性チミジンを除いた培養液に移し、染色体増を観察し続けた。その結果、1回目の複製では2つの染色分体が標識され、2回目の複製では片方の染色分体が標識されていた。
● 染色体は、非常に長いDNAがぎゅううっとコンパクトに折りたたまれてできている。また、DNAの他、タンパク質も含んでいる。
染色体とDNAについての動画はこちら↓
• 染色体・DNA・遺伝子・ゲノム 高校生物基礎
● 放射性チミジンを用いた細胞周期の追跡に関する講義はこちら↓
• 放射性チミジンを用いた細胞周期の追跡①/③ 高校生物基礎発展
• 放射性チミジンを用いた細胞周期の追跡②/③ 高校生物基礎発展
• 放射性チミジンを用いた細胞周期の追跡③/③ 高校生物基礎発展
noteではもう少し詳しく解説している↓
https://note.com/yaguchihappy/n/n191308c58e3d
● 体細胞分裂についての講義はこちら↓
• 体細胞分裂に関するグラフ 高校生物基礎
*今回の動画の問題文は少し雑に書かれています。1回目の複製のみで放射性チミジンが取込まれると考えてください。
0:00 問題
0:37 ポイント
0:52 第1回の分裂について
4:17 第2回の分裂について
5:45 第3回の分裂について
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#半保存的複製
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