自動車工業
簡単なまとめ
巨額の資本と高度な技術が必要であるため、先進国中心。
中国・日本・アメリカ合衆国・ドイツが自動車生産の中心。
特に中国は、旺盛な内需によって生産台数を伸ばしてきた。
近年のEVシフトにより、中国の台頭が見込まれている。
特徴
自動車産業は、実はけっこうレベルの高い工業です。
自動車1台を作るのに必要な部品は約3万点。この膨大な種類の部品を調達できるだけの製造業の下地がなければなりません。また、エンジンというものは技術の塊でありまして、簡単に作れるものじゃないんです。さらに、組み立てにも多くの労働力と熟練工の技術が必要。
製造過程以外にも、市場調査・商品開発・設計・販売にも何十億では済まないお金がかかります。こんなん先進国の大企業じゃないと無理なわけです。トヨタの年間売り上げなんて43兆円ですよ。億じゃないですからね。
このように、自動車産業は高度な技術と巨大な資本が必要な、ハイレベルな産業なのです。
歴史
自動車がはじめて大衆化したのは1920年代のアメリカ合衆国でした。大正と昭和の間くらいの時に、アメリカはもう車が普及していたのです。
アメリカの独走状態は1950年代まで続き、この頃はアメリカが世界の自動車の9割を生産していた程です。
60年代以降、西ドイツや日本が生産台数を伸ばし、特に日本は石油危機以降、低燃費を売りに世界各地でシェアを伸ばしました。この結果、欧州やアメリカでは貿易摩擦が発生しました。
80年代以降は韓国、2000年代以降は中国が急速にシェアを伸ばし、中国は圧倒的な内需を背景に世界最大の生産台数を誇ります。
ちなみに日本の自動車工業の歴史をざっくり知りたい方はこの動画を見てみて下さい。
生産が盛んな国
主要国
- 日本
- アメリカ合衆国
- ドイツ
- 韓国
- フランス
は、大手自動車メーカーの本拠地があり、生産台数も多く自動車産業の中心になっています。
輸出中心の国々
- メキシコ
- カナダ
- スペイン
- ポーランド
- チェコ
- タイ
- アメリカや欧州、東南アジアという巨大市場に近く
- 無関税で輸出可能で
- 人件費が比較的安い
という利点から、主要メーカーが進出して生産拠点としており、生産台数が多くなっています。
これらの国々では、国内市場向けではなく外国に輸出するために生産しているため、輸出台数が多いことが特徴です。
需要が見込まれている市場
- 中国
- インド
では、自国で世界的メーカーは持たないものの、外国メーカーが国内の巨大な市場を見込んで進出しています。
ですから、中国が生産台数圧倒的一位とはいっても、その中身は外国の自動車メーカーだらけで中国の独自資本はあまり多くありません。
また、両国では進出した外国メーカーと国内資本で合弁企業を設立させることで、国内の自動車産業の発展を狙っています。
EVシフト
近年、脱炭素の流れからガソリン車の販売規制・EV推進の動きが鮮明になっています。
電気自動車は、ガソリン車とは全く別物です。必要な技術が全然違うのです。
ですから、ガソリン車で今まで覇権を取っていても電気自動車がうまくいくかというとそういうわけではありません。
そのため、EVシフトの進行により、テスラ(米国)やBYD(中国)という新興企業が急速に台頭しています。
EVシフトというのは、中国や欧州が日米の自動車覇権を崩し、自らが新たな覇権国になるために推進しているという政治的な要因も存在します。
ガソリン車で戦おうと思うと日本の技術力に勝てないので、電気自動車という全く新しい分野を作って戦おうとしているわけです。
そこで、欧州や中国は採算や環境性は度外視で電気自動車・バッテリー技術に莫大な公費を投入し、次の覇権をとろうと躍起になっているわけです。
特に中国は圧倒的低価格で攻勢をかけており、欧州市場でも中国製の電気自動車が急速に増加しています。
一方日本は電気自動車の将来性を疑問視しており、あまり積極的ではありません。