RNA干渉(RNAi)
RNA干渉とは
真核生物の遺伝子発現の調節方法の一つで、
短いRNAによって遺伝子発現を「翻訳の段階」で抑制する方法のこと。
RNAi(RNA interference)ともいう。
発見されたのは1998年。実はとても最近のことなのである。
なぜ抑制するの?
遺伝子から必要量以上のタンパク質が合成されすぎることを防ぐためである。これは生きる上で重要な機能であり、RNA干渉は生体内において重要な役割を果たしているのだ。
どうやって抑制するの?
mRNAに、相補的な配列の短いRNA(その他もろもろくっついた複合体)が結合することで、mRNAがばらばらに切断されたり、リボソームが進めなくなることで、翻訳を抑制する。
RNA干渉のながれ
では、RNA干渉はどのように行われるのか、詳しく見ていこう。
① 転写されたRNA前駆体の一部が、相補的な配列も部分で結合し、2本鎖のRNAができる
② 酵素によって分解され、短い2本鎖RNAができる。これをmiRNA(microRNA)という。
※miRNA
ヒトゲノムではこれまで2600種類以上のmiRNAが知られていて、miRNAはなんと、タンパク質を合成する遺伝子の3分の1以上を調節していると言われている。
③ miRNAは細胞質に移動し、タンパク質と結合して複合体を形成する。この時2本鎖から1本鎖になる。
④複合体が標的のmRNAに結合し、mRNAを切断したり、リボソームが進めないようにしたりして、翻訳を抑制する。
また、このようにRNA干渉によって遺伝子産物の発現を抑制することを、ノックダウンという。
※ここで注意しておきたいのが、「遺伝子はなくなったわけではない」ということ。遺伝子の働きを弱める「ノックダウン」は、完全に遺伝子の働きを消す「ノックアウト」とは異なることに注意しよう。
RNA干渉の利用
実験下では、例えばあるタンパク質の機能を調べるために、標的のタンパク質の遺伝子をノックダウンさせるなど、遺伝子機能探索の技術として広く利用されている。
また医療では、RNA干渉によって、病気に関与するタンパク質を合成するmRNAの翻訳を抑制するという治療法が開発されている。
※(補足)siRNA
siRNA (short interference RNA) とは、miRNAと同様、RNA干渉に用いられる短い2本鎖RNAのこと。
ただし、miRNAと異なり、細胞外から取り込まれるものを指す。
例えば、実験するにあたり、人工的に作って生物体内に取り込ませるRNAは、siRNAとなる。