【 note : https://note.com/yaguchihappy 】
生物とは何かについて考えます。下線部(赤字)は主に生物基礎で学ぶ内容です。
●結局、生物を学び始めた我々は、最終的に「生物とは何なのか?我々は何者か?」という問いに帰ってくることになります。
●動画の中では、高校教科書に合わせて、「すべての生物の特徴」のひとつに「生殖により子を残す」があると話しています。しかし、もちろん例外はあります(ラバなど)。なお、この特徴は、個体レベルの話としても考えられるし、細胞レベルの話としても考えられます。細胞は、体細胞分裂の前後で、様々な情報を保持し続けることが知られています。
●生物界を見回し、全生物を観察したとき、生物が、様々な特徴(目立つところ)をもっていることがわかります。我々は(全生物の性質をあわせて平均した仮想の生物を想像し、)その目立った性質、特徴を無意識に判断材料にして、非生物か生物かを日常的に判断しています(だから、たまに、ゆらゆら揺れるビニール袋を生物と勘違いしてしまうし、ある種の植物と石を混同してしまう)。
しかし、全生物の特徴を書き下したところで、生物が「定義された」ことにはなりません。
*たとえば、全てのヘアスプレーを観察し、「蓋が円柱状である」という、全ヘアスプレーに共通する性質(特徴)を発見したとする。だからといって、ヘアスプレーを「蓋が円柱状の物体である」とは定義できないだろう(辞書のヘアスプレーの項目に「蓋が円柱状の物体」とは記載しないはずである)。
試しに「細胞膜で囲まれた細胞でできている」を生物の定義としてみましょう。すると、お風呂に落ちている垢や、シャーレの上で増殖するがん細胞を生物と認めることになります。それらが満場一致で「生物」と認められるでしょうか。多くの人が首を傾げると思います(ただし、完全ではなくても、かなり精度の高い定義であることには間違いありません)。
「生殖により子孫を残す」ことを生物の定義にしてみましょう。すると、ラバは生物とは認められないことになります。これは誰が考えたっておかしい。
「すべての生物の性質を眺めてみると、こんな部分が目立っているなあ」と思い、全生物の特徴は列挙できるのですが、「生物の定義」を決めることは、不可能に近いのです(いくつかの生物学辞典で生物を調べてみるとよい。そこには統一された定義はなく、定義についての議論が書いてあるはずである)。
●本来は、「生物」と「生命現象」を区別して議論する必要があります。
●オボロヅキはメキシコ東北部に自生する多肉植物です。多肉の葉を持ち、乾燥の激しい環境に適応しています。この「環境への適応」も、生物のもつ特徴のひとつです。ちなみに、光合成で学んだCAM植物のCAMとは、「crassulacean acid metabolism」で、ベンケイソウ型酸代謝の略です。CAM型光合成は、ベンケイソウ科の多肉植物ではじめて見つかった光合成の炭素同化様式です。
●入試で問われる重要な元素には、動画で紹介した他にもFe(ヘモグロビンやシトクロムに含まれる)、Mg(クロロフィルに含まれる)、I(チロキシンに含まれる)などがあります。
●我々がバソプレシン(抗利尿ホルモン)というホルモンを分泌して体液の量を調整するように、種子植物も、アブシシン酸という植物ホルモンを用いて気孔を閉鎖することで体内の水分量を調整しています。
●生物の特徴には、他にも「秩序だった構造である」「反応の制御」などが考えられます。
●今回の授業は、大学受験専用に1つの説のみを紹介しています。たとえば、ミトコンドリアをほぼ生物と同等と見なす研究者の方もいらっしゃいます。
●現在、生物には190万種ほど名前が付けられています(実際は数千万種存在すると言われますが、だれにも正確な数はわかりません。何をもって「種」とするかによって、数値が異なります)。
●もちろん木の椅子の話はたとえ話で、本来は、細胞膜および原形質の残っている構造を細胞と呼びます(ただし、もともとcell細胞という用語は、フックがコルク片を観察して名付けたものであることに注意)。
●雌ウマと雄ロバの異系交配による一代雑種をラバといいます。ラバの雄は完全に生殖不能ですが、雌は、ウマあるいはロバの雄と交配により子を産む場合があると言われています。ちなみに、雌ロバと雄ウマの子をヒニーといいます。
●ハーシーとチェイスは、タンパク質の構成元素と、DNAの構成元素の違いが、SとPにあることに注目し、SとPの放射性同位体を用いることで遺伝子の本体がDNAであることを示しました。
●我々が列挙・議論できるのは、ほぼすべての生物がもつであろう『特徴(主に目立った性質)』のみであって、「〇〇を満たすものを生物とする」などという生物の『定義』は、未だ決定されていません。
●最後に触れている「学問」は、大学で学ぶという範囲に限定していません。
●後半のスライドはテストに出ないと言っていますが、葉緑体が生物とは認められない理由は、早稲田で問われています。(細胞外で単独で増殖できない)
●おそらく、生物と非生物は連続している。どこかに1本の境界線を引こうとすること自体不可能である可能性が高い。
0:00 生物とは何か?
0:39 ヒトを構成する元素
1:29 生物がもつもの
2:41 生物の特徴
4:37 生物とは何か?(発展)
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