【 note : https://note.com/yaguchihappy 】
適応免疫(獲得免疫、後天性免疫)・MHCについて講義します。
問題:抗原提示細胞を1つ選べ。
①好中球 ②樹状細胞 ③キラーT細胞 ④赤血球
答え:②樹状細胞
●脊椎動物の細胞表面には主要組織適合抗原複合体(MHC)という遺伝子からつくられる、MHCタンパク質とよばれるタンパク質(MHC、MHC分子などとも呼ばれる。この動画ではMHCと言っている)が発現している。
●臓器移植で拒絶反応が起こるのはMHCの違いによる。
●MHCには2つの分子種、すなわちクラスⅠとクラスⅡが存在する。クラスⅠは生体のほぼすべての組織に強く発現していて、細胞内に侵入したウイルス断片や癌特有のタンパク質などを細胞膜表面に提示している。この提示ははキラーT細胞に対するメッセージである。自分の中にウイルスがいる、または、自分は癌化している。はやく自分を壊してくれ、とキラーT細胞に伝えているのである。(だから、大学入試ではそう書いてはいけないが、ある意味『ほぼすべての体細胞は抗原提示細胞なのである』。大学入試的には抗原提示細胞はマクロファージや樹状細胞のみを指す。)
●ちなみに赤血球はMHCが発現していない。だから僕らはMHCの違いによる拒絶反応の心配をせず『赤血球移植』を、つまり『輸血』を行うことができるのである。
●MHCクラスⅡ分子は、主に樹状細胞、マクロファージなどの抗原提示細胞が発現している。言うならMHCクラスⅡは(厳密ではないが)抗原提示細胞専用MHCである。『MHCクラスⅡ分子+食作用によって取り込まれ断片化された抗原断片』を、ヘルパーT細胞はTCRで認識する。
このように、TCRは『MHC上に提示された抗原断片』を認識することはできるが、『抗原分子そのもの』を直接認識することができない。これは抗原分子と直接結合できるB細胞受容体(抗体分子)との大きな違いである。
●M H Cのしくみは、進化上、(大雑把にいうと)顎を持つ動物(脊椎動物)から現れ始めた。その起源に関しては謎が多い。おそらく、顎を持ったことで、我々脊椎動物は、さまざまな異物を強引に食べることができるようになり、それで、自己の細胞と他者の細胞を分ける強力な仕組みが必要になったのだろう。
●「MHC」が遺伝子を指しているのか、タンパク質を指しているのかを区別するために、MHCが発現してできたタンパク質を「MHC分子、MHCタンパク質」と呼ぶことが多いが、単に「MHC」と呼ぶこともある(たとえば『スタンダード免疫学』丸善出版、『免疫学コア講義改訂4版』南山堂)。免疫の単元は、すぐに教科書の内容が大きく変わるので、高校生は必ず最新の教科書と資料集で用語の使われ方をチェックし、大学入試では教科書と資料集の解釈にあわせること。細かい用語がたくさん登場して大変だろうが、本質は、『有額脊椎動物は、自己と他者を区別するための、精巧なシステムを獲得した』ということである。
●ヒトのMHCはHLA(ヒト白血球型抗原)とよばれ、兄弟間では25%の確率で一致するが、他人と一致することはほとんどない(母から相同染色体2本のうち1本をもらい、父からも2本のうち1本をもらう。したがって兄弟で一致する確率は1/2×1/2=1/4)。
*HLAをコードする遺伝子は同じ第6染色体に6対存在しており、それぞれの遺伝子は膨大な種類が知られている。この6対の遺伝子が他人と一致する可能性は非常に少ない。ただし、染色体ごと同一の遺伝子のセットをもらう兄弟姉妹では一致しやすい。
●ヒトのMHC遺伝子は、個人間での白血球の抗原性の違いから発見された遺伝子であるために、ヒト白血球抗原遺伝子( human leukocyte antigen 遺伝子)、あるいはHLA遺伝子と呼ばれる。
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