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炭酸同化・細菌の行う光合成・化学合成について講義します。
語呂「高校生!最近バックれてるなら言おうよ!(光合成細菌、バクテリオクロロフィル、硫黄が生じる)」
問題:光合成細菌は、水ではなく( ① )を電子供与体に用いるので、副次的な現象として、O2ではなく( ② )が生じる。空欄を埋めよ。
答え:①H2S ②S
●シアノバクテリアは光合成色素としてクロロフィルa、クロロフィルbをもち、酸素発生型の光合成を行う。
生物例:ユレモ、ネンジュモ、アナベナ
*シアノバクテリアのもつ光合成色素には、クロロフィルa、クロロフィルb、クロロフィルd、カロテン、キサントフィル、フィコシアニン、フィコエリトリンなどがある(種によってもつ光合成色素の種類は異なる)。
●酸素発生型の光合成を行なう生物は全てクロロフィルa(およびカロテン)を持つことは過去東大で問われた。
●光合成細菌は、光合成色素として、バクテリオクロロフィルをもつ。
生物例:緑色硫黄細菌(りょくしょくいおうさいきん)、紅色硫黄細菌(こうしょくいおうさいきん)
(化学合成細菌と混同してしまいがち。「色が名前に入っているから、色素で光合成しそう」と覚える。)
*バクテリオクロロフィルは、クロロフィルaやbとよく似ている。
*すべての光合成細菌はカロテノイドをもつ。カロテノイドが吸収した光エネルギーはバクテリオクロロフィルに渡され、光化学反応に利用される。
●光合成細菌は、光合成において、電子伝達系に電子を供給する物質として、水ではなく硫化水素(H2S)を使う。よって、酸素は生じず、硫黄(S)が生じる。
6CO2+12H2S → C6H12O6 + 12S + 6H2O
(光合成細菌の行う光合成では、酸素ではなく硫黄が生じていることに注意)
●化学合成細菌は無機物の酸化により得た化学エネルギーを用いて有機物を合成する。この反応を化学合成という。
●化学合成を行う細菌を化学合成細菌と言う。
例:硝酸菌、亜硝酸菌、硫黄細菌
*アンモニアは亜硝酸菌により酸化され亜硝酸に、亜硝酸は硝酸菌により酸化され硝酸になる。
覚え方「パンを作るのがパン屋さん。硝酸を作るのが硝酸菌。」
*生物基礎で登場した亜硝酸菌、硝酸菌は化学合成細菌である。硝化の正体は、彼らの行う化学合成だったのだ。
●光合成では有機物の合成に光エネルギーを用いるが、化学合成では化学エネルギーを用いる。
*物が燃える時、光や熱エネルギーが放出される。同じように、無機物を酸化することによって、化学エネルギーを取り出すことができる。化学合成細菌はその化学エネルギーを用いて有機物を合成している(ただし、有機物の酸化[呼吸]と違って、無機物の酸化では、得られるエネルギーは非常に少ない。そのため、化学合成細菌の増殖スピードは遅いことが多い)。
●シアノバクテリアを光合成細菌に含める人もいるが、一般的ではない。問題文に合わせること。
●一般に、硫黄または無機硫黄化合物を酸化して得られる化学エネルギーを用いてCO2固定を行う細菌を硫黄細菌と言う(広義の硫黄細菌に、光合成細菌である紅色硫黄細菌や緑色硫黄細菌を含める場合もある)。
H2Sの酸化反応には、いくつもの反応が関わるが、最初の過程で単体の硫黄(S)を生じる(2H2S+O2→2S+2H2O)。単体の硫黄は不溶性であるため、細胞内に蓄積する。
*光の届かない深海の熱水噴出孔では、硫化水素を含む熱水が湧き出しており、化学合成細菌が生産者となって生態系を支えている(硫黄細菌がH2Sを酸化して化学合成を行っている。その硫黄細菌はカニやエビなどに食べられている)。最初の生命が生じたのは、熱水噴出孔のような環境だったのではないかとも考えられている(なお、熱水噴出孔からは酸素が出ないので、結局は、海底の生態系も、酸素は植物の行う光合成に依存しなければならないという考えもある)。
*熱水噴出孔に住むチューブワームには、硫黄細菌が細胞内共生している。チューブワームは消化管を持たず、有機物は硫黄細菌から供給される。チューブワームはH2Sを取り込んで硫黄細菌に供給している(チューブワームの血中ヘモグロビンはO2とH2Sの両者を結合して硫黄細菌に運ぶ)。
●亜硝酸菌(アンモニア酸化菌とも呼ばれる)は、NH3から電子を奪い、それを流し、そして、非常に強い酸素受容体であるO2へ受け渡している。以下のような反応が起こり、
2NH3 + 3O2 → 2HNO2 + 2H2O
酸素が電子を受け取りH2Oが生成すると考えられている(エネルギーの川を流れ落ちてきた電子と、周囲のH+、O2が結合し、H2Oが生じる)。この時、ATPとNAD(P)Hが生成し(NADHとNADPHのどちらを使うかは種によって異なる)、それらを使って、カルビン・ベンソン回路によって炭水化物を合成する。
●硝酸菌(亜硝酸酸化菌とも呼ばれる)が行う反応においても、O2が電子を受け取ってH2Oが生じている。しかし、代謝経路の中に投入されるH2Oもあるため、差し引きで、反応式からはH2Oが消えている。結果、起こる反応は
2HNO2 + O2 → 2HNO3
のように表される。
この時、ATPとNAD(P)Hが生成し(NADHとNADPHのどちらを使うかは種によって異なる)、それらを使って、カルビン・ベンソン回路を用いて炭水化物を合成する。
●化学合成でも(というか、どんな反応でも)熱エネルギーのロスは生じる。これは宇宙の法則が背景にある。その熱エネルギーになってしまう割合が、燃焼より、生体内で起こる酸化反応の方が少ないのである。熱エネルギーは質の悪いエネルギーと言われ、なるべくエネルギーを熱エネルギーにしないように(無駄にしないように)代謝は進むことが多い。
0:00 炭酸同化
1:56 酸素発生型の光合成(植物・シアノバクテリアが行う)
3:23 非酸素発生型の光合成(光合成細菌が行う)
8:25 化学合成(化学合成細菌が行う)
13:32 炭酸同化の本質(発展)
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