【 note : https://note.com/yaguchihappy 】
呼吸商について講義します。
語呂「呼気を吸気で割る(吐いた二酸化炭素を吸った酸素で割る)」
語呂「呼吸商の勉強は、明日やらない!おー!(アミノ酸、脂肪、炭水化物、0.8, 0.7, 1.0)」
●脂肪及びタンパク質が酸化されるときの呼吸商が炭水化物よりも低い理由は、含まれる水素原子との結合に酸素が余分に消費され、酸素消費量に比べて二酸化炭素の形成が少なくなるためである。
●脂肪酸はβ酸化(β位の炭素を酸化するからβ酸化という。ながーい炭素鎖を二個ずつ切り落としていくイメージ。結果、アセチルCoAという物質がたくさん生じ、アセチルCoAは呼吸の反応に合流する。)によって、アミノ酸は脱アミノ酸反応(アミノ酸は有機酸になる。有機酸は呼吸の反応に合流していく)によって呼吸の代謝経路に合流していく。
●β酸化の詳細
①細胞に入った脂肪酸は、まずアシルCoAになる。
R‐CH2CH2COO⁻(脂肪酸) + HS‐CoA + ATP
⇄ R‐CH2CH2CO‐S‐CoA(アシルCoA) + AMP + ピロリン酸
*Rの部分には長い炭素鎖がある。
②アシルCoAはミトコンドリアのマトリックスに運ばれる(正確には、そのままアシルCoAがミトコンドリア内膜を横断するわけではない。カルニチンシャトルという複雑な輸送の仕組みがある)。
③ミトコンドリアのマトリックスでアシルCoAは酸化される(実際は多段階の反応を経る)。
1回の酸化により、C2つ分の単位短いアシルCoAが生じる。同じ反応が繰り返され、アシルCoAはどんどん短くなっていく。たとえば、パルミチン酸(C16の脂肪酸)から出発すると、β酸化を7回受ければ脂肪酸の炭素は全部アセチルCoAになり、ミトコンドリアのマトリックスで起こるクエン酸回路に入る。
●発展だが、アルコール発酵を呼吸と同時に行うと、呼吸商が1を超えることがある。アルコール発酵では酸素の吸収が起こらず、二酸化炭素の放出が起こるからである。
●現実には、炭水化物と脂肪をどちらも呼吸基質として使うと、呼吸商が1.0と0.7の中間の0.8になることがある。したがって、呼吸商が0.8だからといって、呼吸基質がタンパク質を使っているとは限らない(ただし、ほとんどの入試問題では、呼吸基質はただ1つという前提で答える)。ただ、呼吸基質として消費したタンパク質は、窒素排出量という別のデータから求めることができる。
●教科書等で示されている呼吸商の値は理論値であり、今回の動画のように、実際に種子の呼吸商を測定し、呼吸商の計算結果が0.7付近になったとしても、「呼吸商が0.7だから、この種子は呼吸基質として脂肪のみを使っている」とは断言できない。単一の呼吸基質を使う植物種はまずないと言ってよく、様々な反応の差し引きで、呼吸商が見かけ上0.7付近になっている可能性は否定できない。今回は、入試問題の解き方としての考え方を紹介している。
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