概要
「カルボン酸」とは、カルボキシ基を持つ有機化合物のこと。化学基礎から出まくってた酢酸がまさにこの構造を持っていましたね。

酢酸のイメージから分かる通り、カルボン酸は、
のように電離することで弱酸性を示します。つまり中和反応や弱酸遊離反応など、酸に関わる反応を起こせるわけです。
また、酢酸ナトリウムと固体の水酸化ナトリウムを加熱してメタンを発生する反応は、実験室のメタンの製法として大学入試では頻出です。難しい言葉では脱炭酸反応と呼びますが、反応の名前はそんな覚えなくていいです。
詳細
カルボン酸の種類
カルボン酸は慣用名で呼ばれるものが多いです。一応大学入試向けに名前を覚えておきたいカルボン酸を以下にまとめますが、最低限「ギ酸」と「酢酸」を覚えて後は問題で出てきたときに覚えていけば十分です。

ちなみにギ酸を漢字で書くと「蟻酸」で、蟻に含まれることから名前が付けられました。蟻酸って書くと「ありさん」とも読めるからギ酸ってちょっとかわいいですよね(?)。
物理的性質
カルボキシ基が水素結合を作れるので、分子量の小さいカルボン酸は水に溶けやすいです。しかし、みたいにふざけた炭素数になれば、の極性なんて取るに足らなくなるので水に溶けにくいです。
また、カルボン酸は同士が水素結合して二量体を作ることがあります。そんな複雑なこと起こさないで欲しいです。

二量体は、二量体を作るのに水素結合を使い切っているので、水和がしにくく水に溶けにくいです(*注1)。
化学的性質
カルボキシ基は、電気陰性度の大きい酸素の影響で以下のように極性を持ちます。

その結果、からが外れやすくなって①の反応を起こしたり、極性の±が引き合うことで②③の反応を起こしたりします。
①酸としての反応
化学基礎から弱酸として酢酸を扱ってきたように、カルボン酸は以下のように電離して酸として働きます(*注2)。
つまり、理論化学や無機化学で習った酸の反応を起こします。
【例1:中和反応】
【例2:弱酸遊離反応】
②エステル化
カルボン酸とアルコールが脱水してくっつく反応を「エステル化」といいます。詳しい反応の仕組みは上のリンク先をチェック!
③脱水反応
2つのに対して触媒や加熱を与えることで、分子間もしくは分子内で脱水反応を起こすことができます。

【例1:酢酸】
を1つ持つ酢酸は分子間で脱水を起こします。ただし分子間で脱水を起こすためには、十酸化四リンなどの強力な脱水剤が必要です。

【例2:マレイン酸】
を2つ持つマレイン酸は分子内で脱水を起こします。酢酸と違って常に脱水しやすいがいるので、分子内では加熱のみで容易に脱水を起こすことができます。

ちなみに似た構造のジカルボン酸であるフマル酸は、2つのが隣り合っていないため分子内脱水を起こしません。ちょうどいい位置にないと反応が起こらないということですね。

④脱炭酸反応
最後に少しだけマニアックな反応を紹介します。登場頻度は低いので余裕がある人だけでOKです。実はカルボン酸イオンの塊は少し安定な構造になっています(*注2の後半)。そんなカルボン酸塩に加熱したりして分解反応を起こすと、部分がまとまって炭酸イオンとして抜け出します。

より具体的な反応としては、酢酸ナトリウムに固体の水酸化ナトリウムを加えて加熱するものなどがあります。
無理やり加熱して起こす反応だからなかなか生成物のイメージは難しいですが、は分解されたくないんだとざっくり思っておくと覚えやすい反応です。
補足
- (*注1)エステル化の実験などで材料のカルボン酸と生成物のエステルを分離するとき、水層にカルボン酸、有機層にエステルを溶かして分離しますが、一部のカルボン酸は二量体となって有機層に混ざってしまうことがあります。
- (*注2)カルボン酸は弱酸の中では比較的強い酸で、有機化学で他に登場する炭酸やフェノールなどより強めの弱酸です。理由は大学レベルなのでざっくりだけ言っておくと、カルボン酸が電離したは、ベンゼンが「1.5重結合」で安定になったのと同じことが起こります。電離後の構造が安定だから、電離が比較的進みやすいと言うことです。もっと詳しく知りたい場合は「非局在化」をチェック。