概要
「ヨードホルム反応」とは、下の構造を持つ物質に水溶液とを加えて加熱すると、ヨードホルムの黄色沈殿を生じる反応のこと。ちなみにヨードホルムは特有の臭気を持っています。

普通の酸化剤ではカルボン酸にならないケトンや第二級アルコールに、(+)という特殊な酸化剤を使うことでカルボン酸への酸化反応が起こっています(上の構造のケトンや第二級アルコールに限る)。
大学入試では、有機化合物の構造を特定するときに頻出の反応です。必ず、
- 反応が起こる有機化合物の構造
- 反応のための試薬(+)
- ヨードホルムが沈澱すること
- は黄色、特有の臭気を持つこと
を押さえておき、問題文中の情報からヨードホルム反応が起こっていることに気づけるようにしておきましょう。
詳細
反応の仕組み
アルコールの酸化では、結合からが切り離される反応が起こるのでした。電気陰性度の大きいの影響で極性が生じ、電気陰性度の小さいが切り離されるイメージです。

第2級アルコールの酸化で勉強したように普通ケトンは酸化されませんが、ケトン基の隣がメチル基の場合は工夫をして酸化することができます。そんな特殊な酸化を起こすための立役者がとです。少し複雑ですが反応の流れを見ていきましょう。
まず結合は極性が強く、電気陰性度が大きい側に電子対が偏っています。すると側の電子が不足してプラスになります。

次に、プラスになったは電荷の偏りを緩和するため、隣のの電子対たちを引っ張ります。その結果、の結合は少しだけ外れやすくなっているイメージです。

そこに酸化剤としてを加えます。ただし、確かには酸化剤として働いてになりたいのですが、やはりケトンを普通には酸化できません。そこで反応の補助役としても加えてあげます。すると が結合のを引っこ抜き、空いたところにが攻撃を仕掛けることができます。これを3つの全てに行います。

これでの一部は望み通りとなりましたが、電気陰性度の大きいヨウ素に取り憑かれたケトン側はとても不安定な状態になります。そこにさらにをぶつけることで、以下のようにの部分が外れてしまいます。

以上の流れで、普通には酸化されなかったケトンがカルボン酸(塩基性だから正確にはカルボン酸塩)になり、同時にヨードホルムが発生します。反応の全体を振り返ると、最初にから3つのを引っこ抜くのにとが3つずつ、最後にを切り離すのにが1つ必要だったので、化学反応式は以下のように書くことができます。

ちなみに、以上ではケトンの反応を見ましたが、概要で説明した通り実際は以下の2種類の構造でヨードホルム反応が起こります。ただし第2級アルコールは、酸化剤に酸化されれば結局ケトンになり、その先の反応の仕組みは全く同じです。

反応する物質例
概要で説明した通り、以下の2種類の構造を持つ物質はヨードホルム反応陽性です。ただし、内で・に直接くっつく原子は、炭素か水素であることに注意が必要です。
