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エステル


概要

「エステル」とはずばり、カルボン酸とアルコールが脱水してくっついた化合物のこと。エステル結合を持っています。

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果物などの香り成分の多くはエステルだったりします。女性といちご狩りデートに行ったときには、「わー、酪酸アルキルの匂いがすごいね!」と言うと知的ぶりをアピールできておすすめです(*補足1)。

ちなみに、正確にはオキソ酸(が酸として働くもの)とアルコールからできるのが広義のエステルですが、単にエステルといえば狭義のカルボン酸エステルを指すことが多いです。

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詳細

エステルとは

エステルとは、カルボン酸とアルコールが脱水縮合した物質です。エステルは「カルボン酸アルキル」という名前で呼ばれます。たとえば、酢酸とエタノールのエステルは「酢酸エチル」です。

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という構造は、が水素の場合はカルボキシ基、が炭化水素の場合はエステル結合と呼ばれます。つまり、カルボン酸とエステルは構造異性体になっています。

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エステル化

(1)酸触媒を用いる場合

カルボン酸のカルボニル基は、電気陰性度の大きい酸素によって極性が生じています。そこに硫酸などの酸触媒(*補足2)を加えると、の働きで極性がさらに助長されます。

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ここにアルコールをぶつけると、ヒドロキシ基中でマイナスに偏った酸素が攻撃を仕掛け、以下のように脱水縮合が起こります。

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ちなみに、反応後に生じるエステルと水でも、全く同じ仕組みで逆反応が起こります。エステル結合中のプラスになった炭素に、水の酸素が攻撃をしかけます。よって、この場合のエステル化は可逆反応になります。この逆反応は水が加わってエステルが分解するので「加水分解」と呼ばれます。

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この化学平衡では右辺に水が生成することから、反応を右に進めたいなら水を減らし、左に進めたいなら水を増やせばいいです。つまり酸触媒には、右向き反応を起こしたいなら濃硫酸を、左向き反応を起こしたいなら希硫酸を使います

(2)酸無水物を用いる場合

アルコールに酸無水物を加えることでもエステル化を起こせます。たとえば無水酢酸は、酢酸に強力な脱水剤を加えて無理やり脱水した物質です。よって、アルコールなどの水素を近づければ、喜んで元の酢酸に戻ってしまいます。

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(1)と違ってこちらは不可逆反応になります。脱水剤なしに再び無水酢酸に戻ることはないし、右辺に水がないので加水分解も起こらないからです。

ちなみに以上の反応は、アルコールにアセチル基がくっつくので「アセチル化」とも呼ばれます(*補足3)。

広義のエステル

広義には、オキソ酸とアルコールが脱水縮合で得られる物質がエステルです。硝酸や硫酸なども、カルボン酸と同様にが外れてエステルを作ります。

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入試レベルでは、3価のアルコールであるグリセリンと硝酸のエステルである「ニトログリセリン」が頻出です。ニトログリセリンはダイナマイトの材料として有名です。

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補足

  • (*補足1)実際に試した際のクレームは受け付けていません。
  • (*補足2)触媒のはずのがカルボン酸にくっついてしまっています。しかし、後々結局が外れて出てくるので、反応の最初と最後では変化しません。よって反応の前後で変化しない触媒と呼べるわけです。
  • (*補足3)今回はエステル化でありアセチル化でもある例ですが、エステル化としか呼べない場合、アセチル化としか呼べない場合もあります。不安があればアセチル化の辞書をチェック!

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