植物ホルモンのひとつ。
他のホルモンは植物体内に液体として存在するのに対して、エチレンは気体として存在し、植物体外に放出される。
そのためエチレンは、周りの植物にも影響を与える。
また、エチレンは、振動や接触によっても合成されるということも知っておこう。
(例えば、植物を手で撫でてあげると合成される。)

エチレンの主なはたらきとしては、以下の3つが挙げられる。
①肥大成長の促進
②果実の成熟
③葉の老化促進(離層の形成促進)
では、それぞれ詳しくみていこう。
エチレンには、植物の茎を肥大成長(横に成長)させ、伸長を抑制するはたらきがある。
なお、このはたらきにはエチレンの他に、オーキシンの作用も必要である。
では、エチレンとオーキシンはそれぞれどのように肥大成長に関わっているのか、みていこう。
ジベレリンの役割:微小管を縦に並べる
オーキシンの役割:一つ一つの細胞の成長を促進する
この2つのホルモンが力を合わせることで⋯

このようなながれで、茎が肥大成長するのである。
エチレンには、果実を成熟させるはたらきもある。また、エチレンは周りの植物にも作用するため、未熟な果実と成熟した果実を一緒に置いておくと、未熟な果実もはやく成熟する。
まだ少し緑の未成熟なバナナを2本用意し、片方は赤く熟したリンゴと一緒に容器に入れ、もう片方はリンゴを入れず容器に入れ、ふたをする。
しばらく放置すると、リンゴが一緒に入っている容器のバナナの方が早く熟する。これは、熟したリンゴからエチレンが放出され、バナナに作用したことで、成熟が促進されたからと考えられる。
エチレンは葉の老化を促進するはたらきもある。
葉は古くなると、クロロフィルが減少して葉の緑色が薄くなっていく。これが葉の老化だ。エチレンはこれを促進しているのである。
そして老化が進むと、やがて葉は枝から離れ(=落葉)、落ち葉となる。この際、葉の付け根に「離層」という特殊な細胞の層が形成されることで、そこから葉が脱落する。エチレンは、この離層の形成も促進する。

盆栽を毎日触る人がいるが、盆栽を触るという行為は、ただ可愛がっているというわけではなく、触ることによってエチレンが合成され、枝が肥大成長し、ひょろ長くならずにしっかりとした盆栽に育つという、意味のある行為なのである。
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