ラストベルト
簡単なまとめ
“Rust belt” =「錆びついた地帯」。
「最後の地帯」ではない。
五大湖周辺の、かつて工業で栄えたが、現在は衰退した地域を指す。
- フロストベルト
- スノーベルト
とも呼ばれる。
場所
五大湖の南~南東部。
(国土地理院 標準地図をもとに筆者編集)
かつて
ラストベルトは、米国で最初に重工業化が進んだ地域。
五大湖周辺の鉄山と炭田を五大湖の水運で結び付け、鉄鋼業などの重工業が発達した。
20世紀にはいるとフォードが自動車の大量生産を世界で初めて開始。世界の自動車産業の中心地になった。
現状
製造業が衰退し、深刻な産業の空洞化が発生。
工場の閉鎖・移転、企業の破綻などで失業者が大量に発生した。
現在では、経済の活気が失われ、治安も悪化している。
例えば、かつて世界の自動車産業の中心だったデトロイトは、日本や欧州との競争に敗れて衰退し、2013年に財政破綻。失業率は約20%に達し、治安の悪化が深刻だった。
しかし、最近は製薬やエレクトロニクスなどの新たな産業を誘致し、経済を回復させる都市も現れた。
衰退の要因
- 米国の製造業自体が衰退
- 設備の老朽化、投資不足
- 光熱費が高い
- 人件費が高い
- 自動車産業の衰退
など、さまざまな要因がある。
米国の製造業自体が衰退
米国は、20世紀前半までは世界最大の工業国だった。
1960年代以降になると、西欧や日本の高度経済成長により、西ヨーロッパや日本で急速に工業化が進み、米国に安くて高品質な外国製品が大量に流入した。
米国は早くから経済発展していたぶん生産コストが高く、安くて高品質な外国製品に太刀打ちできず、米国の製造業は衰退していった。
さらに1994年にはNAFTAが発効。人件費の安いメキシコへの製造業の流出が止まらず、ラストベルトの衰退に拍車をかけた。
設備の老朽化、投資不足
ラストベルトは、古くは19世紀から発展した工業地帯であり、その分設備が古い。
設備が古いため生産が非効率で、競争力低下の一因となった。
お金をかけて古い設備を更新すればよかったのだが、設備投資が十分に行われなかったため、結果としてラストベルト全体の競争力低下につながった。
光熱費が高い
ラストベルトの一部は冷帯に位置する。つまり北海道と同じくらい寒い。
当然、冬は莫大な暖房費がかかるわけで、これが生産コストの増加につながっていた。
特に石油危機以降、燃料費が高騰したことで、光熱費の安い南部に関心が集まった。
そのため、企業はよりエネルギーコストが安い南部のサンベルトへ移転を進めた。
人件費が高い
古くから経済発展した地域であったために、人件費が高くなっていた。
そのため、安い外国製品に対抗できなかったほか、米国内でもより賃金の安いサンベルトとの競争にも敗れることになった。
自動車産業の衰退
特に1980年代、日米自動車貿易摩擦により、米国の自動車産業は衰退した。
特に自動車産業の中心地であるデトロイトの衰退は深刻で、2013年には財政破綻した。
日本でいえば豊田市が財政破綻したくらいの衝撃的な出来事であった。