貿易摩擦
簡単なまとめ
貿易収支の不均衡が国内経済に悪影響を及ぼし、貿易相手国との間に軋轢が生じること。
先進国間で起こることが多い。
有名なのは、80年代の日米自動車貿易摩擦や、近年の米中貿易摩擦。
自動車の貿易摩擦は、現地生産の拡大によって解決された。
貿易摩擦
貿易をしていると、輸入品との競争に負けて、大幅な輸入超過になる品目が出てきます。
輸入が急に増えると、輸入する側の国の企業にしてみれば、それまで国内で売れていたのに、いきなり外国のものが大量に入ってきて自社の商品が全く売れなくなるわけです。
そんなの困ります。会社が潰れてしまうかもしれません。
困った企業は、政府に「輸入止めてください…潰れそうです(泣)」とお願いするわけです。そして政府は輸入相手国に文句を言いに行きます、おい輸入止めろや、うちの国民が困ってるぞと。
ところが輸出する側としてみれば、輸出でがっぽり儲かっているわけですから、はいそうですかと簡単に引き下がるわけにはいきません。かくして国同士が対立することになります。
これが貿易摩擦です。
日米貿易摩擦
代表的なのは日米貿易摩擦です。日米は戦後に繊維、自動車、半導体と何度も貿易摩擦を起こしているんですが、今回は自動車について解説しましょう。
石油危機以降、ガソリンの値段が上がったため、燃費の良い日本車がアメリカで爆売れし、燃費の悪いアメ車はどんどん日本車に駆逐されていきました。
日本からアメリカへの自動車の輸出は、1970~80年代にかけて10年で3倍になっています。
(日本自動車工業会の資料を基に作成)
困ったのはアメリカの車会社です。日本車がどんどん入ってきて、急に自分たちの車が売れなくなっていく。名門クライスラーも政府の支援でなんとか倒産を免れるといった状況に追い込まれていました。
アメリカの企業も、雇用も危ない。このままいけば、車会社の倒産、失業者の大量発生、不況、社会不安の増大・・・
これはまずいと思ったアメリカ政府は、日本に圧力をかけ始めます。もう輸出するなと。アメリカヤバいんじゃと。
とはいっても、アメリカで日本車は売れるわけですし、アメリカへの輸出をやめたら今度は日本が困ってしまいます。儲けが吹っ飛ぶわけですからね。
そこで、日本企業は現地生産を始めます。日本企業がアメリカに工場を建てて、アメリカで売る車はそこで作ればいいわけです。こうすれば、アメリカ人の雇用は守られますし、日本企業も車が売れてハッピー。
米中貿易摩擦
90年代以降になると、日本があまりにも強くなりすぎてアメリカにとっての経済的脅威となったため、アメリカは日本潰しと中国への投資を進めました。当時のアメリカは正直中国をナメていたんですね。
そうすると今度は中国が強くなりすぎ、今やアメリカ最大の貿易赤字国は中国になってしまいました。アメリカは貿易赤字がどんどん膨らんできて危機的状況。これは今のうちに潰しておかないとアメリカの経済的覇権が危ないわけです。
というわけでトランプ政権の時から中国潰しが鮮明になってきました。
内容としては、中国製品の関税引き上げ、ハイテク製品の対中禁輸など。
中国も負けじと報復関税をかけ、日本と違ってアメリカに真っ向勝負を挑んでいます。
特に最近は、単なる貿易摩擦だけではなく政治的にも対立が深まっており、もはや関係悪化を隠そうともしません。米中の経済的・政治的分断は深まるばかりです。デカップリングという言葉が最近よく聞かれるようになりましたね。
この先どうなるかは、あなたが見届けてください。