高校地理の解説授業動画「5. 世界の農林水産業」、第8回は「世界と日本の水産業」です。
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【練習問題へのリンク】
https://forms.gle/NBg3Lagzq3z22L9J6
【文字と画像で読みたい方はこちらのブログへ】
https://www.geography-lesson.com/fisheries/
【目次】
00:00 はじめに
00:14 世界の主要漁場
00:51 湧昇流
01:57 潮目(潮境)
03:36 大陸棚
04:05 バンク(浅堆)
04:49 国別漁獲量(ペルー)
05:31 国別漁獲量(日本)
06:01 国別漁獲量(中国)
06:44 養殖業の推移
07:16 日本の漁業種類別の漁獲量
09:29 日本の水産物の輸入
【世界の三大穀物に関連する映画や書籍へのリンク】
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特に農業分野について詳しく解説されている入試レベル+αの本です。大学受験レベルの内容でありながら、参考書とは違った読みやすさやエピソードが満載です。
・『瀬川聡の 大学入学共通テスト 地理B[系統地理編]超重要問題の解き方』https://amzn.to/47x1Qj4
共通テスト対策として問題演習を重ねたいならこちらが定番です。「これはおさえておきたい!」という問題ばかりが紹介されています。
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https://amzn.to/3KM5KdP
共通テストではセンター試験以上に、初見のデータから考察するという問題が増えています。読み取り考察に焦点をあてたこちらの問題集は練習にぴったりです。
・『リアルな今がわかる 日本と世界の地理 (だからわかるシリーズ)』砂崎 良(2020) https://amzn.to/3giMeGS
高校地理の参考書の一つですが、写真がとにかくたくさん載っていて、パラパラと眺めているだけでも楽しい一冊です。
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基礎からかみ砕いて丁寧に説明されており、図表も分かりやすいです。この動画を作るときにも参考にしています。やや分厚いので、困った時に調べるために使うと良いと思います。
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上記の本と並んで、非常に詳しく網羅的な解説がされている参考書です。上よりもやや専門的な解説も含まれているので、地理をさらに得意にしたい人におすすめです。
【関連動画へのリンク】
・5-8 世界と日本の水産業
• 動画
・5-7 世界と日本の林業
• 動画
・5-6 世界の三大穀物
• 【高校地理】5-6. 世界の三大穀物(コメ、小麦、トウモロコシ) | 5. 世界の農...
・5-5 企業的農業
• 【高校地理】5-5. 企業的農業(プランテーション農業など) | 5. 世界の農林水...
・5-4 商業的農業
• 【高校地理】5-4. 商業的農業(混合農業、地中海式農業など) | 5. 世界の農林...
・5-3 自給的農業
• 【高校地理】5-3. 自給的農業(遊牧、焼畑農業など) | 5. 世界の農林水産業
・5-2 農業の生産性と集約度
• 【高校地理】5-2. 農業の生産性と集約度 | 5. 世界の農林水産業
・5-1 農業の成立条件と起源
• 【高校地理】5-1. 農業の成立条件と起源 | 5. 世界の農林水産業
・[再生リスト] 4.世界の環境問題
• 【高校地理】世界の環境問題
・[再生リスト] 3.世界の気候
• 【高校地理】世界の気候
・[再生リスト] 2.世界の地形
• 【高校地理】世界の地形
・[再生リスト] 1.さまざまな地図と地理的技能
• 【高校地理】さまざまな地図と地理的技能
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【動画本文全文】
最初のパートは、世界の主要な漁場について。
漁業と言うのは、水があればどこでも同じように行えるというものではありません。
・魚はどこでも取れるわけではない
・餌がある場所
・餌=プランクトン、小さい魚=>大きい魚
・プランクトンはどこで育つ?光合成
魚の餌になるプランクトンがたくさん発生して、その結果たくさんの魚がいる場所が、良い漁場となります。具体的には、太平洋北西部漁場、太平洋南東部漁場、大西洋北西部漁場、大西洋北東部漁場など、場所ごとに漁場には名前がついているのですが、どうしてここには魚がたくさん取れるのでしょう。
良い漁場に関するキーワードは4つ、湧昇流、潮目、大陸棚、バンクです。順番に見ていきましょう。
1つ目のキーワードは、湧昇流。
海の水が深いところから浅いところに向かって、下から上へと湧き上がるような流れが起こっている場所のことです。具体例としては、南米のペルー沖合です。
「世界の気候」「第4回 海流と気候」でも登場した場所ですが、太平洋では、貿易風によって海面近くの暖かい海水が西へ運ばれるため、南米側では、上の方で運ばれていった海水を補おうとして、下から冷たい海水が湧き上がってきます。この湧き上がってくる冷たい海水が「湧昇流」です。湧昇流は海の水をかき回して、栄養豊富な深海の水を太陽の光が届くところまで運んでくれるので、プランクトンが大量発生します。これを餌にするイワシがたくさん取れるため、ペルーではイワシ(アンチョビー)漁が非常に盛んです。
そして、ペルー沖合の漁場は、太平洋南東部漁場と呼ばれます。
2つ目のキーワードは、潮目。
暖流と寒流がぶつかる場所を潮目、あるいは潮境と言います。
寒流と暖流がぶつかると、温度が低くて密度の大きな寒流は、暖流の下に沈み込むように流れます。これによって湧昇流と同じく、海水が上下でかき回されるので、海底の栄養分が浅いところに持ち上げられて、プランクトンが発生します。そのため、潮目ができる場所も良い漁場になります。
代表例は日本周辺です。
千島海流と日本海流が太平洋側でぶつかり、対馬海流とリマン海流が日本海側でぶつかることで、日本の両側に潮目が形成されます。加えて、魚の大消費地である日本や中国が近くにあります。このため日本周辺の漁場は、太平洋北西部漁場と呼ばれ、世界で最も漁獲量の多い漁場となっています。
潮目による漁場は他にもあります。
太平洋では、暖流のアラスカ海流と、寒流のカリフォルニア海流のぶつかる、太平洋北東部漁場。
大西洋では、
暖流のメキシコ湾流と韓流のラブラドル海流のぶつかる、大西洋北西部漁場。
暖流の北大西洋海流と寒流の東グリーンランド海流のぶつかる、大西洋北東部漁場です。
3つ目のキーワードは、大陸棚。
水深200mくらいまでの、海底が浅くなっている部分を指します。
水深が浅いために、海底まで日光が届きやすく、川から流れてきた栄養も得やすいため、植物プランクトンや海藻がよく育ちます。それを餌に魚達が集まるため、大陸棚は良い漁場となります。
日本周辺では、この大陸棚が多く見られることも、漁業に適した理由の一つです。
そして最後は、バンク。
日本語では浅堆とも言うのですが、大陸棚の中で、特に部分的に浅くなっている場所を指します。
Google earthで海底地形を見てみると、日本海の真ん中あたりが膨らんでいますが、これがバンクの例です。
代表例としては、イギリスの東側にある、グレートフィッシャーバンクとドッカーバンク。アメリカの東側にあるグランドバンクとジョージバンクです。それぞれ、大西洋北東部漁場と大西洋北西部漁場の一部ですが、これらの漁場は、潮目に加えて、バンクがあることも、好漁場である理由です。
続いてのパートは世界の水産業統計について。
世界の国別漁獲量の推移はこのようになっています。
1960年代には、湧昇流の例として紹介したペルーが漁獲量世界一でした。大量のイワシ(アンチョビー)を取って世界に輸出していたのですが、アンチョビー頼みであるため、漁獲量の変動が年によって大きいのも特徴です。70年代後半から80年代にかけては、エルニーニョ現象によって漁獲量が大きく減少しました。
70年代には、漁場に恵まれた日本が世界一となります。
ところが、1977年に排他的経済水域が設定されると、外国の海で自由に魚を取ることが出来なくなってしまい、遠くの海まで出掛けて漁をしていた日本の漁獲量は減少しました。加えて、日本周辺で魚を取りすぎてしまったことも、漁獲量が減った原因とされています。
代わって世界一になったのは、中国です。
経済発展に伴い魚の消費が増えたために、漁獲量が急増しました。
漁獲量だけでも中国は世界一なのですが、実は中国の魚の消費はこの量だけでは全然足りません。このグラフの数字は、漁船で取った天然の魚の数字なのですが、中国の漁業量は約1500万トン。
この数倍にあたる約4000万トンの魚を、中国は国内で養殖しています。
池や田んぼを使った淡水での養殖、これを内水面養殖業と言うのですが、内水面養殖業でフナやコイなどを養殖しており、中国の水産業は取る漁業ではなく、育てる漁業が支えていると言える状況です。
最後のパートは、日本の水産業についてです。
日本の水産業を理解する上で必ず目にするのがこのグラフです。
日本において、各種漁業が時代によってどのように移り変わって行ったのかを表しています。
1970年頃までは遠洋漁業が盛んだったものの、その後は急速に減少しています。遠洋漁業というのは、大型の船に乗って何ヶ月もかけて世界中の海に出かけ、マグロやカツオなどをとってくるような漁業です。1977年に排他的経済水域が設定されたことから、他の国の排他的経済水域、つまり他の国から200海里以内での漁業ができなくな利ました。加えて、1972年に始まったオイルショックの影響で燃料費が昂騰したことから、採算が取レなくなり、沖合漁業は1973年をピークに減り続けています。
変わって大幅に増えたのは沖合漁業でした。
日本から2〜3日で帰ってこられる範囲で、イワシ、サンマ、サバ、アジなどをとる漁業です。日本の漁業の中では今も一番多いのですが、1990年代以降は年々減少しています。海水温が上昇したことに加えて、魚を撮り過ぎてしまったことが原因と言われています。
沿岸漁業というのは小型の船で陸の近くで行う漁業です。漁獲量はほぼ横ばいですが、日本の漁師さんの8割以上は沿岸漁業を行なっているとされており、従事している人の数としては最も多い漁業になります。
そして、年々生産量が増えているのが、海面養殖業です。
海面養殖業というのは、海の中で養殖を行う漁業のことで、海苔、ホタテ、牡蠣のほか、真珠なども含まれます。
中国でも養殖業が大きく増加しているという話が出ましたが、
現在、世界全体として海の資源を守るために、魚を取りすぎることを控えようという動きがあります。
魚を取る漁業から、魚を育てる漁業へ、というのが、現代の水産業の合言葉です。