〇松山の世界史チャンネル
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一橋大は時事が非常に好きな大学です。
2021年の第1問「ハギア=ソフィアの意味の歴史的変化」については、前年の2020年にトルコのエルドアン政権がハギア=ソフィアをモスクとすることを決定した措置を受けて出題されたものだと考えられます。
2022年にも第2問で、コロナによるパンデミックに対してバイデンの米国雇用計画に関する演説を読ませ、「アメリカの経済政策を振り返る」という問題を出題しました。
これは、現在の新自由主義という世界を支配する原理がいかに形成されたのかということについて理解を深めることができる良問でした。
2023年には第3問で、「中露関係の変化」を出題しました。
こちらも、ウクライナ戦争以降の国際情勢を意識した出題で、中国とロシアが接近する中、これまでの中露関係について振り返ってみるという問題でした。
この問題は、現在の国際情勢において最も恐るべきことは何か、ということについて考えるきっかけを与えてくれるものでした。
2023年のモザンビークとジンバブエの問題についても、最近のアフリカの経済成長を視野に入れた最先端の問題と見ることもできなくもありません。
一橋の問題を解いて思うのは、現在、世界で起こっていることには、これまでの歴史が関係しているということです。
歴史を勉強することは、現在世界で起こっていることをより深く理解し、解決するための糸口となります。
このことを知ってもらうために今回この問題の解説をすることにしました。
解答のポイント
1.建造の「時代背景」
①ローマ帝国時代にキリスト教を公認したコンスタンティヌス帝により建立
②西ローマ帝国滅亡後、地中海帝国再興を目指したビザンツ皇帝ユスティニアヌスにより再建
2.モザイクの銘文設置の政治的・社会文化的背景
③偶像崇拝を禁止するイスラム勢力の拡大を受け、ビザンツ皇帝レオン3世は聖像禁止令を発布
④これを契機として民衆による聖像破壊運動が起こり、モザイクは破壊
⑤しかし、聖像崇拝論争の末、聖像禁止令が解除されるとモザイクは復活
3.複数回にわたる転用がなぜ起こったのかを念頭に置き、建物の意味の歴史的変化
⑥ハギア=ソフィアはギリシア正教会の総本山となった
⑦第4回十字軍の占領期はカトリック聖堂とされた
⑧その後、ギリシア正教会の総本山に戻るが、オスマン帝国のメフメト2世によりコンスタンティノープルが陥落し、ビザンツ帝国が滅亡
⑨ハギア・ソフィアはモスクに作り替えられた
⑩オスマン帝国が滅亡し、トルコ共和国が成立
⑪ケマル=アタテュルクの政教分離政策により博物館となった
⑫しかし、近年イスラム回帰を掲げる政権によってモスクに戻された