共通テストでは「思考力問題」が重要視されていますが、今までのセンター試験でも多くの思考力問題が出題されてきました。ここでは過去の古いセンター試験の問題から、私が思考力問題を選んで解説していきたいと思います!
※この問題は理系生物用ですが、知識は必要ないので、文系選択者にも役立つと思います!
問題pdfはこちら↓
https://drive.google.com/file/d/1Mvp1FSAz_MvaM1YzwL_lRS2Nm9Oecv_g/view?usp=sharing
問題文はこちら↓(図はPDFや動画で確認して下さい)
ベニツチカメムシ(以下,カメムシという)の成虫のメスは,森の中の地面の落ち葉の下に巣をつくり産卵する。卵が孵(ふ)化(か)した後,自分の幼虫のための餌(えさ)(1種類のみの木の実)を歩いて採集に出かけ,熟した実を巣に歩いて持ち帰る。巣(◎印)から出て,実を探索するとき(出巣)の軌跡は複雑であるが,エ実を発見した後,巣に帰るとき(帰巣)の軌跡は巣の近傍までは直線的である(図1a)。帰巣を始めたときのカメムシ15個体の歩いている向きを観察し,巣の方向を0度として10度毎(ごと)に表すと,ほとんどのカメムシが巣の方向を向いていることが分かる(図1b:黒丸の数は帰巣を行ったカメムシの個体数)。
どのような仕組みで帰巣しているかを調べるために,図2のように巣から出て実の探索行動をしているカメムシの前に餌の実を置き帰巣を開始させた。その直後,ダンボール板にカメムシを乗せて 印の位置,あるいは 印の位置まで移送して下ろした。すると,オ図2の移送後の歩行の軌跡に示すように一定の距離だけ歩いた後に,グルグルと巣を探し回るような軌跡を描いた(図2a)。その一定の距離は,巣(◎印)から餌を手に入れた位置( 印)までの距離とほぼ等しかった。図2bにみられるように,ほとんどの個体の向きは,仮想的な巣のある方向(餌を与えた地点からみた巣の方向)に一致していた。
問3 カメムシが,下線部エのように直線的に帰巣する際に,その方向を決定する方法の記述として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。 3
① 出巣時に歩行しながら付けた,道しるベフェロモンを使っている。
② 巣にいる自分の幼虫が出しているフェロモンに誘引されている。
③ 遠くにある手がかりを使って定位している。
④ 正の走光性によって,巣に向かって歩く。
問4 下線部オのように,一定の距離だけ歩いたという結果に関する記述として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。 4
① 出巣の際に歩いた方向と距離から,巣と餌を発見した地点の間の直線距離を計算している。
② 出巣の際に歩きながら近くの景色を記憶しており,餌を発見した地点から巣に戻る際にその記憶を逆にたどって帰巣している。
③ 道しるベフェロモンをたどって帰巣するが,フェロモンが消失するまでが一定の距離となる。
④ 帰巣の際に,遠くにある信号が見えなくなるまで歩けば一定の距離を歩いたことになる。
問5 カメムシの行動観察(図1)と移送した実験(図2)に関する記述として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。 5
① 複雑に実を探索したり,帰巣したり,自分の幼虫のために餌を運んだりすることは,知能による行動である。
② 帰巣の際に,直線的に歩くときと,一定の距離を歩いた後に巣に入るときとで,用いる手がかりが違う。
③ 出巣の際に複雑な軌跡を描くのは,森の中の地面に障害物が多いからである。
④ 餌を手に入れたときに,手に入れた場所の周囲の落ち葉を取り除くと,フェロモンによる情報が乱れるので帰巣できない。