概要
「元素分析」とはズバリ、有機化合中の、、、の比率を実験で求める手法のこと。有機化合物を完全燃焼させてバラバラにし、発生したやなどから組成を求めます。

元素分析でわかるのはあくまで組成式までで、さらに分子式を特定するには分子量の情報が必要になります。元素分析は、有機化学の構造決定で頻出なので確実にできるようにしましょう。
詳細
元素分析のざっくりした流れ
未知の化合物Aの分子式が実はである場合を考えてみます。84g(=1mol)の化合物Aに酸素を吹きかけながら完全燃焼させると、
となり、6molのと6molのが出てきます。の原子は100%化合物Aから来たものなので、84g中に6molの原子があるとわかります。同様に、原子は12molあるとわかります。

ただしこれだけの情報では、とが1:2の割合であることはわかりますが、化合物Aは、
- 6molのだった
- 3molのだった
- 2molのだった
- 1molのだった
- 0.5molのだった
...
などなど、84gが何molかわからないと分子式まではわかりません(今回は実はってバラしたから84g=1molってわかったけど)。

以上のように、元素分析により組成式を求め、分子量を別で求めることで未知の化合物の分子式を特定します。
元素分析の計算

44mg中には、化合物Aに含まれていた原子が全て含まれます。の分子量は44であり、1粒のに1粒の原子が含まれるので、化合物A中の原子の総量は、
となります。mg的なノリでmmol(ミリモル)を使いました。
同様に、分子量18の中には1粒あたり2粒の原子が含まれるので、化合物A中の原子の総量は、
となります。
最後に化合物中の原子の量を考えます。やと違い、酸素を吹き込みながら燃やしてしまっているから、やに含まれる原子から求めることはできません。しかし、燃やす前の化合物Aが23mg、そのうちが1mmol×12g/mol=12mg、が3mmol×1.0g/mol=3mgであることから、原子は23-12-3=8mgとわかります。よって、
となります。
以上から各元素の比率が、
となり、組成式がであるとわかります。
最後に補足として、以上では説明の都合上との物質量から求めていますが、どうせ最後に原子を求めるので以下のようにするのが一般的です。
=12+16+16=44より 44g中の原子は12g、=1+1+16=18より 18g中の原子は2gだから、
化合物Aの総量は23mgだったから、
よって、それぞれの質量を原子量で割って物質量に直し、比率を考えれば、
元素分析の実験

元素分析の実験は、以下の流れで行います。
- 乾燥した酸素(空気)を吹き込み試料を燃焼させる
- 酸化銅で不完全燃焼を防ぐ
- 気体を塩化カルシウム管に通し、を吸収させる。
- 続けてソーダ石灰管に通し、を吸収させる。
1. 試料を燃焼させる
試料を燃やします。ただただ燃やします。
2. で不完全燃焼を防ぐ
仮に不完全燃焼が起こってが発生すると、(3)(4)のどちらにも吸収されません。すると、未知の化合物の原子を100%に変換しての数を数える計画が破綻してしまうので、気体をに触れさせることで不完全燃焼を防ぎます。
は不安定で、単体の鉄の製法でも出てきたように、他の物質から原子を奪ってになりやすいです。そこでに触れさせることで、
の反応を起こして完全燃焼を促します。
3. 塩化カルシウム管にを吸収させる
、、などが混ざった(2)の気体を、乾燥剤であるが詰まった管に通してを吸収させます。管の質量の増加分から、発生したの質量を求めることができます。

4. ソーダ石灰管にを吸収させる
(3)でを取り除き、、などのみとなった気体を、塩基であるソーダ石灰(+)が詰まった管に通してを吸収させます。(3)同様、管の質量増加分からの質量を求めることができます。

ソーダ石灰は塩基性乾燥剤なのでとを吸収できますが、(3)の後に使うことでのみの質量がわかります。管の順番を逆にすると、バラバラに測りたいとが全部ソーダ石灰管に吸収されてしまうので、ご家庭で元素分析をする際にはご注意を。
窒素の分析法
窒素を含む化合物の場合、「デュマ法」や「ケルダール法」という特別な方法を用います。詳しくはそれぞれの辞書をチェック!
補足
- 正確には単に元素分析と言えば有機化合物に限った話じゃないですが、大学受験的にはほぼ以上の方法を指します。まあそんな補足だれもいらないと思いますが、有識者からつっこまれないための保身の補足です。