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石油


エネルギー資源としての石油

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石油は、価格は現在高めで、埋蔵量は中くらい(今のところは特に心配するほどでもない)、クリーンさで言えばあまりよくありません。けっこう汚染物質が出ます。もうもうと立ち上る自動車の排気ガスを見れば、石油があまりクリーンなエネルギーでないのは想像がつくのではないでしょうか。

総合して考えると、そこそこ優秀なエネルギー源で、用途によっては他には代えがたい価値がある、でもただ燃やすだけだったらもったいない、値段も最近高いし、それなら石炭で良くない? といった感じです。

利用

石油は液体であるという圧倒的な強みを持っていて、だからこそ自動車や航空機、船舶の燃料になっているのです。石油はこの点ではほぼ代替不可能なのです。内燃エンジンは固体の石炭ではもちろん動きませんし、天然ガスだとエンジン自体は動かせるものの、気体であるために貯蔵が非常に困難かつ効率が悪くなります。水が水蒸気になると体積が1600倍になるという話を聞いたことがあるでしょうか。液体燃料と同じだけのエネルギーを気体燃料で貯蔵しようとすると、数百倍も大きな燃料タンクが必要になるのです。そんなの到底実用的ではありませんよね。

また、エネルギーとしての話からは逸れますが、原油を分留して得られるナフサという物質は、加工するとプラスチックや有機溶剤などさまざまな化学工業製品になります。石油は化学工業の根幹を支える資源であり、現在プラスチックは私たちの生活の隅々まで入り込んでいるものですから、そのための資源としては非常に価値が高いと言えるでしょう。

そんなわけで、石油は燃料として、また化学工業の原料としては非常に重要な資源なのですが、一方で価格が石炭に比べると高いという弱みもあります。ただ燃やして熱を得るためだけに使うのはもったいないわけです。そして、クリーンではないということから、環境保護のために石油を使おう! とはなりません。

これらを考えれば、じゃあどういうときに石油が使われるのか? という問いには簡単に答えることができるはずです。

つまり、輸送用燃料・家庭用暖房・家庭用燃料・化学工業用原料として多く用いられます。

逆に、原油をただ燃やすだけという、言うなればもったいない使い方をすることはあまりありません。ですから、例えば火力発電の燃料に石油が用いられることは非常に少ないわけです(日本では石油火力の新設は原則禁止)。

さまざまな油田

石油にはいろいろな採掘方法があり、方法の違いによって採れる原油の性質やコストが大きく変わります。

在来型油田

ペルシャ湾岸でよくみられます。

地層の背斜構造部分に溜まった原油成分を汲み上げるだけの最も単純な方法で、採掘が簡単な分コストが低く低価格の原油を生産することができます。

海底油田

海底にある油田を採掘するタイプの油田です。

メキシコ湾油田北海油田が代表的です。

海底にある油田を採掘するため、在来型よりもコストが高い傾向があります。

シェールオイル

21世紀に入ってから採掘が本格化した新しいタイプの油田です。

頁岩中に含まれる油分をシェールオイルと呼び、頁岩に高圧水を注入して破砕し、頁岩中に含まれる油分を取り出す採掘方法です。

近年米国やロシアが急速に産油量を伸ばしたのはこの技術の実用化がきっかけでした。

しかしこの採掘方法は非常に高コストで、シェールオイルは正直値段が高いことが欠点です。

同様の方法で採掘される天然ガスをシェールガスと呼び、こちらも近年アメリカ合衆国をはじめとして開発が次々と進められています。

産地

油田の分布は、石炭と比べて偏在性が大きい、つまり分布が偏っているといえます。ですから、産油国の数はあまり多くありません。石炭産出国は全部覚えてもしょうがないですが、産油国はできるだけ多く覚えておくと良いでしょう。

産油国で絶対に覚えておくべきなのは、アメリカ合衆国・ロシア・サウジアラビアの三カ国。この三国が原油生産量トップです。

また、大規模な油田が多数分布する一大産油地域として非常に重要なのが、ペルシャ湾岸、西シベリア、メキシコ湾岸です。

他にも産油国を挙げると、中国、メキシコ、南米のベネズエラ、アルジェリアなど北アフリカ諸国、ナイジェリア、ブラジルなどが目立ちます。詳しくは地誌でみていきましょう。 油田.png (世界の油田の分布)

一方、原油の流通の面から見てみると、輸出上位国はロシアと中東諸国に偏っています。逆に世界一、二を争う産油国であるアメリカ合衆国は輸入量が世界一だったり…

このように生産量と輸出入の順位が釣り合わないのはよくある話で、これは各国内の消費量の差による輸出余力の問題です。アメリカ合衆国はご存じの通り世界一の経済大国でエネルギー消費も活発ですから消費量が非常に多く、輸出余力がないどころか輸入に頼らざるを得ない状況になっています。一方、中東諸国やロシアは人口も少なく経済活動もそこまで活発ではないため多くを輸出に回すことができるのです。

このように石油を外国に輸出している国々は、原油価格の過当競争を防ぎ、また政治的影響力を保つためにOPEC(=石油輸出国機構)を結成、世界の原油市場をコントロールしています。また、アラブの産油国のみで構成されアラブ諸国の政治的発言力を確保するために結成されたOAPEC(=アラブ石油輸出国機構)という組織も存在します。これらに関してはOPEC、OAPECの項で詳しく述べることとします。

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