概要
「水素イオン指数pH」とは、溶液の酸性・塩基性の強さを表す値のこと。25℃の水溶液中では、のとき中性・のとき酸性・のとき塩基性です。

酸性・塩基性は水素イオン濃度で決まりますが、たとえば25℃の中性の水溶液では、
と非常に見づらいです。そこで指数の右肩のみを取り出して、マイナスを外して表示するのがです。

詳細
pHの定義
水溶液中の水素イオン濃度の指数部分を取り出してマイナスを外す、つまり の常用対数を取ってマイナスをかけ算したものがです。
酸のpHの計算方法
水素イオン濃度を計算し、定義通りに計算するだけでOK!
【例1】の塩酸
塩酸は強酸なので100%電離します。よって塩酸の数だけ水素イオンが発生します。
【例2】電離度0.01のの酢酸
電離度0.01ということは、酢酸のうちの1%が電離して水素イオンを発生すると言うこと。よって、
【例3】の塩酸
基本は例1と同じ。ただし計算が少し複雑です。
塩基のpHの計算方法
25℃の水溶液中では「水のイオン積」がになります。詳しくはリンク先をチェック!
つまり塩基性の水溶液ではの濃度が決まれば、自動的にの濃度も決まることになります。以上をまとめれば塩基のは、
- を求める
- 水のイオン積からを求める
- 定義からを求める
の流れで求めることができます。
【例1】の水溶液
水酸化ナトリウムは強塩基なので100%電離します。よって水酸化ナトリウムの数だけ水酸化物イオンが発生します。
水のイオン積から、
【例2】電離度0.01ののアンモニア水
弱塩基もやることは弱酸と同じ。
水のイオン積から、
酸・塩基の希釈
溶媒を加えて濃度を下げることを希釈と言います。たとえば100mLの溶液に900mLの水を加えて合計1000mLとすることを10倍に希釈すると言います。
結論からいえば、酸を10倍・100倍・1000倍に希釈するとは1・2・3増加し、塩基を10倍・100倍・1000倍に希釈するとは1・2・3減少します。つまり中性のに向かってが動くということです。

ただし、酸をどんなに希釈してもよりも大きくなることはないし、塩基をどんなに希釈してもよりも小さくなることはありません(*注1)。
【例1】の塩酸を10倍希釈
より、、つまりたとえばの水にの水素イオンが溶けている状態です。10倍希釈するにはここにの水を加えればいいので、
よって、
【例2】の水溶液を100倍希釈
例1では丁寧に計算しましたが「100倍希釈ならに向かって動く」と考えればOK。元がだから、
【例3】の塩酸を100倍希釈
公式通り考えれば、
ですが、塩酸を薄めたら塩基性になるなんておかしいですよね。上でも言った通り以上にはならない(*注1)ので、
参考:pOH
水素イオン指数と同様に、水酸化物イオン指数を以下のように定義します。
そして水のイオン積の常用対数を考えると
よって を計算して14から引き算することでもを計算できます。
【例】の水溶液
補足
- 実際はもう少し複雑な計算も登場します。ただよび理系チャンネルさんの動画などもチェック!
- 弱酸・弱塩基の計算は「電離平衡」を考える必要があります。普通の入試問題では電離度からでなく電離定数からの計算を求められます。詳しくは電離平衡をチェック!
- (*注1)薄めすぎると水の電離が無視できなくなります。たとえばの塩酸を100倍希釈したとき、塩酸から生じる水素イオン濃度はです。仮に純水な(25℃の)水の場合はだから、塩酸が出すより水が電離したの方が多くなるわけです。
- 正確にはなら中性というわけではありません。 中性の正確な定義はです。そしてたとえば25℃の純水の場合はだから、となってとなります。
ただし化学平衡で勉強する通り、平衡定数は温度によって変化します。たとえばの場合はとなります。よっての純水では、となってとなります。つまりではが中性ということになります。
以上より、を中性と考えられるのは25℃のときだけですが、普通入試問題では特別な指示がない限り25℃、が中性と考えて大丈夫です。