高校地理の解説授業動画「5. 世界の農林水産業」、第5回は「企業的農業」です。ホイットルセーの農業区分による、企業的穀物・畑作農業、企業的牧畜、プランテーション農業の3つを10分で分かりやすく解説しています。
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#高校地理 #共通テスト #農業
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【目次】
00:00 企業的農業とは何か?
00:38 (1) 企業的・穀物畑作農業
01:02 企業的・穀物畑作農業の分布
01:47 穀物メジャー
02:22 (2) 企業的牧畜
02:51 企業的牧畜の分布
03:13 アメリカでのセンターピボット
03:45 フィードロット
04:14 牛、羊の統計
05:10 (3) プランテーション農業
05:45 サトウキビ
06:14 コーヒー
06:45 カカオ
06:57 茶
07:24 天然ゴム
07:50 油やし
08:21 バナナ
08:43 企業的農業の問題点
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・5-2 農業の生産性と集約度
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・5-1 農業の成立条件と起源
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・[再生リスト] 4.世界の環境問題
• 【高校地理】世界の環境問題
・[再生リスト] 3.世界の気候
• 【高校地理】世界の気候
・[再生リスト] 2.世界の地形
• 【高校地理】世界の地形
・[再生リスト] 1.さまざまな地図と地理的技能
• 【高校地理】さまざまな地図と地理的技能
【動画本文全文】
企業的農業というのは、効率と利益をとことん追求した大規模な農業のことです。
一種類の作物だけ(単一作物)、小麦なら小麦だけをまとめてたくさん作ることで(大規模栽培)、コストを下げられます。そうして安く、大量に、まるで工業製品のように作った農作物を、国内だけでなく世界中に輸出するのが企業的農業です。
ホイットルセーの農業区分では、企業的穀物・畑作農業、企業的牧畜、プランテーション農業の3つが企業的農業に分類されます。順番に見ていきましょう。
企業的穀物・畑作農業とは
先ずは、企業的穀物・畑作農業から。
小麦、とうもろこし、大豆などを大規模に生産する農業のことです。
少ない人手で広大な農地を管理することを目指すので、大型のコンバインで収穫したり、飛行機で農薬を撒いたりします。そのため、労働生産性(=農民一人あたりの生産量)が非常に大きな農業です。
企業的穀物・畑作農業の分布
企業的穀物・畑作農業が行われている地域としては、代表的な場所を4つ押さえておきましょう。
アメリカ合衆国中央部のプレーリーと呼ばれる地域。
南米アルゼンチンのパンパと呼ばれる地域。
ウクライナからロシアにかけての、チェルノーゼムという肥沃な黒色土壌が分布する地域。
そして、オーストラリア南東部の4つです。
いずれも、年降水量500mm程度の半乾燥地域です。年降水量500mmというのは、小麦が栽培可能になる降水量でした。広い土地があって、自然条件が小麦の栽培に適していることから、これらの地域で企業的穀物農業が発達しました。
穀物メジャー
そして、企業的穀物・畑作農業には、穀物メジャーと呼ばれる企業が関係しています。穀物メジャーというのは、カーギル、ADM、ブンゲ、ドレフェスなどといった巨大な穀物商社の総称です。聞いたことない会社かもしれませんが、上位5社の穀物メジャーだけで、世界の小麦の8割を販売していると言われています。
穀物メジャーは、小麦やとうもろこしを大量に運ぶための鉄道や船まで自分たちで持っていて、世界の穀物価格に大きな影響を与えています。
企業的牧畜とは
続いては、企業的牧畜。
広大な土地に牛や羊を放牧して、牛肉や羊毛を大量生産する農業です。
企業的牧畜の分布
牧畜というのは一般的に、十分な降水量がなくて作物を育てられないような半乾燥地域で行われます。作物を育てる代わりに、牧草を家畜に食べさせるわけです。
そのため企業的牧畜は、降水量が少なくて、家畜を放牧する広い土地がある場所が向いています。
アメリカのグレートプレーンズと呼ばれる地域や、ブラジル南部のブラジル高原では肉牛、アルゼンチンの南部やオーストラリアの内陸部では羊の企業的牧畜が発達しています。企業的穀物・畑作農業の地域と同じく、南北アメリカ大陸やオーストラリアで発達している農業ですね。
アメリカにおける企業的牧畜の分布
アメリカでの企業的牧畜をもう少し詳しく見てみましょう。
Google Earthでアメリカのグレートプレーンズを見ると、このように円形の農場がたくさん並んでいます。これは、センターピボットといって、ポンプで地下水を汲み上げて、その水を400mもある長いアームで円形にまいている農場です。このセンターピボットによって、乾燥したグレートプレーンズでも牛の餌となるとうもろこしの大量生産が可能になりました。
それによって発達したのが、フィードロットと呼ばれる大規模な牛の肥育場です。黒い粒々がたくさん見えますが、この一つ一つが肉牛です。子牛をたくさん飼って、主にとうもろこしの餌を与えることで、短期間で牛を効率的に大きくするための場所です。センターピボットによるとうもろこしの生産と、フィードロットによる牛の飼育というのが、現代アメリカの企業的牧畜です。
企業的牧畜の統計
統計データからも企業的牧畜を見てみましょう。
先ずは牛ですが、飼育頭数世界一はブラジルで、2位がインド。そして中国、アメリカなどが続きます。ブラジルは南部のブラジル高原で大規模な牛の放牧が行われています。インドはヒンドゥー教徒が多いので牛は神聖な動物として食べないのですが、牛乳やバターはたくさん消費されていて飼育頭数が多くなっています。
続いては羊。中国やオーストラリアなどで頭数が多くなっていますが、中国でも内陸の乾燥地域に多いことに注目しましょう。羊は乾燥に強く、乾燥地域での遊牧でも飼育されている家畜なので、西アジアから地中海沿岸、それからアフリカのサヘル地域など、乾燥地域で多く飼育されています。
プランテーション農業とは
最後は、プランテーション農業です。
プランテーション農業とは、コーヒーやカカオなど、輸出してお金にするための商品作物を単一で栽培する農業のことです。
植民地支配が行われていた時代に、コーヒーやお茶など、ヨーロッパに輸出するための商品を作るために、プランテーション農業は発達しました。
植民地から独立しても、当時と同じプランテーション作物が今でもメインの輸出品、という国も多くあります。
作物ごとに特徴をざっと押さえておきましょう。
サトウキビ
サトウキビは成長期には高温多雨、収穫期は乾燥している必要があるので、サバナ気候が向いています。生産量一位はブラジルですが、ブラジルはサトウキビから作るバイオエタノールの生産に力を入れている国です。ブラジルのガソリンスタンドでは、普通のガソリンかサトウキビから作ったエタノールを選べるようになっていて、普通のガソリンよりも安く買うことができます。
コーヒー
2つ目はコーヒー。コーヒーの原産国はエチオピアですが、現在の生産量一位はブラジルです。他にも、ベトナムコーヒー、コロンビアコーヒーなど、日本でコーヒーのブランドとして有名な国が生産上位に上がっています。中でもベトナムは、1980年代までコーヒーの生産はほとんどゼロだったのですが、輸出品目として力を入れて、今では世界2位の生産国となりました。
カカオ
3つ目はカカオ。チョコレートの原料であり、日本でもガーナチョコレートという商品がありますが、コートジボワールとガーナの2カ国で世界のほぼ半分を生産しています。
茶
4つ目はお茶。生産量一位は、何百年もお茶の文化を育んできた中国ですが、2位以下にはインド、ケニア、スリランカと、イギリスの植民地であった国が並んでいます。イギリスにお茶を輸出するために、標高が高くてお茶の生産に向いている場所があるこれらの国が生産地となりました。今では、インドのチャイなど、お茶は現地の文化にも溶け込んでいます。
天然ゴム
5つ目は天然ゴム。トップ2はタイとインドネシアで、東南アジアが生産の中心です。使い道のほとんどは自動車のタイヤです。天然ゴム生産量世界一は、1980年代までマレーシアでした。ところがマレーシアは、天然ゴムからアブラヤシへと生産を転換したため、現在ではそれほど多くはありません。
油やし
6つ目はその油やし。別名パームやしとも言うのですが、ここから取れるパーム油が、マーガリンやアイスクリーム、揚げ油など様々な食べ物に使われています。食べ物だけでなく、シャンプーや石鹸、化粧品にも使われて、世界で最も多く使われている油になります。生産国はマレーシアとインドネシアで世界全体の8割以上を占めています。
バナナ
最後7つ目はバナナ。インド、中国が生産上位ですが、こうした国では自国で食べるためにバナナを作っているため、輸出量は少なくなります。輸出上位国はエクアドル、フィリピンなど、生産国と大きく異なることに注意しましょう。日本ではバナナのほとんどをフィリピンから輸入しています。
企業的農業の問題点
ここまで見てきた企業的農業ですが、
・大量の水や農薬を使うことによる環境への影響
・プランテーションにおける児童労働
など、様々な問題が指摘されている農業形態でもあります。
この動画ではそこまで詳しく解説はできないのですが、企業的農業の問題点を描いたたくさんの本や映画が出ているので、よろしければ概要欄から是非ご覧ください。そして、学校の図書館にリクエストしてみてください。
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