慶應義塾大学文学部准教授 近森高明 研究紹介
慶應義塾大学文学部人文社会学科 近森高明准教授は、「都市空間の社会学」について研究を行っています。オーソドックスな都市社会学の場合、問いは大きく二つにわかれます。「都市は何を生み出したか」という問いと「何が都市を生み出したか」という問いです。それに対して「都市空間の社会学」は、社会関係の媒体、あるいは知覚や経験の媒体としての「空間」および空間を構成するさまざまな「装置」に注目します。
「一つは都市空間ということでいうと郊外住宅地なんか一つの例になるんですけど、いわゆる職住分離のライフスタイルですけどそれを郊外住宅地の開発によってそれを定着させた、ライフスタイルを定着させた。
だから社会のありかたの変化が郊外住宅地という空間のあり方に転換されてその空間のあり方がさらに職住分離という社会のありかたを固定化してくという形で社会のあり方と空間のあり方というのは互いに相互的に規定関係にあるというぐるぐる回りの関係にあるというわけですよね。なので都市空間のあり方からその時どきの社会のあり方を読み解いていくことができるというのが基本的なアイデアですね。」
都市空間を構成する「装置」として、具体的にはこれまで、街路の照明テクノロジー、地下鉄、地下街などを扱ってきました。一見するとマニアックな技術的細部から、人間の知覚や経験のあり方の、思いがけない変容を読み取っていくという研究を行っています。この研究アプローチの学術的背景には、ヴァルター・ベンヤミンからヴォルフガンク・シヴェルブシュへと継承される、マイナーな技術の社会史という流れがあります。
「例えば街路の照明装置というものの歴史を扱った研究をしたわけですけど、あるいは地下街がどういうふうに展開してきたかという研究もしているんですけど、ヴォルフガンク・シヴェルブシュという研究者がいるんです。まあ歴史家ですね。
一番有名なのは鉄道旅行の歴史というんですけれども、彼の議論のなかで一番有名なのはパノラマ的知覚の誕生という話で、列車に乗りながらぼんやりしているうちにぼんやりと遠くを眺めてパノラマ的に楽しむっていう風景の見え方ですよね、というのがシヴェルブシュの議論で、他に照明装置の話もしているんですけど、ガス灯とか電灯に関するすごく細かい見た目にはどうでも良さそうなテクノロジー的には細部の話をすごくして、でもそこに思いがけない、それぞれの人々の知覚なり経験様式なりを読み解いていくという作業を僕自身はシヴェルブシュに学び、シヴェルブシュはベンヤミンに学びという形でその系譜の中でひとつ考えているつもりで、そこが方法論としては特徴といえば特徴で、オリジナルとは強く言えないかもしれないですけどそこに軸を置いているということですね。」
また、より現代的な主題として、ショッピング・モールや、コンビニやファミレスなどチェーンの消費装置が生み出すあらたな都市経験の様相を、「無印都市」というキーワードで研究しています。個性を欠いたチェーンの消費装置、無印的なものはそれほど新しいのだろうかという疑問から、無印的なものの系譜学について考察し、昭和初期にすでに無印的なものはあった、という見立てで、検討を重ねています。
「例えば今無印的なものというかジェネリックのもの、例えば昭和初期なら昭和初期にある程度広がりを見せていたのではないかということをちょっと示したくて当事の地下鉄の広がりとか地下鉄に付随する、地下鉄ストアという初期的なチェーンストアがあったんですけど、その初期的なチェーンストアの広がり方を見ていくという作業に手を付け始めたところなんですけど、研究課題としては一人では限界があるのでチームを組んでシステマチックに見ていこうという動きをやろうとしているというところですね。それが課題と同時に今後の抱負というか方向性です。」