慶應義塾大学大学法学部 小川原正道 教授
テーマ:近代日本を代表する思想家・福沢諭吉の政治思想研究
慶應義塾大学法学部政治学科 小川原正道教授は、近代日本を代表する思想家・福沢諭吉の政治思想研究に取り組んでいます。これまで、福沢の議会論、憲法論、天皇論、外交論などを俯瞰的に考察するとともに、その言説の背後にある意図や思惑について、書簡などを通じて検証しています。
『福沢諭吉と言うと啓蒙思想家と言うイメージが強いと思うんですが、幕末から維新期にかけて、西洋の文明を日本に紹介したという側面がすごく強調されて、明治国家を建設していく過程で日本はどうあるべきかということを政策提言していった時代が福沢にもあるのに、その時期の事が意外と研究されていなくて、その当時の福沢の社会に対する影響力を考えると、その部分をきちんと検証しておくべきではないかというふうに思って、研究に取り組み始めました。』
研究を通して、福沢が早期の国会開設、政権交代、象徴天皇制、地方分権の実現などを追求し、自説の展開にあたって西洋の政治思想を積極的に取り入れていたことが確認できました。しかし、福沢の西洋思想受容については、十分な検討が加えられていないケースもあり、小川原教授は現在、『代議制統治論』が福沢に与えた影響について比較検討を進めています。
『ジョン・スチュアート・ミルという思想家が書いた「代議制統治論」という著作がありまして、福沢諭吉がそれを読んで「文明論の概略」という著書の中で引用してるんですが、実際福沢が「代議制統治論」からどの程度影響を受けていたのか、どういう影響を受けていたのか、ということはほとんど明らかにされていませんが、実際に福沢の著作と「代議制統治論」を比較してみるとかなり共通点が見られるということで、今私の研究の中で「代議制統治論」は福沢の代議制思想にどういう影響を与えたのかということを検証しているところです。』
また、小川原教授はこれまで、近代日本における政治と宗教の関係、とりわけ政治が宗教をどう扱い、それに対して宗教側がどのような反応を見せたのか、という点にも着目しており、そこから日本のケースの独自性、あるいは普遍性を読み解くことができるのではと考えています。そして、今後はさらに視野を広げて研究を進めていきます。
『国内の政治的なシステムについて福沢の考え方については、大体今まで検証できたかと思うので、今後の課題としては、福沢の対外的な認識、外交論について、もうちょっと掘り下げた方がいいかな、と思っていまして、福沢の外交論というと脱亜論というイメージがあると思うんですが、言ってる事が色々変わったりしてる事もあって、なかなか理解しにくいところもあります。何で福沢の言ってる事が変わっていくのか、変わらなかった事はどこなのか、そういうことを今後検証していければと思っています。』