現代の多様化した経済社会のなかで、資本主義経済を有効に機能させていくためには、国際市場および国内市場において、企業間の公正かつ自由な競争が望まれます。そして、このような目的を達成するために、現代社会には様々な法規制が存在しています。慶應義塾大学法学部法律学科 田村次朗教授はそのなかでも独占禁止法、すなわち競争法を研究対象としています。
Q.「この分野と言うのは法律の世界でも実は特種な分野で、政治経済が密接に関係しています。例えば、例を挙げますと企業が競争する際に、例えば不公正な競争をしていると、もし判断される場合にはそれは経済学的な要素とかそういったもの、あるいは政策的な要素というものを加味しながら法律が適用されることを検討しなければいけないという意味では、非常に法律の分野の中でも特色がある分野だという風に言われています。」
田村教授がその中でも重視しているテーマとしてカルテル、談合に対する規制があります。カルテルを本当に事業者が行ったのかどうかという証拠を見つけるのは非常に困難です。そこで田村教授は、どの程度の証拠が出てくれば実際にカルテル、あるいは談合が行われたと認定できるのかということを研究、分析しています。
Q.「競争法ということで主にカルテル、談合の分析とかそういうのを行っている訳ですけれども、実際には問題を解決する際に、例えば公正取引委員会という事業者では法適用に関してあらゆる要素が関係してくるだけに、要件とかでもめる事が多いです。そう言った意味では、実は法的判断と言っても交渉しながら答を出さなくてはいけないという難しさもあります。これは当局と事業者が交渉する、あるいは争っている事業者同士でも最終的には裁判所の判断を仰ぐのではなくて、交渉しながら妥協点、納得する結論を求めたりします。そういう中で私はずっと競争法を研究してきましたけれども、交渉をいかにうまくして、より双方にとって満足行く結果が得られるかという問題解決の手法というのを、分析を新たな研究プロジェクトとして私は進めています。」
現在の日本社会では、規制によって政府が企業をある程度コントロールしたり、企業間で競争を制限したりしており、競争政策への移行が速やかに進んでいません。田村教授は、経済法の視点から、この現状を打開する最先端の法適用について研究し、さらに、もう一つの研究分野として法的問題解決に不可欠な交渉学も研究しています。
Q.「最終的に私が今やっている研究そしてプロジェクトの意義というのは、競争法、独占禁止法の第一条の目的規定に書かれていることを、私は究極のゴールと考えてやっています。そこに書かれている事のキーワードとして、『国民経済の健全な発達』と『一般消費者の利益』という二つのキーワードがあります。これは達成するためには、競争政策というものを公正かつ自由な形で実現し、それは法によってフェアな形で執行されて、大企業も中小企業も同じ条件で競争する、そういう形で答を出して行くという社会をつくるということがゴールとして考えております。そして、交渉学ということで、交渉をする能力をもっと高めることによって、全て白黒の法的判断だけではすまされない様な所への題解決をこの様な研究を進めて行く事によって、達成できる社会をつくる。こう言った所にこの私の研究とプロジェクト等の成果が最終的に意義を持つのではないかと考えております。」