慶應義塾大学法学部 政治学科の宮岡勲教授は、リアリズムやコンストラクティビズムといった国際政治理論を使って、日米同盟や日本の安全保障政策の分析を行っています。
「軍事技術の同盟国への拡散―英国と日本による米軍の統合情報システムの模倣―」と題した論文に最近の研究成果をまとめました。
「米軍の国力、特に軍事力というものが強い、ほかの国を引き離しているという現状において、ただ単に兵士の数が多いとか、戦車の数が多いとか、飛行機の数が多いというだけじゃなくて、軍事の質、クオリティの面において他国を大きく引き離している。それに最も大きな影響を与えているのが、情報技術であるという所にまず着目します。」
米軍は、1991年の湾岸戦争の後、陸軍、海軍、空軍、海兵隊の間において情報システムを共有化しました。このことが、後のコソボ空爆、アフガニスタン戦争、および2003年のイラク戦争において、圧倒的な戦力を示すことができた大きな要因であると指摘します。
「これで米軍がさらに強化されたことになるのですが、国際政治理論からみますと問題が出てきます。それはどんな先端的な技術であっても段々とほかの国々によってまねされていくという、模倣されていくという現実があるからです。」
軍事技術の模倣という面において、レジェンデ・サントスが唱えた「模倣のネオリアリズム理論」という重要な先行研究があります。
宮岡教授が着目したのは同盟国における「軍事技術の模倣」です。アメリカとその同盟国である日本やイギリスの関係を調べた結果、サントスとは違う結論に至りました。
「アメリカの同盟国であるイギリスと日本を比べた結果、あまり模倣の程度には違いが無かった。両国とも非常に熱心にアメリカの統合情報システムと言うものを模倣していたということです。この時に考えなければならないのは、イギリスはヨーロッパ、日本はアジアに位置しているわけです。現時点において、ヨーロッパとアジアの国際安全保障環境というのは非常に大きく異なります。しかしながらイギリスでも日本でも同じように、アメリカの統合情報システムの模倣を行っていたということで、この点でサントスの言っていることとは違うのではないかという結論が得られました。もう一つはサントスが言っていた同盟国がいるなら自分は安心して模倣しなくなるという点なんですけれども、この点も実は同盟強化。同盟国がある、その同盟を強化したいが故に、そのアメリカの統合情報システムをまねせざるを得ないという状況があると言うことですね。」
分析結果が異なる理由として、分析対象にしている事例研究の時代が異なること、そしてポスト冷戦期における2つの大きな特徴があると見ています。
「21世紀の初頭において同盟関係と言うのは、グローバル化している点が大きく異なるのではないかと思っています。ですので、アメリカとイギリスの軍隊が協力する、またアメリカの軍隊と日本の自衛隊が協力する際には、単に自国の周辺のみならず、アメリカ軍が世界的な軍事的な関与をしているわけですので、様々な地域において協力行動、協調行動をとるということがあるわけです。よりグローバルな観点からそれぞれの同盟の協力関係が決まってきているということです。」