慶應義塾大学法学部政治学科 塩原良和教授は、現代先進諸国における移住者と先住民族に対する社会政策の双方を包含する「エスニック・マイノリティ向け社会政策」を分析するための理論的枠組みの構築について研究しています。
「私は社会学で、この大学では社会変動論を担当しています。いわゆるグローバル化、産業構造の転換、そして国民国家の多民族・多文化化、人の移動、移民の増大などにともなう様々な社会の変化を研究しています。
特に自分の専門としているのは、多文化主義と言われる思想や政策、そしてそれが実際に移住者・少数・先住民族といったエスニック・マイノリティと受け入れ側のホスト社会の国民にどういった影響を与えているのかと言った事を、理論と実証の両方の側面から研究しています。」
先進諸国の中でも、多文化主義政策を最初に取り入れた国の一つがオーストラリアであり、オーストラリアの多文化主義は、先進諸国の中でも非常に進んだ側面があると言います。
「オーストラリアで多文化主義と言った時には、これまでは主に移民、あるいは移住者に対する政府の政策、もしくは移住者の人達とそうではないとされている人達との間の様々な関係性というものを扱ってきたわけです。
ですが、オーストラリアには実は移住者、正確に言うと主流とされる白人、英国系白人以外の移住者なのですが、それ以外にも先住民族というエスニック・マイノリティの方々がいらっしゃる訳です。今私がやっている仕事というのは、従来オーストラリア研究者の間では別々の問題として扱われることが多かったこの二つのエスニック・マイノリティに対する政策とか、主流の人達との関係性を一つの社会学的分析枠組みの中で捉えることができないのかという試みです。」
一方、日本においては移住者・先住民族向け社会政策は全国レベルでは体系化されていません。
それゆえ、オーストラリアの現状の批判的分析によって得られた視点から日本の現状を分析することで、政策のあり方を問題提起できるのでは、と塩原教授は考えます。
「日本は長い間、単一民族社会などと呼ばれていて、いわゆる『日本人』の方にとっては、日本の中に様々な文化、価値観、民族を持っている人達が一緒に存在しているという意識を一般の生活の中ではまだまだ持ちづらい状況です。
ですが、日本にもエスニック・マイノリティの方々は間違いなく存在するし、そういう方々としっかり共存していく社会をつくっていく社会的な要請があります。
ですから、今後は自分のオーストラリア研究での知見を日本社会の中で生かしていくことを模索していく事になると思います。」