慶應義塾大学法学部政治学科 粕谷祐子教授は現在「アカウンタビリティ関係」をキーワードに、民主主義がよりよく機能するための方策をさぐる、いくつかの研究プロジェクトを進めています。
「アカウンタビリティの概念というのは、民主主義の理論の中で、ここ20~30年の間で非常に注目されるようになっている概念ですが、民主主義論というのは、どちらかというとこれまで選挙を中心に語られてきたわけですが、民主主義は選挙だけでなく、もっと広い形でとらえられなければいけない。
それを表す際に重要な概念として、アカウンタビリティというのが出てきており、基本的にはアカウンタビリティをみることによって何をやりたいかというと、民主主義をより良く働かせたい、より良く機能させたいということが目的になります。」
アカウンタビリティを課すことのできる関係というのは、一般的には、AさんがBさんに対し賞罰を与えたり、情報提供を求めたりすることができる関係を意味します。
これを政治過程に応用すると、有権者と政治家、政党構成員と政党リーダー、内閣と官僚など、様々な場面で本人・代理人関係が成立していると解釈できます。
「アカウンタビリティというのは様々な観点から捉えることができますが、具体的にみているアカウンタビリティ関係は、有権者と政治家の間のアカウンタビリティであり、その中でも特に「一票の格差」の問題について研究しています。
例えば、フィリピン、ブラジル、ケニアなどは、日本の4〜5倍の一票の格差がありますが、そういった色々な国を横並びにして、一票の格差の高い低いというのはどういう要因で生じてくるのかということを研究していまして、今分析しているのは、司法府の役割と一票の格差の問題です。
より具体的には、司法府の独立性が高くなると、一票の格差が減っていくという関係が世界的に見られるのですが、それについて多国間比較をしていて、かつマレーシアとアメリカの事例を事例研究としてやっています。」
粕谷先生はもう一つ、政府情報の公開に関する研究にも力を入れています。
政府のもつ情報へのアクセスが進むことは、有権者が政治家や政府に対しより効果的にアカウンタビリティを課すことを可能にするため、こちらも重要な研究テーマです。
また、アカウンタビリティをより広く一般の方々にも理解してもらうために、「デモクラシー・ラボ」という新しい企画も進めています。
「アカウンタビリティは非常に抽象的な概念なんですが、私が実際にやっているプロジェクトというのは、政策的な提案もできるような、割と具体的なことをやっているという風に自分では思っています。
例えば、一票の格差の問題ですと、ここで自分が見ているのは、司法府の役割ですが、政策提言としましては、一票の格差をどういう風に低くしていけばいいのか、司法府に対してもっと制度的なサポートをするですとか、そのような政策提言につなげていけたらというようにに思っています。」