慶應義塾大学商学部 吉田栄介教授は、管理会計システムが組織変革に与える影響についての研究を中心に取り組んでいます。
その中でも今、最も力を入れて取り組んでいるのは「テンションマネジメント」と呼ばれる、組織の中における緊張状態をいかにマネジメントするのか、ということについての研究です。
「もともと「テンションマネジメント」は、ごくごく最近、ここ数年くらい海外でも注目されるようになっている比較的新しいテーマで、具体的に言うと、例えば欧米の企業だと、管理職の人、課長さんとか部長さんとか、もっと役職の高い人でも、業績の目標というのを、我々「コミットメントする」というのですが、業績の目標を最初に「今月は」とか「今年は」「いくらの売り上げを達成します」、「これくらいの利益率を達成します」ということを約束して、その目標に対して結果がどうなるのかということに対して責任をもつというようなマネジメントスタイルが欧米では一般的です。」
欧米の企業では、目標設定は概ね達成可能な水準に設定されることが多く,そうした目標が,組織成員の挑戦を引き出し,モチベーションを高め,計画やコントロール目的にも多くの優位性があると受けとめられてきました。
一方、日本企業においては,達成困難と思われる厳しい目標水準が設定されており、実態調査からも、国内では目標の未達成状況が常態化していることも報告されています。
「欧米と日本ではマネジメントのスタイルが違う。この日本のマネジメントスタイルの意味は何だろうかというのは、もう10年くらい考えている。
そこで最近ふと思い出したのが、目標が達成しない、その達成しない状況がいつもずっと続くのです。
そのこと自体に何か意味があるのではないかということを考えた時に、その目標未達の状態が続く厳しい状態、そういう組織のコンテクストをつくりだすことこそが機能しているのではないか。それが「テンション」日本語だと「張り」とか「緊張状態」とか、そういう組織が張りつめた状態をつくることに対して機能しているのはないかと考え出したのが、ここ数年です。」
目標に対する結果だけではなく、組織のコンテクストそのものに影響を与えると言われる「テンションマネジメント」。
その詳細な事例研究と実証研究に基づく高い理論的基盤をもった知見を提供することの貢献・波及効果は大きいといいます。
「業績目標の高い低いというのは、高いから良いとか低いからどうだとかいうことではなくて、私が今思っているのは、組織ごとに何らかの戦略的な意図がある、戦略的にこの組織をこうしたいという意図があって、それに対して、一方で組織にたくさんの人がいますと、この人達が作り出す組織文化だとか、組織の慣習、傾向など組織のコンテクストがある。
この2つによって、効率効果的なテンションのあり方が違うと思っています。
だから、最適な解が1つあるというよりは、どういう戦略的意図をもっていて、今現状組織がどういう組織コンテクストにあるのかということによって、あるべき「テンションマネジメント」のあり方が違うと思います。
これに対して、何らかの一定の理論化はそう時間がかからずにできるのではないかと思っています。」