慶應義塾大学商学部教授 渡部和孝 研究紹介
慶應義塾大学商学部の渡部和孝教授は、借入可能額の大きさと不動産価格との間の関係を専門として研究を行っています。
「1990年代から2000年代初頭にかけての日本の銀行危機、2008年から2009年にかけてのグローバル金融危機に共通するのは、不動産価格のバブルが崩壊し、銀行の不動産担保融資が不良債権化したことを原因としていることです。」
渡部教授が現在進めている「レバレッジは資産価格の決定要因か?」と題するプロジェクトでは、借入可能額が拡大することと、つまり、借入能力が高まることの間の関係と不動産価格上昇との間の関係が検証されています。
この借入可能額と不動産価格との間の関係については二つの仮説が立てられています。第一の仮説では、不動産価格が上昇すれば不動産の担保価値が高まり、したがって不動産の持主の借入能力も高まるとしています。第二の仮説では、借入能力が高まることによって人々はより高価な不動産を購入するようになり、その結果として不動産価格全体が上昇します。
「本研究では、第二の仮説が成り立っているかデータを用いて検証することを目的としています。この検証は政策的にも重要です。例えば、不動産バブルのピークの1991年に当時の大蔵省によって実施された総量規制と呼ばれる規制があります。この規制は、不動産業向け融資の伸び率を融資全体の伸び率以下に制限するものです。この総量規制が不動産価格の低下の引き金となったという説がありますが、この説は、第二の仮説が成り立っていてはじめて妥当となる説です。」
「本研究では、1991年から2011年に行われた東京23区内の実際の土地の取引についてのデータを収集しています。土地のバイヤーにとって土地購入の際の銀行などからの借入れのしやすさの指標として、土地購入の際の借入額を土地の購入額で割って計算されるローン・トゥ・バリュー、LTVを計算し、これを説明変数とし、土地の購入額の1平方メートル当たりの価格を被説明変数とした回帰分析を行います。」
「実証分析の結果、LTVが10パーセントポイント上昇すると、土地価格が2パーセントポイント上昇するという結果が得られました。また、不動産取引には、借入をともなわない現金取引も多いのですが、現金取引を除いた土地取引だけを対象にした分析では、LTVが10パーセントポイント上昇すると、土地価格が15パーセントポイント上昇するという結果が得られました。」
渡部教授は今後さらにこの研究を充実させたいと考えています。
「現在、最寄駅への距離、容積率、建ぺい率などの土地の属性も考慮したより詳細な分析を行うべくデータの収集を実施しています。海外の学会、研究会での発表を通してさらに論文を改訂し、ランクの高い国際査読雑誌への投稿を目指しています。」