慶應義塾大学文学部教授 松浦良充 研究紹介
慶應義塾大学文学部松浦良充教授は主にアメリカの大学史や思想史に焦点をあて、 リベラルアーツが歴史の中で変化する過程とその要因を分析し、研究を通して日本の大学における機能主義的大学像の批判的検討を行っています。
「リベラルアーツ自体がアメリカに起源があるわけではなく、中世の大学からずっと続いてきている大学の一つの知の在り方ですが、その伝統的な知の在り方をアメリカのハーバードカレッジが近代に取り入れてそれをアメリカの大学の軸と言いますか、中心的な教育の考え方として据えて、その後にアメリカの大学いろいろな役割を担ってどんどん大きく発展していくわけですが、現在もなおそのリベラルアーツやリベラルアーツの教育を行うという側面はずっと続いています。」
約800年前の中世ヨーロッパで大学が発生して以来、その歴史の中で大学は多様な制度・組織形態をとってきました。中世の大学では、神学・法学・医学の専門職養成とその前提段階となるリベラルアーツ、いわゆる学芸知を教え・学ぶことが中心的な活動でした。現代では大学の大衆化による量的な拡大が進み、多目的化・多機能化・多形態化がよりいっそう顕著になってきています。
「しかも社会の大学に対するニーズは多様化している。その多様化している社会からの注文に大学が応えていくことが、一番今の大学の政策や改革の中で中心的だと言われているんですね。」
「結局、その様々な要求に翻弄されて今大学は、その自分たちのポリシーをうまく社会にアピールできていないというか、社会からの注文に応えるのではなく、大学自身が今の社会にこういうことが必要なんだということを大学の側から打ち出していく、示していくというのが知的な組織体、長い歴史をもった知的な組織体としての大学の使命であって、それが実はここ何十年か現代の大学、特に日本の大学ですごくそういう観点が弱くなっている。」
リベラルアーツはすぐに実益や職業に結びつく教育ではありませんが、だからこそ自由な発想に繋がると松浦教授は説明します。そこで松浦教授はアメリカでも特にリベラルアーツに関心が高く、実験的な試みを取り入れて改革を続けるシカゴ大学を分析し、日本の大学と照合しながら、根本的な大学の在り方を模索しています。
「すぐに役に立たない知を大切にするというリベラルエデュケーションやリベラルアートの考え方について、実務志向、実用志向に舵を切っていこうという動きがあります。 これからどういう展開になっていくのかアメリカのリベラルアーツの在り方がどういう風に変わっていくのか、新しい動きを見ていくというのが大きな課題ですし、それをどう日本の大学改革の流れの中に位置付けていくのか。」
今後はこれまで同様にアメリカの大学を分析しながら、日本独自の大学の思想や大学像の在り方を見極め、大学改革に繋げていけるようにさらなる研究を進めていきます。