慶應義塾大学文学部教授 杉浦淳吉 研究紹介
慶應義塾大学文学部 杉浦淳吉教授は社会心理学における説得的コミュニケーション、それから合意形成についての研究に取り組んでいます。現代社会には環境問題や健康問題、そして経済問題など様々なリスクがあります。もし人々がリスクに直面した際に、問題をどのように解決し合意形成に至るのか。一連の社会的なプロセスを調べています。
「社会心理学の中で「説得と態度変容」という分野は非常に古くからなされてきていました。それはある人が別の人の態度や行動を変えるにはどういう風な言い方をしたらいいのかということが研究にあったのですけども、社会で見た時に、それを社会の利益にどういう風につながっていくのか。」
様々な問題の中でも、特に杉浦教授が主要なテーマとして扱うのは環境に関する問題です。環境リスクへの対処行動では,多くの場合,個人の利益と社会全体の利益が対立するような場面があります。これに関しては「社会的ジレンマ」と呼ばれる分野で研究が進められており、問題解決には2通りの方法があることといわれています。まず1つは個人個人の態度や行動を変えて、公共的な利益にかなうような行動をとるように仕向ける方法です。2つ目は社会全体の構造を変えることで問題自体を解決する方法です。
「従来の研究ですと、説得の研究であれば説得のやり方をいろいろ変えることによって相手がどういう風に変わるかという事を見ていくわけです。私は単に1回だけ説得してどう変わるではなくて、何度も説得したらその説得されたことに対して説得される側はどのようにそれを感じ、そして相手に対してどのように例えば反論するのか、そういう説得者と説得される側との間のやり取りの分析を行うということ。いろんな立場の人々ごとに分析をしていくということをしています。それを行うために、説得納得ゲームというものを考案したわけです。」
説得納得ゲームは、AさんがBさん、Cさん達を説得してAさんの大事だと思う行動を納得してもらって、やってもらうというゲームです。ゲームの中で,Aさんには「環境配慮行動」を説得するという使命が与えられます。 たとえば,電気を使ってない時はスイッチを切る、この行動を実行するようにBさん、Cさん達を説得していきます。説得やその反論のプロセスを分析すると、 なぜ人は新しい行動をとることが困難なのか、あるいはどこをクリアすればその行動が実行できるのかという事を理解し、最善の方法を提案していくことが出来ます。
「一様にこうしなさい、ああしなさいと言えば世の中の人が一様に変わっていくというような代物ではないわけですね。そうした時にそれぞれの個々人がどういう風に行動を変えていったらより良い社会が実現できるのか、持続可能な社会が作れるのか、そう言ったことを考えるには実は多様な価値観を持った多用な人々のことを良く理解する必要があるわけです。そうしたことを理解するためにもこのゲーミングシュミレーションという方法を用いることによって、それを実現に近づけていくことが出来るであろうと考えています。」