慶應義塾大学文学部平野昭教授は、18世紀以降のヨーロッパ音楽史の研究、ここ数年はとくにベートーヴェンを中心とした研究を進めています。
Q. 私はベートーヴェンを中心に研究を進めていますが、西洋音楽史をやってますと、バッハ、ハイドン、モーツアルト、ベートーヴェンと時代が下ってくるんですけど、ベートーヴェンの時にですね大きく音楽の様式が変わった事、それはベートーヴェン1人だけの才能によるものではなく、18世紀から19世紀への転換ですね。簡単に言ってしまうと、フランス革命を境にして、その前の音楽のあり方とそれ以後のあり方が大きく変わってきた。ちょうどその原動力になってるのが、ベートーヴェンであると言うこと。それでベートーヴェン以後の作曲家でベートーヴェンの影響を間接、直接に受けていない人はいない訳で。どうしてもやっぱりその原点であるベートーヴェンに関心がありまして、ずっと続けております。
ベートーヴェンの音楽が祖国のドイツやオーストリア以外で最も愛されている国は日本ではないか、と話す平野教授。バッハやモーツアルトもそうでしたが、特にベートーヴェンは戦時中も日本では演奏され続けました。
Q. ベートーヴェン耳が聞こえなくなるわけですね、30才前後から。その難聴を克服してですね、そうしたハンディを負いながら大成した、その伝記的な人物はどうも日本人は好きらしいんです。二宮金次郎的な考え方かもしれませんが。しかしどんな不況の時代にあってもベートーヴェンの音楽は一番受け入れられ、それほど人々に影響力のあるベートーヴェンの音楽の本質はどこにあるんだろうって事が私の最大の関心です。
平野教授は現在、ベートーヴェンの最期の10年に着目し、ベートーヴェン以後の19世紀の作曲家たちに与えた影響がどれだけ大きいか、或いは具体的にはどのような影響があったのかを研究によって明らかにしようとしています。
Q. 私が見てるベートーヴェンが手で書いた、自筆譜もありますけど、それだからと言って自筆譜だからと言ってベートーヴェンの音楽作品ではないです。これは紙切れでしかない。記号でしかない、楽譜は。記号は解釈しないといけない。そのような作曲家の意図にしたもの、考えたものがその時代にあってどうであったのか、その情報を音楽学者が研究して、それを演奏に反映させていくのが音楽学者のミッションじゃないかと私は思っています。音楽が素晴らしい音楽として顕在化する、演奏されて初めて音楽研究の成果が完成すると考えています。