慶應義塾大学商学部 清水聰教授は新しい「消費者の意思決定プロセスの解明」についての研究を進めています。
これまでの消費者行動研究では消費者がモノを買うまでのプロセスに重点を置き、何を考え、どのような事に刺激を受けて買ったのかという"買うまで"のメディア戦略について様々に論じられてきました。
ところが、近年はSNSなどの発達により不特定多数の消費者のクチコミ情報がインターネット上に溢れ、それが次の潜在的な購入者に対する意識に大きく影響していると言われており、従来までの商品認知から購買に至るまでの一方通行の意思決定プロセスだけではなく、情報がクチコミを通じて循環するような意思決定プロセスを重視する必要があると考えられる様になりました。
清水教授はこれを「循環型意思決定プロセス」またそれに基づいたマーケティング戦略を「循環型マーケティング」と命名し、SNS時代の新しい意思決定プロセスとその戦略意義について研究をおこなっています。
「私の研究の特徴と強みは、消費者の意思決定プロセスは今まで一方向に進んで行くのが多かったのですが、具体的に言うと『物を認知しました』『その商品について調べました』『買いたいと思うか態度を決めます』『買いました』『買った後自分の気持ちが次の購買の時にフィードバックされます』このような一方向の流れが多かったです。
ところが、今私が考えているのは、一方向ではなく、ぐるぐる回っているのではないかと考えています。
具体的に言うと『消費者が何か商品を認知しました』それについて『考えて買いました』『買った後は満足して人に喋りました』『喋った事が次の人の認知に繋がりました』『その人がまた買いました』このようなぐるぐる回るサイクルがあるのではないかと理論的に思って、それをデータで確かめる事をやっています。」
清水教授は海外の研究者とも共同研究を行っていますが、この「循環型マーケティング」が海外においても非常に独創的な理論だと強い興味が持たれ、また国内における調査会社においてもプラットフォームとして採用されるなど、新しい時代のマーケティング戦略の基盤として大きな注目を集め始めています。
「循環の意義は消費者の意思決定プロセス、すべての人の意思決定プロセスをそこの中に組込むことが出来ることが最大の意義だと思います。
つまり、消費者の中にはSNSを駆使して色々な情報を集めて、物を買う人や、従来のようにメーカー企業さんから出される広告をもとに情報を得て買っている人もいる。
あるいは、店頭に行って、今日安いからという形で買う人もいる。色々なタイプの人がいる訳です。
そういう人達を全て網羅するモデルは今までなかったのですが、それを網羅できることが一番の大きなポイントだと思います。」
更なるインターネットの発達やビッグデータ時代が進んでいく中、これまで以上に複雑化するであろう様々な消費者情報を解析しデータベース化する事で、清水教授は更なる「循環型意思決定プロセス」の解明に挑戦を続けていきます。