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太陽系最果ての奇妙な天体アロコス。NASA New Horizons探査機の観測結果【論文紹介】

次の動画:恒星間天体が太陽系に飛来する確率【論文紹介】

概要

動画投稿日|2020年4月3日

動画の長さ|4:54

2019年の元旦にNew Horizons探査機によってフライバイ探査されたカイパーベルト天体アロコス(旧称ウルティマトゥーレ)。この時点ではまだあまり探査機からのデータが降ろされていませんでしたが、今年の3月に追加で受信されたデータを使った解析結果がScience誌で3本立て続けに出版されましたので、専門家の視点で解説します。 (目次) 0:00 太陽系の遺跡 0:52 ニューホライズンズによるフライバイ探査 1:23 奇妙な形状からわかること 2:04 原始太陽系で起こっていた”ゆっくり”衝突 3:01 謎の赤い物質 4:10 探査機の次の進路 (参考文献) 1. Spencer et al., Science 367, 998 (2020) The geology and geophysics of Kuiper Belt object (486958) Arrokoth. https://doi.org/10.1126/science.aay3999 2. Grundy et al., Science 367, eaay3705 (2020) Color, composition, and thermal environment of Kuiper Belt object (486958) Arrokoth. https://doi.org/10.1126/science.aay3705 3. McKinnon et al., Science 367, eaay6620 (2020) The solar nebula origin of (486958) Arrokoth, a primordial contact binary in the Kuiper Belt. https://doi.org/10.1126/science.aay6620 【画像素材】 NASA, JPL, JHU/APL, Pixabay, Space Engine 【字幕説明】 太陽系の起源を解明することは、惑星科学の究極の目標です。 そのためには、考古学や古生物学で行われているのと同様に、 なるべく古い天体を観測して、 失われた原始太陽系の情報を引き出す必要があります。 現在太陽系の内側に存在する多くの惑星や小惑星は、天体衝突や、 熱による変成によって、太陽系誕生時の情報はほとんど残っていません。 それでは古い天体はどこに残っているのでしょうか。 太陽系の外側の領域はカイパーベルトと呼ばれ、 惑星が誕生した時の痕跡を、現在も保持する 化石のような場所だと考えられてきました。 しかしこれほど遠いと太陽の光がほとんど届かないため、 これまでは望遠鏡で観測してもわずかな情報しか得られませんでした。 そのため、実際に探査機によって観測することで、 カイパーベルト天体の実態を明らかにすることが求められていたのです。 およそ1年前の2019年1月1日に、NASAのニューホライズンズ探査機が 史上初めてカイパーベルト天体 アロコスをフライバイ探査しました。 アロコスの雪だるまのような形状は、世界的に大きな話題となりましたが、 この時点ではまだ観測データがほとんど受信されていなかったため、 アロコスの起源はあまりよくわかっていませんでした。 今年の2月28日に、探査機から送られた追加データをもとに 解析した論文がサイエンス誌に3本公開されましたので、 新たに何がわかったのか見ていきましょう。 まず注目すべきはアロコスの形状です。見るからに二つの小天体が くっついたような形状をしており、バイナリ天体と呼ばれています。 こういった二重性は、これまで発見された彗星や小惑星の一部にも 確認されていました。彗星の場合、不均一に表層物質が昇華することで バイナリー形状になる可能性がありますが、アロコスの場合は、 温度が非常に低く、物質がほとんど昇華しないため、 このシナリオは除外されます。 またアロコスが、より大きな母天体が破壊されてできた破片だという 可能性もほぼ否定されました。 アロコスの形状を説明するために、論文では二つの球状部分が接触した 首の部分に着目しました。この部分を詳細に調べたところ、 圧縮されたような痕跡がみられなかったことから、二つの天体が 非常に遅い速度で、おそらく秒速数m程度で、 衝突して合体したと結論づけられています。 こういった低速度の衝突は、原始太陽系円盤では 普遍的に見られた現象であると考えられます。 太陽系誕生時は、まだ星間ガスが太陽系中に 充満しており、ガスとの摩擦によってダストや微惑星は抵抗を受けるため、 衝突速度は遅かったと予想されています。しかし、現在の太陽系には、 ガスはもう充満していないので、このような低速度の衝突は ほとんど起きません。アロコスの形状は、45億年前に原始太陽系円盤で 起こった珍しい現象の痕跡を、私たちに見せてくれたわけです。 またアロコス表面のクレーター年代も推定されました。 解像度が荒いため、カウントされたクレーターは多くないものの、 表面年代は40億年以上と推定されました。 これまでカイパーベルト天体が始原的なことは 理論的には予想されてきましたが、ニューホライズンズのデータによって 初めて観測的に実証されたことは、惑星科学にとって大きな成果です。 またアロコス表面は赤い色が強いことも確認されました。 こういった赤い天体はカイパーベルトではよく発見されていますが、 太陽に近い内側の領域ではあまり見られません。 このことから謎の赤い物質は、太陽光などによって加熱をうけると 変成して消滅してしまうような、熱力学的に不安定な物質であると 推測されています。この謎の物質の実態はまだよくわかっていませんが、 有機物ではないかと推測されてきました。 実際に今回の論文では、最も単純な有機物の一種である、 メタノールの吸収を確認したことを報告しています。 一方で意外な結果もありました。 低温領域に普遍的に存在するはずの水氷の 吸収がアロコス表面に見られなかったのです。 このことから、論文の著者らは、 水とメタンの氷の混合物に宇宙線が長い間照射された結果、 水分子が破壊されて、有機物と結合し、 スペクトルが赤くなったと推測しています。 こういった極低温領域での化学反応はまだまだ研究が進んでいない 分野ですが、太陽系の外側で生成された有機物が内側に 運ばれることもあったでしょう。アロコス表面で観測された有機物は、 はるか昔に地球に運ばれて、 生命の基となった物質の名残りなのかもしれません。 ニューホライズンズはこの後どの天体に向かうのでしょうか。 探査機の燃料は残り少なく、また太陽系を急速に脱出しつつあるので、 早く次の天体を見つけて軌道修正しないといけないのですが、 次の探査天体を発見するための頼みの綱である、各地の地上望遠鏡が、 新型コロナウィルスのため閉鎖されている状況なので、 なかなか大変なようです。皆さんも健康にはお気を付けください。 それでは今回もご視聴ありがとうございました。 面白かったという方は、ぜひチャンネル登録をお願いします。 皆さんのご支援が、次回の動画を作成する時の、 大きな励みとなります。また、内容について、ご意見がある方は、 コメントでご指摘頂けると幸いです。よろしくお願いします。 #惑星科学チャンネル #PlanetaryScienceChannel #行星科学频道

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