【 note : https://note.com/yaguchihappy 】
オーキシンの極性移動について講義します。
●オーキシン極性移動は細胞膜に存在するオーキシン取込み輸送体と排出輸送体により行われる。
●根冠は、根端分裂組織をキャップ状に覆って保護する柔組織である。
●重力センサーとして機能するアミロプラストを平衡石といい、それらが存在する細胞を平衡細胞という。根では、根冠の中央に位置するコルメラ細胞と言う細胞が平衡細胞として働いている。
*動画中には示していないが、垂直に根を置いた場合は、PIN(正確にはPIN3)は細胞表面に均一に分布している。根を水平に置いた場合、PINは下側に優先的に配置されるようになる。
●茎でも重力を感知している。茎では重力屈性の刺激の受容は皮層の内側に存在する内皮細胞層で行われると考えられている。内皮細胞には、根のコルメラ細胞と同様にアミロプラストが含まれている。内皮細胞欠失変異体では、根では重力屈性を示すが茎では重力屈性を全く示さない。
根冠を切除すると、根冠が再生されるまで根はランダムな方向に伸長する。
●動画では、オーキシンが偶然入り口(AUX)から入り、偶然出口(PIN)から出ているかのように説明したが、AUXはH+の輸送と共役させ、オーキシンを(二次的)能動輸送している。また、PINによるオーキシンの排出は、細胞内部の負の膜電位によって駆動される(オーキシンは細胞内で負の電荷をもつ)。つまり、単なる入り口、出口ではない。力強いオーキシンの取り込み・排出の輸送が駆動されている。
●天然のオーキシンにはIAA(インドール酢酸)がある。人工的に合成されたオーキシンには、ナフタレン酢酸や2,4―Dなどがある。
●オーキシンは根や茎の細胞を通る。これは、動物のホルモンが血液中を流れるのとは大きく異なる。
●決してオーキシンは重力で落ちていくわけではない。幼葉鞘を切断し、逆さまにして置いても、先端部から基部へ移動する(重力逆らって移動する)。
●オーキシンもそうだが、植物ホルモンは、どこでつくられ、どこを通り、どこに作用するのかについて、わかっていないことが多い。だから勉強しにくい。しかし、それだけ未来のある分野であるということでもある。
●オーキシンは、中心柱(内皮より内側の組織)から根端に、原生師部細胞という細胞を通って移動する(ただし、厳密には維管束の中を流れるものもあるとされる)。
●インドール酢酸(IAA)は、細胞外では電荷を持たず、脂溶性であり、取り込み輸送体によらずとも、細胞膜を拡散により通過することができる。(IAAは、
①プロトン化したIAAHの形でリン脂質二重層を横断するか、
②IAAのままで、取り込み共輸送体による二次的能動輸送により細胞内に入る
[細胞壁はH+ーATPaseによって酸性に保たれている。そして、オーキシン取り込み輸送体は、H+が細胞内に流れ込む勢いを使ってオーキシンを細胞内に輸送する。])
しかし、細胞内ではイオン化し、電荷を持つようになるので、細胞膜を通過することができなくなる(極性分子の水分子に引っ張られて、細胞膜を通過できない)。
つまり、細胞内には自由に入れるが、入ってイオン化したら、もう細胞から出ることができない。
そこで、細胞膜上にはオーキシン排出輸送体が設置されている。その排出輸送体が、細胞膜の特定の方向の面にしかないので、極性移動が可能となる。
●どの組織でもオーキシン合成は可能だと考えられているが、主な供給源は茎頂分裂組織と若い葉などである。
●根冠には平衡細胞があり、ここにはアミラプラストという細胞小器官がある。他の細胞より10倍以上大きい。
●どうのようにしてオーキシンは細胞の成長を促進するのか?オーキシンが細胞膜H +ATPアーゼを活性化し、細胞壁中に水素イオンを放出し、細胞壁を弱酸性化させる。その結果、エクスパンシンというセルロース微繊維とその他の細胞壁構成物質の間の架橋(水素結合)を切断し、細胞壁をゆるめ、膨圧が低下し、吸水が起こり、細胞が伸長すると考えられているが、まだ反論もあり、確定した説はない。
●根の先端まで移動したオーキシンは、折り返す。そして、少し根の先端から基部方向へ移動したあと、ふたたびUターンすると考えられている(つまりぐるぐる循環していることになる)。このオーキシンの移動は、PIN1から7といった、複数のオーキシン排出輸送体が、決まった側の細胞膜へ設置されていることによって起こっている。(右の壁に排出輸送体があれば、右の壁からしか出ていけないので、そちらにオーキシンが移動することになる。我々がドアの空いている壁からしか出て行けないのと同じである。)このような説をオーキシン還流ループモデルという。
*輸送体を「ブロック」にたとえているが、輸送体はタンパク質であり、実際はアミノ酸の「鎖」である。念のため。
●オーキシンの語源は成長物質である。
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