〇概要
東大の世界史の面白さは、視野がものすごく広いということです。他の大学の問題が特定の地域の限られた時代だけを扱っているのに対して、東大の問題は広大な地域の長期間にわたる歴史を問う面白さにあります。ときには「神様かよ!!」と突っ込みを入れたくなるほどの巨大な歴史のうねりを感じさせるような問題を出題します。今回紹介するパクス=ブリタニカの「組み込み」と「対抗」は、当時の世界がイギリスの覇権に組み込まれないように必死だったということを教えてくれます。今日はこの問題を通じて東大世界史のおもしろさを存分に語っていきます。
〇世界史年号鬼リピ
• 【世界史】世界史年号鬼リピ
〇世界史入試問題解説(東大、京大、一橋、早慶、共通テスト)
• 東大世界史解説
〇解答のポイント
1.パクス=ブリタニカの時代
①イギリスはロンドンで第1回万国博覧会を開催して圧倒的な国力を誇示
2.組み込みと対抗(オスマン帝国・インド・中国・日本)
②アジア諸国はイギリスの自由貿易体制に組み込まれ、イギリス製品が流入(組み込み)
③オスマン帝国はミドハト憲法を制定し、立憲主義による近代化(対抗)
→しかし、露土戦争を機に停止
④インドはイギリスの植民地化に対してインド大反乱を起こした(対抗)
→しかし、鎮圧されて直轄領となり、インド帝国が成立した。
⑤清朝はアヘン戦争、アロー戦争で敗れて対等外交を強いられ、総理衙門を設置(組み込み)
⑥これに対して曾国藩ら漢人官僚を中心に洋務運動が開始(対抗)
⑦日本は日米修好通商条約を皮切りに、欧米諸国に不平等条約を強制される(組み込み)
⑧明治維新によって国内の近代化を図るとともに、江華島事件を契機に朝鮮に開国を要求し、日朝修好条規を締結(対抗)
3.組み込みと対抗(ロシア・ドイツ・アメリカ)
⑨ロシアやドイツはイギリスに穀物を輸出し、工業製品を輸入(組み込み)
⑩クリミア戦争に敗北後、自国の後進性を痛感したロシアはアレクサンドル2世が農奴解放令を発布して工業化を開始(対抗)
⑪ドイツではビスマルクが鉄血政策により統一を実現し、保護関税法でイギリス製品の流入を阻止して工業化を図る(対抗)
⑫アメリカは南部の綿花プランテーション地域がイギリスの原料供給地(組み込み)
⑬南北戦争に勝利した北部が保護関税政策を取り、工業化(対抗)