〇松山の世界史チャンネル
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今回、第1問が360字と150字に分割されたことばかりが注目されましたが、肝心なのはそこではありません。
東大の問題を50年分以上解いてきて感じていることですが、東大の問題には常に大きな視点が存在しています。
多くの人が指定語句に関する知識を並べて、事項の羅列しただけの「統一感のない」答案になってしまうこの問題は、出題意図の発見が非常に難しいです。
でも、この問題は実はかなり広い視野で歴史をとらえる力が求められます。
この問題は指定字数が少ないからスケールが小さくなったとは言えません。
むしろ、今までと変わらず、いやそれ以上のスケールの大きな視点が求められています。
また、限られた字数だからこそ、スケールの大きな視点を表現する力量が求められるのだと考えています。
ヒントはこの問題が意図する「構造」の犠牲者であるコンゴ独立の指導者ルムンバにありました。
この問題の「出題意図」はどこにあったのかを全力で考察し、解説します。
問(1) 演説で述べられているように、諸民族の政治的解放が進んだが、独立を得る過程では戦乱が起こっただけでなく、独立した国どうしが対立を深めるなど、道のりが容易ではない場合も多かった。1960年代のアジアとアフリカにおける。このような戦いや対立について、12行以内で記述せよ。その際、以下の4つの語句を必ず一度は用い、その語句に下線を付すこと。
アルジェリア コンゴ パキスタン 南ベトナム解放民族戦線
解答のポイント
①コンゴはルムンバが独立運動を指導し、1960年のアフリカの年に独立
②しかし、カタンガ州の独立運動に旧宗主国のベルギーが介入して内戦が勃発
③冷戦構造の下での米ソの介入を経て親米軍事政権が成立した
④アルジェリアでは仏の支配に対してFLNが指導する独立戦争が展開
⑤エヴィアン協定で独立したが、仏に協力したアルジェリア人への迫害など、植民地支配の影響は残った
⑥ベトナムは冷戦構造の下で分断され、中ソが支援する北部のベトナム民主共和国に米が支援する南部のベトナム共和国が対抗
⑦また、南ベトナム解放民族戦線が北ベトナムと連携してゲリラ戦を展開。米が北爆を行い、地上軍を展開したため、戦争は激化した
⑧英の分割統治の影響でヒンドゥー教徒とイスラム教徒主体の国家に分離したインドとパキスタンは、カシミール地方の帰属をめぐって対立し、印パ戦争で衝突した
解答例
コンゴはルムンバが独立運動を指導し、1960年のアフリカの年に独立。しかし、カタンガ州の独立運動に旧宗主国のベルギーが介入して内戦が勃発。冷戦構造の下での米ソの介入を経て親米軍事政権が成立した。アルジェリアでは仏の支配に対してFLNが指導する独立戦争が展開。エヴィアン協定で独立したが、仏に協力したアルジェリア人への迫害など、植民地支配の影響は残った。ベトナムは冷戦構造の下で分断され、中ソが支援する北部のベトナム民主共和国に米が支援する南部のベトナム共和国が対抗。また、南ベトナム解放民族戦線が北ベトナムと連携してゲリラ戦を展開。米が北爆を行い、地上軍を展開したため、戦争は激化した。英の分割統治の影響でヒンドゥー教徒とイスラム教徒主体の国家に分離したインドとパキスタンは、カシミール地方の帰属をめぐって対立し、印パ戦争で衝突した。(360字)
問(2) 演説で述べられている経済的な問題はどのような歴史的背景をもち、その解決のため1960年代に国際連合はいかなる取り組みをおこなったのかについて、5行以内で記述せよ。
①近代以降、先進工業国が途上国を製品市場とし、途上国が先進国に一次産品を供給する国際分業体制が成立
②この体制が独立後も変わらなかったため、南北問題が深刻化した
③そこで国連貿易開発会議(UNCTAD)が設立
④先進国が途上国に技術や資金の援助を行い、特恵関税制度により途上国の産業を保護育成し、貿易を促進した。
解答例
近代以降、先進工業国が途上国を製品市場とし、途上国が先進国に一次産品を供給する国際分業体制が成立。この体制が独立後も変わらなかったため、南北問題が深刻化した。そこで国連貿易開発会議(UNCTAD)が設立。先進国が途上国に技術や資金の援助を行い、特恵関税制度により途上国の産業を保護育成し、貿易を促進した。(150字)