世界史論述において、「比較」は受験生が最も苦手とするタイプの問題です。
毎年、大量に添削をしていますが、比較の中でも、「相違点(差異)」を書かせる問題は、どこに違いがあるのかを読み取れないものが多いです。
2013年の奴隷制廃止前後の「差異」の問題を解いてみると、はっきりと「差異」が感じられるはずです。
奴隷制の廃止前後で驚くほど世界に違いが生じているということがわかると、「差異」を書かせた出題意図を深く理解することができます。
〇世界史入試問題解説(東大、京大、一橋、早慶、共通テスト)
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〇松山の世界史チャンネル
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①高1授業動画(古代史)
• 高1世界史(古代史)
②高2授業動画(中世史・近世史)
• 高2世界史(中世史から近世史)
③高3授業動画(近現代史)
• 高3世界史(近代史から現代史)
解答のポイント
①開発の内容の「差異」
前…砂糖プランテーション、タバコプランテーション
↓
中…北アメリカ南部は綿花プランテーション(←イギリスの産業革命の影響)
↓
後…アメリカの工業化(南北戦争後にアメリカ産業革命)
特に、農業から工業へという「差異」が生じた経緯をしっかり書くこと。
②人の移動の「差異」
前…大西洋三角貿易による黒人奴隷
↓
後…鉄道や蒸気船の発明によって交通革命が起こり、人の移動が促進されて移民が増加
※アジア系の年季労働者(クーリー)も増加
特に、黒人からアジア系の年季労働者(クーリー)へという「差異」が生じた経緯をしっかり書くこと。
③人の移動にともなう軋轢の「差異」
前…ハイチなどで黒人奴隷の反乱
↓
中…アメリカで自由州と奴隷州の対立から南北戦争
↓
後…アジア系の年季労働者(クーリー)が白人下層労働者と低賃金の職をめぐって競合
→移民法の改正
特に、白人vs黒人、白人(北部)vs白人(南部の奴隷保有者)、クーリーvs黒人という「差異」が生じた経緯をしっかり書くこと。
1.奴隷制廃止前
①大西洋三角貿易で、西アフリカからプランテーションの労働力として黒人奴隷を運ぶ
②カリブ海沿岸地域ではサトウキビプランテーション、北アメリカ南部ではタバコプランテーションでの労働に従事
③奴隷貿易の利益により、リヴァプールに資本が蓄積し、イギリスで産業革命が起こる
④アメリカ独立革命やフランス革命の影響でトゥサン=ルヴェルチュールを指導者とする黒人奴隷の反乱が起こり、初の黒人共和国としてハイチ独立が実現
2.奴隷制廃止
⑤市民革命による人道主義の高まりを背景にイギリスで1807年に奴隷貿易が廃止、1833年に奴隷制廃止
3.奴隷制廃止後
⑥産業革命の結果、原綿の需要が高まり、北アメリカ南部がイギリスの原綿生産の需要を担い、綿花プランテーションが発達
⑦アメリカで奴隷州と自由州の対立から南北戦争が勃発
⑧奴隷解放宣言を経て憲法修正第13条で奴隷制が廃止されると、黒人は分益小作人(シェアクロッパー)として搾取
⑨鉄道や蒸気船の発明による交通革命を背景に人の移動が促進され、移民が増加
⑩南北戦争後、アメリカで産業革命が起こり工業化が進展
⑪年季労働者(クーリー)が大陸横断鉄道などの労働を支える
⑫アジア系の移民が白人下層労働者の職を奪うことから、アメリカ移民法改正(1882年)によって、中国系移民が禁止