〇松山の世界史チャンネル
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「黒人奴隷解放の問題点」を指摘せよという問題です。
大変おもしろい問題で、一橋世界史の伝統を受け継いでいます。
第1問に引き続き、「批判せよ」という問題です。
一橋は過去に2014年にエンゲルスがチェック人やスロヴァキア人を「歴史なき民」だと言っているのを批判せよ、という問題を出題していますが、今年は2題続けて「批判せよ」という問題を出題しています。
この批判を行う中で、今年の東大の問題と同じ視点が見えてくると本質に迫れるのではないかと考えています。
〇解答のポイント
①砂糖価格の下落が続き、奴隷貿易の採算が悪化したこと
②アメリカ独立革命、フランス革命の影響で自由主義・人道主義が拡大したことが背景
③13植民地の喪失後、イギリスではウィルバーフォースなどの尽力で奴隷貿易廃止法が成立。
④その後、奴隷解放法がホイッグ党グレイ内閣で成立し、奴隷制が廃止された
⑤市民革命の精神が伝播したラテンアメリカで独立運動が始まると、ハイチは黒人奴隷による革命で奴隷制が廃止され、黒人共和国を形成
⑥他のラテンアメリカの国々はクリオーリョ主体の独立戦争を経た後、奴隷制が廃止された
⑦アメリカは南北戦争中の奴隷解放宣言を経て憲法修正第13条で廃止された
⑧しかし、植民地支配から独立したラテンアメリカの国々はイギリス、後にアメリカの経済的従属下に置かれ、商品作物を輸出するモノカルチャー経済に依存したため、解放黒人奴隷を酷使
⑨アメリカ南部の諸州ではジム・クロウ法が制定され、黒人に対する差別が続いた
⑩解放された黒人の多くがシェアクロッパー制のもと、分益小作人として地主に経済的に従属した
⑪帝国主義の時代には、西欧列強によるアフリカ分割が行われ植民地支配により富を収奪された
⑫その中でも解放黒人奴隷が建国したリベリアなど、独立を維持した国もあったが、アフリカに連れ去られた多くの労働力は戻ってこなかったため、発展の機会を奪われた
⑬ハイチはアメリカのカリブ海政策で植民地支配されて富を収奪され、現在西半球の最貧国に位置づけられている。