【 note : https://note.com/yaguchihappy 】
窒素同化について講義します。
覚え方:グルタミン酸にアミノ基を持ってもらうイメージ。名前に丁寧に「さん」をつける。
『グルタミンさ〜ん、お願いします、アミノ基を持ってくださいよ〜。』
アミノ基を押し付けたらもう用無し。手荒く扱う。もう名前に「さん」なんて付けない。
『おい、グルタミン、そのアミノ基どっか持ってけよ?』
このようにグルグル物質がまわっていく。意味わからない覚え方ですね。すみません。
●植物は、根から吸収した無機窒素化合物(アンモニウムイオンや硝酸イオン)を用いて、アミノ酸(有機窒素化合物)を合成する。このはたらきを窒素同化(窒素を用いた同化[生合成反応])という。
●根から吸収された硝酸イオンは、硝酸還元酵素(しょうさんかんげんこうそ)により亜硝酸に還元される。さらに、亜硝酸は亜硝酸還元酵素(あしょうさんかんげんこうそ)によりアンモニウムイオンに還元される。
●硝酸から亜硝酸、さらにアンモニウムイオンへの還元のために消費するエネルギー量は、植物の全身のエネルギー消費量の25%に達するとも言われる。
*硝酸イオンをアンモニウムイオンに還元するのにはコストがかかる(詳しく知る必要はないが、たとえば、硝酸還元酵素が働くためにはNADPHまたはNADHによる電子供与が必要である)。「植物はアンモニウムイオンが欲しいが、硝化細菌がアンモニウムイオンを硝酸イオンに変えてしまっているから、仕方なくNADPHなどを使って硝酸イオンをアンモニウムイオンに戻している」というイメージを持っておけばよい(植物は窒素同化に最初はアンモニアを利用していたが、酸素を用いてアンモニウムイオンを硝酸イオンに変える硝化細菌が出現したため、これをアンモニウムイオンに再還元して利用する代謝経路が備わったと考えることができる。ただし、現実に、植物がアンモニウムイオンと硝酸イオンのどちらを主に根から吸収するかについては、様々な条件により異なり、複雑である。日本の森林の土壌では、アンモニウムイオンが主な窒素源となっているらしいことがわかっている)。
●窒素同化の過程では、アミノ基をリレーのように受け渡していく。
①アンモニアはグルタミン酸と反応し、グルタミンが合成される
②グルタミンはαーケトグルタル酸と反応し、グルタミン酸が合成される。この反応はグルタミン酸合成酵素により触媒される
③グルタミン酸は有機酸(ーCOOH[カルボキシ基]は持つがーNH2[アミノ基]をもたない)と反応し、アミノ酸がつくられる。この反応はアミノ基転移酵素により触媒される。
● アミノ酸はいろいろな有機窒素化合物に変化していく。
● 窒素を含む化合物の例(よく問われる):塩基(したがってATP、DNA、RNA)、アミノ酸(したがってタンパク質)、クロロフィル
● 窒素同化は、主に葉緑体で起こる。
<Q.窒素同化の図で、「アンモニウムイオン」と書かれていたり「アンモニア」と書かれていたりするけど、どっちが正しいの?…入試では問題文に合わせればよい。定期テスト等では今使っている教科書や資料集の表記に合わせればよい。実際には、pH7では、大部分のアンモニアはアンモニウムイオンになっている。しかし、多くの酵素の触媒中心ではアンモニアが反応分子になる。したがって、どちらの記述も間違っていない。>
●どうしてアンモニアの形で窒素源を蓄積するように進化してこなかったのであろう?実は、アンモニアは高濃度では有毒なのである。そして、『グルタミン合成酵素』は反応性が高く、有害なアンモニアを素早く処理できるのである。だから、真っ先にグルタミン合成酵素が働く。それから、落ち着いてアミノ基を色々な物質の合成に使っていくのである。
●硝酸やアンモニアは、簡単に言えば、肥料である。これらの栄養を植物は根から吸収する。根に設置された輸送タンパク質により、吸収している。
我々動物にはできないことである。我々動物は、植物が一生懸命合成したアミノ酸やタンパク質を、強奪している。即ち摂食により手に入れる。(この、動物が、窒素源を摂食によって手に入れいるということは、入試で問われた。これは当たり前の話である。これを見ている人の中で、土に埋まって肥料を手に入れている人はいないと思う。あなたは、植物や動物を食べることで、窒素源を得ている。)
●窒素固定とは?
・・・生物が空気中の不活性な分子状窒素をアンモニアに還元すること。窒素固定細菌が行う。単独で窒素固定をする生物は好気性細菌であるアゾトバクター、嫌気性細菌であるクロストリジウムや、シアノバクテリアであるネンジュモがある。また、根粒菌はマメ科植物と(また、ある種の放線菌がハンノキやヤマモモと)共生しながら窒素固定を行う(窒素固定した有機窒素化合物を植物に渡し、光合成産物をもらっている。お互いにメリットのある相利共生である)。根粒菌は単独で生活しているときは窒素固定を行わない。
●根粒菌とは?
・・・マメ科植物の根に侵入して根粒を作る窒素固定細菌の一群。好気性従属栄養細菌である。土壌中での独立した生活では窒素固定を行わないが、根粒中では運動性を失う。根粒中では、宿主のマメ科植物から供給された光合成産物をエネルギー源として受け取り、大気中の窒素をアンモニアに変換し、窒素源として宿主へと供給する。つまりマメ科植物と相利共生の関係を結び、窒素固定を行う。
●あまり一般的ではないが、「無機窒素化合物(アンモニアなど)から有機窒素化合物(アミノ酸など)を合成すること」を一次窒素同化といい、「アミノ酸などの単純な有機窒素化合物からタンパク質などの複雑な有機窒素化合物を合成すること」を二次窒素同化ということがある。アミノ酸からタンパク質を合成する反応はセントラルドグマの翻訳である(全生物が行う)。したがって、動物は、一次窒素同化はできないが、二次窒素同化はできることになる。ただし、ふつう、「窒素同化」と言ったら、植物等が行う「アミノ酸などの単純な有機窒素化合物からタンパク質などの複雑な有機窒素化合物を合成すること」(一次窒素同化)を指す。
問題:植物は、土壌中の硝酸やアンモニアを根から吸収し、アミノ酸を合成する(硝酸は、硝酸還元酵素、亜硝酸還元酵素によりアンモニアにまで還元してから用いる)。このように、「外界の窒素成分を生体の構成物質に変える過程」を何というか。選べ。
①窒素固定 ②窒素同化
答え:②窒素同化
問題:窒素を含む物質をすべて選べ。
①クロロフィル ②ATP ③DNA ④RNA ⑤アミノ酸
答え:①②③④⑤(クロロフィルには窒素やマグネシウムが含まれている。塩基には窒素が含まれる。アミノ酸はアミノ基に窒素を含む。)
●植物は窒素同化だけでなく、硫黄同化・リン酸同化も行っている。それぞれ、土壌中の硫酸イオン・リン酸イオンが根から吸収され、硫黄を含む有機化合物・リン酸を含む有機化合物が合成される。
*硫黄同化:硫酸イオンから硫黄を含む有機化合物を合成
*リン酸同化:リン酸イオンからリン酸を含む有機化合物を合成
*動画中で、「窒素固定細菌が空気中のN2をNH4のような窒素を含んだ無機物に変える」みたいなことを口走ってますが、N2も窒素を含む無機物です。申し訳ありません。「NH4のような窒素を含んだ無機窒素"化合物"に変える」と言うべきでした。
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