物質収支 高校生物基礎
5分39秒
説明
【 note : https://note.com/yaguchihappy 】
生態系の物質収支(生産量、同化量など)について講義します。
(1)生産者について
・植物が光合成によってつくりだした有機物の総量を総生産量といい、総生産量から呼吸で消費された有機物量を差し引いたものを純生産量という(式①)。
*有機物には多くのエネルギーが含まれている。したがって、有機物の流れを追うことは、エネルギーの流れを追うことでもある(ただし、CやNが生態系内を循環するのに対し、エネルギーは「熱エネルギー」となって宇宙へ[生態系の外へ]出ていくので注意)。生産者によって補足された光エネルギーは、有機物内の化学エネルギーに変換され、熱を発散する代謝反応によって放出される。
*厳密には、「熱」と「熱エネルギー」の定義は異なる。しかし、高校生は気にせず、生物の教科書や図説の表現をそのまま使えばよい(厳密には、「熱 (heat)」は高い温度の物体から低い温度の物体に移動するエネルギーを指し、「熱エネルギー (thermal energy) 」は内部エネルギーを指す)。
*「生産」という用語は、蓄積された有機物を表す語である。ふつうは1年単位で考える。つまり、本来は生産量は、生産速度のことなのだが、特に混乱しない限り、「量」と呼ぶことが許容されている。
・有機物は、動物に食べられてしまうこともある(被食量)。枯死したりする葉・枝にも有機物が含まれる(枯死量)。よって生産者が一定期間に成長した量(成長量)は、式②のように表すことができる。
★純生産量=総生産量-呼吸量 …式①
★生産者の成長量=純生産量-枯死量-被食量…式②
*(調査期間が1年の場合、)この②で求めた成長量が、次の年の現存量に加わることになる(たとえば、ある時点での現存量が100トンだったとして、それからの1年間の成長量が5トンだった場合、1年後の現存量は105トンになる)。
(2)消費者について
・消費者の同化量は、消費者が捕食によって体内に取りこんだもの(摂食量)のうち、不消化のまま排出された量(不消化排出量)を除いたものに等しい(式③)。
★同化量=摂食量-不消化排出量 …式③
*ここで言う同化assimilation(外界から摂取した物質を自己に有用な物質に作り替えること)は、代謝のところで学んだ同化anabolism(化学的複雑さを増加させる化学変化)とは異なる意味の用語である。しかし、日本語にするとどちらも「同化」になってしまう。
・さらに同化量から呼吸量を引いたものを消費者の生産量とよぶ(式④)。
★(消費者の)生産量=同化量ー呼吸量 …式④
(消費者の生産量=同化量―呼吸量―老廃物排出量とすることもある。)
・生産者の総生産量は消費者の同化量に、生産者の純生産量は消費者の生産量に相当する。
生産者の総生産量ー呼吸量=生産者の純生産量
消費者の同化量 ー呼吸量=消費者の生産量
・消費者は、より高次の消費者に捕食されたり(被食量)、病気などで死んだり(死亡量)するので、一次消費者が一定期間内に成長する量(成長量)は式⑤のようになる。
★(消費者の)成長量=生産量-死亡量-被食量 …式⑤
(「動物は生産者ではなく消費者なのに、生産量という語を使うのはおかしくない?」と思ったかもしれない。しかし、食物を体内に取り入れ、これを新しい生物体に作りかえているという意味で、動物も一種の「生産」を行っていることになる。植物が無機物を材料とした有機物の生産を行っているのに対して、動物は、有機物を材料とした別の有機物の生産を行っていると言える。)
*ふつう、物質収支は、生物集団について考える。生物1匹で考える場合は、たとえば死亡量は、抜け毛などに含まれる有機物量を表す。
●イースター島に住んでいた人々は、伝説によれば、石像を運ぶため、大量の木を切って使ったという。今回の授業で学んだように、消費者は(そして不消化排出量や死亡量を獲得して生きている分解者は)生産者の合成する有機物に、究極的には依存している。イースター島は、木の伐採が続いた結果、生態系が崩壊し、住民は資源をめぐって争い、文明を失ってしまったという。文明を失った住民は、後からこの島を訪れた人々に対して、「石像は自分で歩いて今の位置に動いたんだ」と語ったと言われている。地球は第二のイースター島になってしまうのだろうか。
●栄養段階が上位になればなるほど、利用できるエネルギーの総量は減っていく(が、一般に、上位の生物ほど、効率よく有機物のエネルギーを利用できる[栄養段階の上位ほどエネルギー効率が高い、と表現する])。
●木には、葉(葉は呼吸と同時に『光合成(光を用いた炭酸同化)ができる』ので『同化器官』と呼ぶことがあります)とそれ以外(木の幹の部分など、緑色ではないところ。呼吸しかしない非同化器官と呼ぶ)がある。木が大きくなるほど、非同化器官の割合が増えていく。したがって、極相に近い森では、葉はたくさんあるが、非同化器官もたくさんある(幹の太い木ばかり!)ので、二酸化炭素吸収量は小さくなる
問題:総生産量、呼吸量、純生産量の関係を答えよ。以下の?に語を入れて答えよ。
?-?=純生産量
答え:総生産量ー呼吸量=純生産量
問題:植物において、純生産量、枯死量、被食量、成長量の関係を答えよ。以下の?に語を入れて答えよ。
?-?-?=成長量
答え:純生産量ー枯死量ー被食量=成長量
問題:消費者において、摂食量と同化量、不消化排出量の関係を答えよ。以下の?に語を入れて答えよ。
?-?=同化量
答え:摂食量ー不消化排出量=同化量
●自分で図を描きながら授業を再現してみましょう。
#生物基礎
#生態系
#物質収支
生態系の物質収支(生産量、同化量など)について講義します。
(1)生産者について
・植物が光合成によってつくりだした有機物の総量を総生産量といい、総生産量から呼吸で消費された有機物量を差し引いたものを純生産量という(式①)。
*有機物には多くのエネルギーが含まれている。したがって、有機物の流れを追うことは、エネルギーの流れを追うことでもある(ただし、CやNが生態系内を循環するのに対し、エネルギーは「熱エネルギー」となって宇宙へ[生態系の外へ]出ていくので注意)。生産者によって補足された光エネルギーは、有機物内の化学エネルギーに変換され、熱を発散する代謝反応によって放出される。
*厳密には、「熱」と「熱エネルギー」の定義は異なる。しかし、高校生は気にせず、生物の教科書や図説の表現をそのまま使えばよい(厳密には、「熱 (heat)」は高い温度の物体から低い温度の物体に移動するエネルギーを指し、「熱エネルギー (thermal energy) 」は内部エネルギーを指す)。
*「生産」という用語は、蓄積された有機物を表す語である。ふつうは1年単位で考える。つまり、本来は生産量は、生産速度のことなのだが、特に混乱しない限り、「量」と呼ぶことが許容されている。
・有機物は、動物に食べられてしまうこともある(被食量)。枯死したりする葉・枝にも有機物が含まれる(枯死量)。よって生産者が一定期間に成長した量(成長量)は、式②のように表すことができる。
★純生産量=総生産量-呼吸量 …式①
★生産者の成長量=純生産量-枯死量-被食量…式②
*(調査期間が1年の場合、)この②で求めた成長量が、次の年の現存量に加わることになる(たとえば、ある時点での現存量が100トンだったとして、それからの1年間の成長量が5トンだった場合、1年後の現存量は105トンになる)。
(2)消費者について
・消費者の同化量は、消費者が捕食によって体内に取りこんだもの(摂食量)のうち、不消化のまま排出された量(不消化排出量)を除いたものに等しい(式③)。
★同化量=摂食量-不消化排出量 …式③
*ここで言う同化assimilation(外界から摂取した物質を自己に有用な物質に作り替えること)は、代謝のところで学んだ同化anabolism(化学的複雑さを増加させる化学変化)とは異なる意味の用語である。しかし、日本語にするとどちらも「同化」になってしまう。
・さらに同化量から呼吸量を引いたものを消費者の生産量とよぶ(式④)。
★(消費者の)生産量=同化量ー呼吸量 …式④
(消費者の生産量=同化量―呼吸量―老廃物排出量とすることもある。)
・生産者の総生産量は消費者の同化量に、生産者の純生産量は消費者の生産量に相当する。
生産者の総生産量ー呼吸量=生産者の純生産量
消費者の同化量 ー呼吸量=消費者の生産量
・消費者は、より高次の消費者に捕食されたり(被食量)、病気などで死んだり(死亡量)するので、一次消費者が一定期間内に成長する量(成長量)は式⑤のようになる。
★(消費者の)成長量=生産量-死亡量-被食量 …式⑤
(「動物は生産者ではなく消費者なのに、生産量という語を使うのはおかしくない?」と思ったかもしれない。しかし、食物を体内に取り入れ、これを新しい生物体に作りかえているという意味で、動物も一種の「生産」を行っていることになる。植物が無機物を材料とした有機物の生産を行っているのに対して、動物は、有機物を材料とした別の有機物の生産を行っていると言える。)
*ふつう、物質収支は、生物集団について考える。生物1匹で考える場合は、たとえば死亡量は、抜け毛などに含まれる有機物量を表す。
●イースター島に住んでいた人々は、伝説によれば、石像を運ぶため、大量の木を切って使ったという。今回の授業で学んだように、消費者は(そして不消化排出量や死亡量を獲得して生きている分解者は)生産者の合成する有機物に、究極的には依存している。イースター島は、木の伐採が続いた結果、生態系が崩壊し、住民は資源をめぐって争い、文明を失ってしまったという。文明を失った住民は、後からこの島を訪れた人々に対して、「石像は自分で歩いて今の位置に動いたんだ」と語ったと言われている。地球は第二のイースター島になってしまうのだろうか。
●栄養段階が上位になればなるほど、利用できるエネルギーの総量は減っていく(が、一般に、上位の生物ほど、効率よく有機物のエネルギーを利用できる[栄養段階の上位ほどエネルギー効率が高い、と表現する])。
●木には、葉(葉は呼吸と同時に『光合成(光を用いた炭酸同化)ができる』ので『同化器官』と呼ぶことがあります)とそれ以外(木の幹の部分など、緑色ではないところ。呼吸しかしない非同化器官と呼ぶ)がある。木が大きくなるほど、非同化器官の割合が増えていく。したがって、極相に近い森では、葉はたくさんあるが、非同化器官もたくさんある(幹の太い木ばかり!)ので、二酸化炭素吸収量は小さくなる
問題:総生産量、呼吸量、純生産量の関係を答えよ。以下の?に語を入れて答えよ。
?-?=純生産量
答え:総生産量ー呼吸量=純生産量
問題:植物において、純生産量、枯死量、被食量、成長量の関係を答えよ。以下の?に語を入れて答えよ。
?-?-?=成長量
答え:純生産量ー枯死量ー被食量=成長量
問題:消費者において、摂食量と同化量、不消化排出量の関係を答えよ。以下の?に語を入れて答えよ。
?-?=同化量
答え:摂食量ー不消化排出量=同化量
●自分で図を描きながら授業を再現してみましょう。
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