【 note : https://note.com/yaguchihappy 】
遺伝子突然変異(欠失・挿入・置換)、染色体突然変異(欠失・重複・転座・逆位)について講義します。
問題:遺伝子突然変異を3つ答えよ。
答え:欠失、挿入、置換
問題:遺伝子領域に起きた塩基の欠失や(①)では、(②)が起きてしまう場合がある。(②)とは、コドンの読み枠がずれてしまうような現象である。空欄を埋めよ。
答え:①挿入②フレームシフト
問題:遺伝子突然変異における1塩基の挿入や欠失が、異常なタンパク質を作り出してしまうことが多いのはなぜか。
答え:フレームシフトが起こり、指定するアミノ酸が大きく変化してしまうことがあるから。
問題:染色体突然変異を4つ答えよ。
答え:欠失・重複・転座・逆位
●遺伝子突然変異:DNAの塩基配列に置換(ちかん)・欠失(けっしつ)・挿入(そうにゅう)などの変化が生じて起こる突然変異。
例 )鎌状赤血球貧血症(塩基の置換によって、ヘモグロビンβ鎖の6番目のグルタミン酸がバリンに変化している)
●鎌状赤血球貧血症(かまじょうせっけっきゅうひんけつしょう)は、赤血球が三日月状に変形し、毛細血管が詰まったり、溶血したりしてしまう疾患である。致死的な疾患である。しかし、鎌状赤血球貧血症の原因遺伝子と正常遺伝子をもつヒト(ヘテロ接合体のヒト)は、マラリアに抵抗性を持つ(マラリア原虫が赤血球中で繁殖しにくい)ので、アフリカでは、鎌状赤血球貧血症の原因遺伝子の遺伝子頻度が比較的高く保たれている(マラリアは、蚊の吸血によって宿主の血液に入り、まず肝臓に移動するが、やがて赤血球に侵入する)。
*鎌状赤血球貧血症の原因遺伝子と正常遺伝子をもつヘテロ接合体のヒトは、通常は健康であるが、長期間血中の酸素濃度が低下すると鎌状赤血球貧血症の症状が出る。
●1塩基の挿入や欠失は深刻な影響を及ぼすことが多い。フレームシフト(コドンの読み枠がずれる)が起きるからである。
●遺伝子突然変異によって終止コドンが生じてしまうと、異常に短いポリペプチドが生じてしまう(よく問題で登場する設定である。問題の途中で、配列に変異が起きたら、必ず終止コドンが生じていないか確認すること)。
●コドンの3文字目が別な塩基に置換しても、同じアミノ酸を指定することが多い(アミノ酸を変化させない置換を同義置換という)。
●一般に、イントロン領域に置換が起こった場合は、生じるポリペプチドに変化が生じない(イントロン領域はスプライシングで取り除かれるから)。
●タンパク質の重要でない部位に変異が起こった場合、変異が起こってもタンパク質の機能に変化が現れない場合がある。
●染色体突然変異:染色体の形や数に異常が生じたために起こる突然変異。欠失(一部が欠落する)・逆位(配列順序が逆になる)・重複(1つの遺伝子座が直列に並んだ二つ以上の遺伝子座に変化する)・転座(染色体の一部が他の部分に位置を変える)などがある。
●よく参考書等に載っている染色体突然変異の図に縞々があるのは、ショウジョウバエの唾腺染色体を想定しているからです。そして、唾腺染色体では体細胞染色体対合が観察されます。
● 一般に、染色体や核酸分子の一部に生じる変化を突然変異と呼ぶ。
●高校では、塩基配列レベルの突然変異を遺伝子突然変異、染色体規模の突然変異を染色体突然変異というが、あまり厳密な言い方ではない。染色体突然変異は、染色体の欠失、重複、転座、逆位を指して、ふつうに使うが、遺伝子突然変異とは普通言わず、単に挿入、欠失、置換などと言うことが多い。
●双翅目の唾液腺に見られる巨大な染色体を唾腺染色体という。唾腺染色体の著しい特徴は次の通り。
(1)通常の染色体の約200倍の大きさである。
(2)細胞の分裂を伴わずに、染色糸がつぎつぎ繰り返し複製され、さらに分離せず対合したままの状態になっている。
(3)ほとんど全長にわたって縞々模様がある。帯は染色体の部分的な欠失・逆位・重複・転座などを調べる標識になる。
(4)キイロショウジョウバエの多糸染色体は、約5000の縞々をもっている。この縞一つが,一つの遺伝子に対応するのではないかという説もある。
(5)2本の相同染色体どうしが対合をしている。理由は不明。たとえば、ユスリカ(2n=8)では4本の染色体が認められる。
唾腺染色体の縞の1個またはいくつかが著しくふくらんでいることがあり、多糸性の巨大染色体におけるこのようなふくらみをパフという。パフでは転写が活発に起こるとされ、さらに、パフのできる位置は成長段階ごとに異なるので、時期によって発現する遺伝子が変化すると言う、選択的遺伝子発現の根拠となる。
どうして唾腺染色体がこのような性質を持っているかは、活発なタンパク質合成に有利、という説もあるが、未だ明らかになっていない。
●ショウジョウバエでは、唾腺染色体が対合しているので、たとえば欠失があれば、それのない相手の染色体が突出することになる。このように、唾腺染色体は、細胞学に多大な貢献をした。
●逆位の構造は様々ある。今回の動画より簡単なループもある。ループの中にループができたり、今回の動画のように重なり合ったループができたりすることもある。
●この動画はショウジョウバエについて主に話しています。ヒトの疾患に関する様々な突然変異については、様々な知見が存在しますので、医学部に進学される方は、大学で学んでいただければと思います。
●19世紀後半、物理学の進展により、地球の歴史に対して知見が深まりつつあった。困ったことに、その歴史は生物学者の予想より浅すぎた。生物学者は(進化がダーウィンの言うとおりに進むとしたら、)進化の速度があまりに速すぎると考えた。
そこで、何か「突然の、急激な変化」が生物に起こるのではないか?と言う考えをもつ生物学者が現れ始めた。
オランダの植物学者ド・フリースは、アムステルダムの郊外の荒れた草地に、アメリカ原産のオオマツヨイグサを見つけた。ド・フリースは、あるオオマツヨイグサが、他のものと大きく外観が異なる「変わりもの」であることに気付いた。彼はその「変わりもの」を自分の庭に持ち帰って研究し、「変わりもの」に『突然変異体(mutant)』の名を与え、突然変異説(mutation theory)を提唱した。ド・フリースは『突然変異(mutation)』という概念を明確にした。mutationはラテン語の「変化」に由来する(ただし、彼がオオマツヨイグサで観察したのjは、遺伝子突然変異ではなかった。しかし、突然変異説は、彼の名前を不朽にした)。
なお、ダーウィンも、連続しない突飛な変異を論じている。彼は『種の起源』の中でそれを「変わりもの」と呼んでいる。
●ちなみに、関係ないが、ド・フリースの同僚にファント・ホッフがいる。ファント・ホッフはド・フリースとの会話から浸透圧に興味を抱き、浸透圧の大きさを表す式、ファント・ホッフの式を示した。(Π=cRT:Πは浸透圧、cはモル濃度、Rは気体定数、Tは温度)
0:00 はじめに
0:16 遺伝子突然変異(欠失・挿入・置換)
3:17 染色体突然変異(欠失・重複・転座・逆位)
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